抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

国民的アニメへの確たる一歩「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は当然コチラ。今回に合わせてアニメ全26話を全集中の呼吸で完走して見てきました。映画館の救世主、鬼滅の刃です。ああ、全集中なんてつまらないネタを使ってしまった。凡その映画ブロガーやYoutuberが同じようなこと言ってるんだろうなぁ。

 原作は読んでいません、っていうか鬼滅の漫画が完結するまでアニメすら見ていませんでした。鬼滅が始まってから終わるまで触れなかった人生だったんですね。流行ってる実感すらなかったし、今回の入場者特典で初めて吾峠先生の漫画見ましたからね。

 ※ブログ更新の前夜、#アニならの配信がありました。本作品についても語っております。是非ご覧ください。

 

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下、よくここまで隠してたねっていうネタバレ有)

 

1.よくぞ映画化した

 まずは端的に感想を言えば、よくこれを劇場でやろうと思ったな、そしてそれに成功して凄い、といったところでしょうか。

 アニメの26話までで、柱の紹介をしたうえで、炭治郎のパワーアップイベントまで済ませて万全の状態で挑んでいる無限列車編。冒頭こそアニメの最終盤、列車に乗り込む様子を映しつつ、これまでのおさらいは殆どなかった。この決断は後述するこの無限列車編の性質上可能だったとも思うが、初見切りであり、結構な勇気がいる気がする。

 そして本編。予告編でも「目を覚ませ!攻撃されている!」などのセリフで予想はついていたが、催眠をかけられて幸せな空想の世界に閉じ込められ、過去への幻想を断ち切って現実に戻ってくる、というのが厭夢への対策となるわけだが、これってものっすごく地味じゃないですか?当人が眠っているので、現実世界を映してもちっとも動かないし、空想の中が幸せなのでそっちでのアクションもあまり期待できない。しかも一見さんに関しては、よく知らないキャラの掘り下げを見なくてはいけなくなってしまう。

 ところが、ここで本作は夢の中に子どもたちを送りこみ、精神の核を破壊する、というスパイ映画的な要素を混ぜてくる。これに伴って、潜伏・探索・破壊・戦闘といった要素が生まれうる緊張が生じ、実際にそこまで戦闘がなくても緊張感は持続させることができた。その上で、炭治郎のあまりにも辛い過去を結果的に再度紹介することになり、あり得たかもしれない夢であることが強調されたその風景は、完全になし得ない夢であることになり、目覚める障壁の高さと、炭治郎のメンタルの強さを表す。厭夢さんも運が悪い。心の強さが大事だ、という主張が完全に一致していて、そこを突いても克服してくる炭治郎が相手に来てしまったのだから。

 さて、アニメの技術面でいえば、同じufotableFateと比較すると、少しアクションが見づらい部分はあるような気はしたが、概して高品質。特に特徴と言える葛飾北斎『神奈川沖浪裏』方式の水の呼吸は健在であった。ただ、なんか浮世絵の話ばっかりでそんなに指摘されている気がしないが、水の呼吸十の型である生々流転は横山大観の傑作であるし、煉獄さんの技も速水御舟の『炎舞』のイメージを感じた。結構明治・大正時代の日本画家からもインスピレーションを受けているのではないだろうか。ということは『黒き猫』とか『竜虎図』も出てくる…こねぇか。猫の呼吸はないもんな。

2.主格を変えることの巧みさ、そして「炎」

 予告編の段階で上記の精神世界からの離脱までは想像がついた。しかし、それではあまりに2時間尺が余るのではないか、と考えていたがやはりそうだった。下弦の壱である厭夢さんを見事に倒して安心したと思ったらやってきた上弦の参・猗窩座。石田彰ボイスで襲ってくる時点で強いのは確定だ。

 ここからは猗窩座と煉獄さんの激闘を目にすることになるのだが、この段階で炭治郎は重傷を負い、解説役になる。とはいえ、抜群の主役感を持って激闘し、そして散っていく煉獄さんが完全にここでの主役だ。前半の厭夢の見せた夢で今までなんかダメな人ぽかった煉獄さんの過去をちらっと見せた上でのソフトランディグは実に見事で、違和感なく事実上の主役の交代を目にすることができた。煉獄さんは正直言って不憫だ。冨岡さんと胡蝶さんが柱の強さを見せつけた後での初めての上弦の登場なので、上弦の強さを示しつつ、柱としての格を維持して敗退しなくてはいけない、非常に損な役回りだ。更に言えば、ヒノカミ神楽なる、「あ、これ絶対に炎柱の上位互換のやつだ」な炭治郎に炎の呼吸について多少教える役回りまで担っている。結果的には、次の行き先まで示す万能っぷりだ。

 しかし、彼が確かに強かったことは、激闘で間違いなく証明され、且つ無限列車の後ろ5両を受け持つと豪語して見事死者0人に抑えたのだから、自己認識も正しい。十分に強いうえで、凄絶に散った。そこでかかるLiSAの「炎」。そもそも公開日の夜にTHE F1RST TAKEにピアノアレンジでの歌唱を寄せる時点でズルいのだが、水の呼吸を操る炭治郎の物語でありながらのタイトル「炎」。まさに煉獄さんのための歌であり、エンドロールは葬送曲であった。普段は曲の歌詞なんか入ってこないタイプなのだが、この曲はずるい。完全に煉獄さんへのラヴレターである。

3.アニメ2期へ

 さて、この終わり方をしたということは、次なる映像作品は煉獄家を訪ね、歴代炎柱の日記を読みつつ、なんかぶん投げて日輪刀を無くした炭治郎にまたも刀鍛冶のひょっとこがブチギレするところからだろう。ということは劇場版にするにはあまりにも地味なので次はアニメシリーズ2期のはず。今回しれっと活躍を省略されている気がする善逸の今後の活躍や他の柱との交流が楽しみだ。

 今回、土曜プレミアム枠でフジテレビが2週連続でSPを組み、コロナの自粛期間なども含めて恐ろしい数の人がアニメを見て、そして映画館に殺到した。すっかり蛸壺化している現代のカルチャーにおいて、国民的、といえるアイコニックな作品になったことは間違いない。同じ長男として尊敬です。