抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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青春ゾンビュージカル!「アナと世界の終わり」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB) | Twitterです。

 今回取り上げるのは、英国式ゾンビ×ミュージカルの「アナと世界の終わり」。ありの~ままの~の方のアナもそこそこ世界の終わり感はありましたが、ディズニーは一切関係ありません。

 ありそうでなかったこの組み合わせ。宣伝では「ラ・ラ・ランド」×「ショーン・オブ・ザ・デッド」と中々に大きく出ていましたが、はてさて。

アナと世界の終わり [Explicit] (オリジナル・サウンドトラック)

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ有り)

 1.学園ミュージカルという鉄板。

 そもそもそれぞれのジャンル映画的に考えた時には、まず学園ミュージカルというのは鉄板ものです。いずれも未見とはいえ、「ハイスクール・ミュージカル」「glee」。名前を知っている作品を挙げるのは容易なジャンル。

 その観点で言えば、冒頭車に揺られるアナとその父トニー、そして幼馴染ジョン。この段階でジョンは美術大を目指すも合格通知待ち、アナは大学進学予定だが父にこっそり海外留学の計画があるということで将来の不安定さを示唆。まさに青春ものって感じ。そこから今回の主要登場人物たちのキャラ紹介が始まって、学園ものってなかなかにこれが時間かかると話が進まなくて辛いんですが、ここでキャラの特徴と関係性をざっと2曲ミュージカルパートを挟むことでスマートに見せていたと思います。

 「Break Away」で現状の不満を吐露しながらも、「Hollywood Ending」で映画みたいにはいかないわ、なんて諦めを見せたり、対になるクリスとリサのカップルは逆に愛は永遠よ、なんて歌ってみたり。どうせなら明るいミュージカルが見たいし、この後ゾンビ出てくることを考えるとウェットになりそうですから、その点踏まえてもここで作品に一気に引き込まれました。

Break Away

Break Away

  • Ella Hunt, Sarah Swire & Malcolm Cumming
  • サウンドトラック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

Hollywood Ending

Hollywood Ending

  • Cast From Anna And The Apocalypse
  • サウンドトラック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 大爆笑の「The Fish Wrap」は置いておくにしても、ゾンビをやっつけるパートでも「Soldier at War」で嫌な感じの男子チームを活躍させたりとゾンビ×ミュージカル、出だしは好調って感じでしたね。

2.ゾンビものとして

 「がっこうぐらし!」の際には、ゾンビ映画の皮をかぶったアイドル映画じゃねぇか!などと指摘をしましたが、本作はかなりしっかり目にゾンビ映画。っていうか、宣伝に使われた「ショーン・オブ・ザ・デッド」をかなり意識している作品に。

 割と外し気味に入るギャグやゾンビと思わせて普通だった、みたいな緊張と緩和もそうなんですが、ゾンビの登場シーンがまんま。朝起きて登校しようとしている場面でミュージカルシーンに入るわけですね。かかる曲は「Turning My Life Around」。これも軽快なナンバーで歌ってるアナもジョンもイヤホンしながらなのでまあ後ろで起きている大惨事に気づかない。これまんまショーンですよね。この辺も最高。

 でまあ正直ゾンビものとしての本気を舐めてたら、いきなりのシーソーでクビスパーン!!あ、ちゃんとグロ系も容赦なく行くんだ!とさせてボウリング場ではトイレの蓋にピン、ボールと「イコライザー」顔負けのその場の発想での攻撃が素晴らしい。

 そして定番、結局怖いのは人間パターンは学校サイドで。校長のサヴェージは地位・教則がとにかく重要で最終的には言うことを聞かない生徒や保護者を抹殺しようとゾンビを外から迎え入れてることまでわかる始末。今回の人間の中の悪さ、みたいな面は彼に全部持ってもらっていたので、ちゃんとソロ曲も貰えて結構いい扱いだったのではないでしょうか。

tea-rwb.hatenablog.com

 

3.ゾンビ×ミュージカルとしてだと…?

 第1項で学園ミュージカルとして、を論じて出だしは好調、と表記したのはその先ゾンビの登場によって、舞台が学校になかなかならないため。しかも終盤になるにつれどんどんミュージカルシーンは減って、学校に向かう途中でゾンビを倒すとか、ゾンビの中を車のカギを探すとか、ゾンビを用いたサスペンス的要素がどんどん強くなっていってしまう。そういう風に考えると、うーん、ミュージカルでキャラ紹介は完璧にできたけど、その後は割と低予算の割には良いゾンビ映画、の域を出ない感じになってしまった感があります。この組み合わせならではのドライブ感?っていうのでしょうか。特別な1本になっていく感じは無かったですね。

 ついでに言えば、ちょっと自己犠牲シーンが多すぎ。割と中盤でジョンが死ぬのも、カギを取りに行ってた間に犠牲になるリサ&クリスのカップルにしても、犠牲になって仲間を助けたわけだし、最終的にはお父さんも助けたけど噛まれてました、というパターンで少し同じ展開が続きすぎたかな、と。もう少しその辺を上手く処理してほしかった、っていうか生き残りに元カレのアイツが入るとは。

  ↓本作の明確なパロディ元になってる「ショーン・オブ・ザ・デッド」の感想

tea-rwb.hatenablog.com

 

4.ロメロ的アプローチで考えるこの映画におけるゾンビ。

 前述のとおり、「がっこうぐらし!」におけるゾンビはゾンビ映画じゃなかったので考察をスルーしましたが、本作ではゾンビは何のメタファーなのか。復習的に言えば、ジョージ・A・ロメロの「ドーン・オブ・ザ・デッド」ではゾンビは資本主義の象徴であり、だからこそ主人公たちはショッピングセンターに立てこもる。ロメロは常にゾンビを用いて社会的な何かを問いかけている、とされています。

 で、本作。ラストの舞台が学校に設定されているあたりは、「がっこうぐらし!」同様、そこからの脱出を学校からの卒業に重ねているのは間違いないと思います。将来どうするのかの話も出してますし。ただ、その割にはこれからどうする?の話が薄め。

 そしてゾンビ自体が何の象徴なのか。こう青春の中で夢や希望が無い人の象徴だったり、アイデンティティを喪失した人の象徴だったり、規則や立場に固執するサヴェージ校長のようないわゆる大人の象徴だったり、と色々考えたんですが、結論、特になし!!

 よく考えたら、ロメロのリメイクのパロディのショーンが元ネタっぽい場面いっぱいなんだからショーンにおけるゾンビ同様コメディリリーフとしてのゾンビ以外の強い意味付けが見つからないんですよね。色々匂わせながらもこれっていうものがない。強いて言うのであれば、学校を出た後における、あるいは青春時代における様々な人生の障害物全部のモチーフですかね。親、進路、バイト、いろんな悩ましいもの全部の象徴。まあそれ言い出したら全部そうじゃね?ってぐらい広い定義ではありますが。

 

 うん、まあ最終的にどんどんウェットになっていってコメディっぽさも減ってしまうので盛り上がりがもっとイケるはずだとは思うんですが、死屍累々の低予算ゾンビ映画の中では間違いなく見るべき注目作だと思いますし、「アベンジャーズ/エンドゲーム」のキャスト卒業式エンドロールが無ければ、今年1位かもしれないぐらいエンドロールのアニメーションでのハイライトが可愛くてgoodでした。サントラも「シング・ストリート」以来聞きまくること間違いなし。昨日の「さよならくちびる」に続いて音楽が素晴らしい映画でした。