抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

環境を整えて見たかった「ジェミニマン」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 ハイナントカカントカで撮影された「ジェミニマン」の感想です。鑑賞形態は2D字幕です、すいません。

 完璧なウィル・スミスがCGで作れるなら死んだ人も映画に出せそうな気がしますけど、それってどうなんでしょうね。なんて、「男はつらいよ」最新作の予告編でも思ったり。

Gemini Man - The Official Movie Novelization (English Edition)

WATCHA3.2点

Filmarks3.0点

(以下ネタバレ有り)

 1.多分凄い映像美

 とにかく鑑賞後に一番思ったのは、普通の字幕で見てごめんね、ということだ。

 冒頭、時速258kim/hかなんかで走っている電車の中の人物を狙撃するシーン。勿論、ウィル・スミス演じるヘンリーの凄さを証明する場面ではあるんですが、その電車が横切るシーンが映った時に、「あ、これちゃんといいやつで見ないとかわいそうな奴だ...」と速攻で気付いて申し訳なくなりましたね。

 でもごめんなさい、「ジェミニマン」のためだけに埼玉までは行けないわ。っていうか、これこそスコセッシのいうテーマパークになってる映画ちゃうん?という気もしてくる。
 ちなみに、どうでもいいけどこの射撃シーンでスコープの中覗くと真っ黒な中に円があるやつ、先日のTBSラジオ「アフター6ジャンクション」の特集コーナー「細かくて伝わらない映画の苦手な場面特集」で番組構成作家の古川さんが言ってたやつですね。主観視点のはずなのに、主観だと黒いところはないはずのやつ。

www.tbsradio.jp

 そのほかにも、お前はクローンじゃなくてただの機械だろ!と言いたくなるヌルヌル動きを見せていたバイクもきっとちゃんとしたドルビーシネマで見ていれば凄かったんだろうな…

2.予告編が最高潮…?

 たまに、いや結構あるじゃないですか。一番盛り上がっているところを予告編に入れちゃって失敗するパターン。正直ジェミニマンもそのパターンだったと思います。映画館で見ていた予告編で面白そうだったコロンビアでのバイクチェイス、いわば年齢の違うウィル・スミスが初めて対決するシーンですよ。ここが正直一番楽しくて面白かった。射撃技術以外のファクターのおかげで天才的な射撃技術が生かせずに引き分けに終わるわけですけど、ここは非常に面白かった。

 ところが、この後の直接対決となるとブダペストの地下で真っ暗でカメラも近すぎてせっかく色々なギミックあるのによくわからない…。最終決戦はまあ大方の予想通りWウィル・スミスでヴァリスを倒すだけの話で。ここでも銃弾の嵐がちゃんとしたので見れば綺麗な気がする…ぐらいでフレッシュな描写は特に感じず…。そもそも、ヴァリスを倒したところで、この話やクローン計画自体が止まる保障や、ヘンリーが命を狙われない保証が全くないので別に緊張感が無い気がしました。

 第3のウィル・スミスは痛覚を除去され、最強の兵士へと近づいたような存在として登場する姿自体は恐ろしいですけど、それってうん、「虐殺器官」の痛覚マスキングだよなー、と思っちゃって新鮮味をやっぱり感じませんでしたね。内臓飛び出て体真っ二つでも痛みを感じずにしゃべり続ける奴とかいたんでね。

tea-rwb.hatenablog.com

3.ちょっと遅めなテーマ

 今回の話のテーマとしては二つ。クローン問題と父子関係問題、というところでしょう。

 ただ、クローン問題を扱うにしては軟着陸しすぎというか。クローンとして作られたジュニアに人権はあるのか、とかそういう話はしているけど、うーん、そこまで突っ込めてない。っていうか、じゃあ散々殺した恐らく無数のクローンたちを殺したこと自体に言及がないのは違和感が残るし。まあ、もっというと、完全に生育環境をそろえたクローンだけの話ならともかく、最強のスナイパーのサブとしてクローンを育て続ける、という理由ならオリジナルと同じ教育をしたからって同じ実力にはならないはずなんですよね。それを象徴するような、オリジナルのヘンリーにしかないヘンリーの両親の記憶の話も出てきますし。個人的には、人間の生育は遺伝より環境で決まる派なので、完全に管理下におかれたジュニアたちが最強のスナイパーになっていること自体に疑問があるというか。

 ってなると、完全な別個体としてのジュニアが父殺しをして、ヘンリーとダニーとの疑似家族になる、っていう話としても語れるとは思うんですが、これもそれにしては弱い。ヘンリーの内面描写をもうちょっとしていただくなりで、もう少し思い入れて欲しい、というか。ヘンリーが今回の映画を通して行動原理がイマイチピンとこないわけですよね。狙われているから潰すのか、仲間たちを殺されたから復讐なのか、ジュニアに自分と違う道を歩ませたいという父的感情によるものなのか。アン・リー監督の作品を「ハルク」(MCUじゃないやつ)しか見てないんですが、あれも超人ハルクとして暴れるところが見たかったのに、なんか二重の父子関係をながーく描いていて。そういう作家性なんでしょうか。

 いずれにしても、映画技術が進んでいくとこういう特別な手法で撮影される作品も増えてくると思うので埼玉まで行かなくても見れる環境が欲しい!