抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

あの頃まだ子どもだった私たちへのメッセージ「魔女見習いをさがして」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 さあ、実は結構渋滞している13日公開作品からまずはこちらを。おジャ魔女どれみ20周年記念作品「魔女見習いをさがして」です。おジャ魔女どれみ、多分一緒にやってたニチアサの流れで見てはいたはずですけど、まあそんなしっかり覚えてはないです。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレ有)

1.聖地巡礼アニメ

 本作はおジャ魔女どれみ20周年記念作品ではあるが、直接の続編ではない。彼女たちのその後を描くのではなく、おジャ魔女どれみを見てきた3人の女性たちの物語だ。27歳の東京のOLはリアタイ組で22歳、愛知の大学生は最終シーズンだけリアタイ。19歳(劇中で20歳になる)尾道のフリーターは全話配信で視聴と、おジャ魔女というコンテンツを享受してきた文脈も推しキャラも異なる。場所も年齢も異なる彼女たちが、おジャ魔女をいろんな形で見てきた観客の延長線上に存在し、そして彼女たちがおジャ魔女が好きだ、というその1点で繋がっていくそういう物語。だからこそ、おジャ魔女なんか知らなくても、何か一個幼少期の共通体験で会ったその場で話せる友人がいる人にはもれなく刺さる、即ち映画ファンなら、その時点でもう刺さったも同然なのだ。

 ということで、本作は東京・名古屋・尾道を行き来するが、それだけでなく、魔法堂のモデルになったという建物のある鎌倉(これ実在するのかは知らない)、修学旅行で訪れた京都・奈良、更にはどれみちゃんのお父さんの出身地の飛騨高山まで。数々の名所とグルメを味わい、夜は酒に溺れる最高の観光映画。オタクがただただ聖地巡礼しているだけ、だがそれがいい。ちゃんと日常をこなしながら予定や資金面の問題を埋めつつ、都度都度出かけてはイベントを起こす感じで、コロナの状況だと少し懐かしいような、そんな気分も味わえました。これちゃんと全部アニメ本編見て記憶してたら自分も聖地巡礼したことになりますからね。すげえや。

 そういう訳なので、おジャ魔女のキャラクター自体はそこまでたくさんは出て来ないで、魔法玉が重要なアイテムとして出てきたり、共通体験としての魔法、というのが大事という感じ。とはいえ、アニメ表現としてはしっかり踏襲しているので、ギャグ表現だったりでしっかり世界観を感じることは出来ますし、芸能人声優ばかりですが却ってその世界観構築にも一役買っていると思います。特に、ももクロ百田夏菜子さんは最初こそ違和感がありましたが、地元でもない広島弁を使いながら、しっかりキャラを絶たせることに成功していたと思いますね。まあ広島弁が好きなだけかもしれませんが。

2.令和でデジモンと対になるおジャ魔女

 しっかし、この令和におジャ魔女をやる意味があるのか!?という問いは当然立ち上がってきます。その点で、本作はデジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆と合わせて語りたくなる、そんな作品だったと思います。

 冒頭、おジャ魔女の5人とメインキャラ3人の影の間には綿毛の茎で境界線が描かれています。明確に、フィクションの世界と現実の世界を分ける意図を感じました。途中、愛知でケンカしている回を見る、なんてシーンもフィクションが現実に作用する、というのを意味していると思います。ところが、劇中どんどん進んでいくにつれ、3人に与えられた試練は、推しキャラの魔女になりたい理由と被っていき、そして3人は一瞬おジャ魔女の世界に足を踏み入れる。ラストに魔法堂でカフェを開けば、3人はおジャ魔女と一緒に空に飛び立っていく。

 デジモンにおいては、デジモンたちとの別れが成長・将来なんかを意味し、色んなものを捨てることが成長なんだ、ともとれる話であったが、本作では逆に心の中に魔女にならなかった選択をしたおジャ魔女が一緒にいることで、何歳だってまだまだこれから成長できるんだ!という強いメッセージを感じさせ、自分が最初から持っている長所を魔法と捉えて自己肯定していく。おジャ魔女を見て育ったそこのあなたに向けたメッセージであり、流石サトジュン監督、最後は文字通り堂々とこっちに語り掛けてきていた。

 成長のために何かを捨てたり、選択肢が狭まっていくのは間違いないだろう。でも、いつだって自分自身を見つめなおして、やり直しは効くのだ。だって、魔法は最初からかかっている。だから本作が探すのは、魔法でも魔女でもなく、いつも心にいるはずの魔女見習いなのだ。