抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

MeTooの先駆けを描く「スキャンダル」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 試写会で拝見した映画の感想になります。なんだか似たように見える「ハスラーズ」「チャーリーズ・エンジェル」がほぼ同時期公開の映画「スキャンダル」です。

 やっぱこれ、3つとも見て比較してみた方がいいのかしら…。「ハスラーズ」はともかく、「チャーリーズ・エンジェル」は見る気がしねぇんだよな…

 ちょい批判気味なので、悪しからず。

Bombshell (Original Music from the Motion Picture Soundtrack)

WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

(以下ネタバレあり)

 

1. 女性である前に人間だ

 まあベースがFOXニュースの敏腕社長ロジャー・エイルズが長年にわたって行っていたセクハラが原因で解雇された、という#Metoo前夜の出来事なので、大体話は分かっているわけです。

 その大方の想像通り、当初は強気なロジャーがどんどんと哀れな老人に見えてくるぐらいやられていく様を目撃していくことになります。

 こうした映画が続いていることを上で書きましたが、フェミニズムの台頭のようなこうした状況に関しては、女性の尊厳回復、あるいはこの映画で描かれる未だ分かっていないバカどもに理解させる為に必要だと思います。なんか最近も男女平等なら映画館のレディースデイ無くせ、みたいなばかげた論争を見ましたが、それは只の企業戦略だし、女性専用車両アファーマティブアクションであって、下駄履かせないと医学部に入れなかった男どもが異様に優遇されているだけ。

 だからこそ、この映画で描かれた転落劇は、ロジャーが女性だろうと、また同性同士だろうと許すべきものではないし、だから橋本聖子高橋大輔チュー事件のことも私はまだ怒っているのです(いつの話だ)

 とまあ、思想的にはこの映画に反対するものは何もないのですが、あくまでこれは映画。しかも、実話ベースです、どころか、実在の人間のキャラクタには関係が無いよ、的な前置きをめちゃくちゃしっかり置いてる。FOXに訴えられないためでしょうけど。だからこそ、単純な女性がやったぜ!的な文脈で回収されちゃう作り方になっているのが少し残念だな、と思います。

 ドラマ的に言えば、セクハラを告発したニコール・キッドマン、過去にセクハラをされている有力キャスターのシャーリーズ・セロン、新人でセクハラされたマーゴット・ロビー。この3者がメインの話ではあるものの、どうにも話が収束しない。3人が同時に1枚の絵に映るのはエレベーターの中の一瞬で、そこでも別に際立った会話はない。これだと、物語として弱いのかな、と言わざるを得ません。

2.パニッシュメントよりエンパワーメントを

 この作品のもう一つの特徴は、明確なトランプ批判。保守派のFOXの中で、女性蔑視のトランプの顔色を窺わないといけない、という対立が物語を面白くしてくれるならいいのですが、トランプとの対立はあまりに不毛な上に、正直言ってロジャーとの戦いで全く生きてこない。ただただ批判したいだけに見えてしまいました。批判は結構ですが、物語的な説得力を持たせてほしいんですよね。

 また、脚本が「マネー・ショート」の人、ということであの映画のように第4の壁を度々突破してきます。赤白青のドレスを着たシャーリーズ・セロンが現在のFOXを解説する様子は、これが今のアメリカの象徴ですよ!と言わんばかり。ただ、キャスターという役柄もあってか、かなり説明、あるいは講釈地味て聞こえるのでなんか嫌になってしまいました。

 結局、ザ・富裕層白人のロジャー&トランプ(&ジュリアーニ)に対して社会的制裁を与えるような作りになっていますが、現在進行形の出来事を世間に知らせる告発型ならともかく、今回の映画は公然の事実を映画化したもので、パニッシュメントは既に受けている訳です。立ち上がれず、声を出せない女性たちをもっと応援するような形の映画だともっと良かったな、と思います。

 ワインスタインの問題の映画化もこんな感じになってしまうのだろうか。