どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。
今回は中国アニメ映画!『羅小黒戦記』とか『フェ~レンザイ』とかでお馴染みの哪吒くんの映画です。爆売れ!
WATCHA4.5点
Filmarks4.5点
(以下ネタバレ有)
とにかく中国国内でバカ売れしています。中国国内で売れすぎて、世界のアニメーション映画史上、『インサイド・ヘッド2』を抜いて1位。実写を含んだ興行収入でも、歴代5位にランクインしている、という快挙です。『アバター』『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』『タイタニック』といったまあ目立つ名前に『哪吒2』が入る。中国アニメ映画をウォッチしているから驚きはそこまで大きくないですが、ハリウッド側が中国で興行が出来るように内容をチェックするのも仕方ないな、という市場規模です。ちなみに、日本でも既に中国語音声・英語字幕版で上映されていますがもう興行収入1億円を突破。日本における中国文化の根付きなのか、中華圏の在住者が多いのか、その辺は検証を待つにしても、まあ無視できない存在になっている訳です。
という外側の論理はさておいてもですね、1作目を日本で上映していない(正確には中国映画週間で1回やったらしい。そんなもん見れるか!)中での2作目の公開に踏み切る、という蛮勇を踏まえての2作目。うん、1作目を見ている必要はそんなにないよね、っていう感じ。大体何があったかは分かるし、設定も冒頭で開示してくれます。何作目の映画だろうと、設定をちゃんと開示する、本編とは違うタッチのアニメーションパートが入るのは最早中国アニメあるあるになってはいないでしょうか。今回説明されたのは、まあなんとなく魔丸と霊珠、まあ多分相反する2つが転生して哪吒と敖丙(ごうへい)という2人になった、こいつら最強マブダチいえーい、である。多分、なんやかんやあって前作で身体を失って魂だけの存在になった2人が新しい身体を貰って魂を定着させたい、というのが今回のスタート。哪吒の師匠ポジの人がコメディリリーフ、人間の両親、なんか前回のラスボスっぽい人、敖丙のお父さんの龍とそのお仲間の東西南北龍・そして妖の海の生き物モチーフの皆さん、とどんどん紹介されていく。なんやかんやで龍が攻めてきて、折角定着しかけた身体が台無しになって、哪吒の体に敖丙も同居。仙人に認められることで宝具を貰って敖丙の体を作ることに両陣営が合意して一旦停戦して仙人への挑戦を進めていくうちに…という感じ。何を言っているか分からない人は大丈夫です、それだけ盛りだくさんということです。
もう中国アニメ映画のアニメーションのクオリティに関しては言うことはないでしょう。日本にやってくるような中国アニメは殆どが高クオリティであり、今回で言えばマグマを含む火、氷を含む水・海に、雷や雲、木の描写に動物・海洋生物の質感とそれはもうありとあらゆるものを描いています。哪吒がコメディ寄りのキャラデザだったりするので、シリアスよりのキャラの表情が若干固かった気はしますが、全然許容範囲。丹豆にされちゃうよーのシーンとかの消えかけ表現、終盤の完全にエンドゲームでしょの仙界VS妖大決戦の引きの映像で見せる集団戦だったり、いやーよくやってます。
キャラクターもいいですね。まだ全然未熟な哪吒が感情的になって爆発していくのも主人公としていい、というか、これだけ真っすぐなのも恥ずかしくなく出来るのは中国アニメのいいところというか。最後の青年期哪吒って、ほぼサイヤ人ルフィだもんな、普通は却下されるというか、出来ない気がする。話がブレて申し訳ないんですが、この映画の結論として重要なのはココだと思うんです。どっかでは見たことあることしかしていないと思うんです。でも、それを恥ずかしがらずにちゃんと凄いもの作ろうと思ってやる。水と火の2人が喧嘩したり仲よくしたりなんてRRRの後じゃ、じゃなくてもっと派手にするし、マイケル・ベイがうらやましいぐらいの火力が欲しいので街をマグマで灰にするし、エメリッヒが羨むぐらいでっかい釜を内側から炎で持ち上げる。竜宮城の為に海を割るし、GotGのノヴァ部隊のような並べ方を捕妖部隊にさせるし、鹿童が弓矢を引く手もバンバン増やして弓矢なのにガトリングみたいにしちゃう。照れてない、っていうのはこっちが全力で楽しむうえで超重要な要素ですよ、多分。
海洋生物モチーフの皆さんの中では、まあ目立つのはやっぱりタコとサメ。割と強者というか、まず対人戦で強力そうなやつに見せておいて、より大きな敵が現れた際には自分で焼かれた足を食べて上手い、みたいなことをしてコメディ側になりつつ、最終決戦でしっかり頼りになる味方ポジに落ち着く、という完璧な中ボスクオリティ。仙人という大ボスがいる中で、裏切りを見せる3匹の龍もそれぞれキャラをしっかり見せつつ、火と氷をぶつけて霧にしたうえで変化の術という神々の世界ファンタジーを使ってちょっとギャグ寄りの戦闘にして愛らしいキャラにする。この辺が中ボスになっているのがおかしいテンポな訳で、本来の中ボスと言える仙人になるための3つの試練であっさりと倒される皆さんもいい感じで、ボスがやられた中で哪吒の調整に使われてちょっと調子乗るビーバー、鏡よ鏡ネタをしながら、実は山全部でしたというサイズのサプライズを持ちつつ瞬殺される石の方。そして何より、2番目の試練の先生。竹の上でのしなりをつかった戦闘描写は勿論、自身を雷にすることで高速移動を可能にするというギミックも良ければ、いざとなったら自分の右腕を切り捨てることも能わず、最後には息子を生かすために、というこの映画(というか、多分シリーズ)全体を突き通す「親子」というテーマにもしっかり乗っかっていく。このお父さんは最高でしたね。申公豹のお父さんだから、申正豹、だったかな。中国名は覚えづらいし、封神演義知ってればまた別なのかしらね。これまた中国アニメーション映画定番、ポスクレおまけシーンで親子ともども今回のボスに囚われてることがわかり、封神大戦が近いと言及されていたことからも期待したい『哪吒3』でもカギを握ってくれそうです。余談ですが、今回のラスボスキャラなのに、あの仙人がこのポスクレで早くもコメディ要員にされてしまっていて、手際の良さを感じるったらないです。鶴と鹿の方が強そうなバランスにしっかりなっているんだから不思議。
さて、最後に語るべきはこれが中国アニメーションである、という事実。中国映画にはお馴染みの、始まる際のしっかりとした政府認可のマーク、緑の背景。そう、ハリウッドが配慮するんだから、当然描ける内容には限度があります。とはいえ、なんか審査している奴はザルなんじゃないか、というぐらいこの映画は政権批判的にも捉えられる。単に種族(すなわち民族)で判断することの愚かさ、一旦落ち着いて対話することの重要性を示しながら、ある一つの支配的な考え(この映画だと闡教)の下に正当化される暴力やシステムの横暴、それと戦うヒーローって、定番のストーリーですよ?定番だけども、よくやるなぁって思います。つまりですね、見事に何でもぶち込んでおきながら、しっかりと納得できるし、とにかく144分っていう長さが苦でないおもちゃ箱に仕上がっているよ、ということが言いたいのです。