抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

その覇権に何を賭ける「ハケンアニメ!」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は『見えない目撃者』に続く、東映×吉岡里帆です。ヒットして欲しい、応援したくなるような作品でしたね。なお、この作品を鑑賞するや否や試写会だったので、どうしても感想が薄味です。もうね、メモを取る時間もなかったのよ。

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WATCHA4.0点

Filmakrs3.9点

(以下ネタバレ有)

 

1.熱いお仕事モノ

 はい、もうね、シンプルに熱い!いいお仕事映画でした。

 怒涛でアニメーションをどうやって作るかを見せた上で、中村倫也演じる王子監督と吉岡里帆演じる斉藤監督がそれぞれつくるアニメーションが土曜17時という枠で激突する、っていう勝ち負け、が明確にあるバトル映画でもある。バトルを可視化するために、それぞれのアニメの象徴であるバイクとロボをデザイン化して競争させてたり、水色とピンクで勢力図的に表現したりと、見えるように頑張っていたと思います。

 で、まああれですね、クリエイターものとして熱いですよね。互いのスタッフがいたり、局の偉い人がいたりする中で、自分の作りたいものを作る、納得できるものを作るっていうことにとことん責任をもって頑張る話でもあるし、どうしてそこまでやるの?に対して、ちゃんと両監督が答えを持っているし、で素敵。両陣営のプロデューサーを演じた柄本佑尾野真千子も含めて、各々の哲学を突き通して、ちゃんとアニメで覇権を取る!!にちゃんと全力なので見ていて不快さが全くない。女性同士の連帯のシーンも一応あって、それも良かったですね。

 まああとは秩父の役所の人。あの花の橋!っていうロケーションなのに、知らんふりなので超平和バスターズはいない世界線なんでしょうけど、この人が「リア充」の解釈をリアル「しか」充実していない人、と勘違いしてくれたおかげで、アニメを見る人たちをリアルが充実していない人、ではなく、空想の世界も持てる人、っていう方向に解釈できるのも豊かで素晴らしかった。

 とはいえ、全体的に労働環境が悪いのを隠すことなく気合と情熱でクリエイティブのために突っ走る、が解決策なのはちょい悲しいというか、現実でもどう解決しましょうか、って感じで暗澹とします。ヒットした作品にだけ還元とか、ふざけたとか言ってるやつもいますが、業界全体を考えて改善してほしいところではあります。

2.アニメーションへの敬意

 やっぱり、どうしてもこの映画を作るうえで大変なのはアニメーションの質ですよ。便宜上、覇権を取れると豪語し、幾原監督級の人が納得している作品じゃないといけない訳ですよ。ただ劇中での観客が「すげー」とか言ってたらいい、っていうものじゃダメで、スクリーンのこっちの観客もこれは確かに覇権を争うアニメだ!を2本準備しなくてはいけない訳で、そりゃ大変。監督にこの吉野さんが抜擢されたのも、納得で、この方はNDJC若手映画作家育成プロジェクトで作った短編「エンドローラーズ」(おすすめ!)で葬式にロボットやアニメーションを混ぜるっていう難易度の高いことをしていて、そこにちゃんとリスペクトが感じられたんですよね。なので、今回もしっかりアニメーションに敬意を払っているし、東映アニメーションもちゃんと協力してしっかりしている。そもそも辻村さんがアニメ好きだし。

 敬意の払い方として、ちゃんと声の仕事を声優にやらせているし、っていうか新谷さんいるじゃないですか、なんで新谷さんは編集の役なんですか、演者の役じゃないんですか!?失礼、取り乱しました。いやでも本当にちゃんと声優を出して、しかもちゃんとリスペクトを感じました。それにしても声だけで分かるもんだな、スーパーイージー速水奨はおいといて、梶さんとか花澤さん、高橋李依小林ゆうみたいな聞き馴染んだ人たちならともかく、潘めぐみ木野日菜を聴きとれる耳になっているとは思わなかった。ん?高野麻里佳高橋李依イヤホンズ…?あ、ちなみに普段の高野麻里佳には客寄せ声優みは感じたことはないです。ちゃんと声優してると思います。

 ただ、そこまで敬意を払ってくれたなら、もう少しだけ追加して欲しかったのが、放映前の対談イベントの模様。シンプルに土曜17時、しかも初監督作品なら、監督の話聞きたいし、王子ファンが多くても、ちゃんと斉藤監督を歓迎はするよ。まして、司会進行が完全に片方にしか肩入れせず、登壇者の機嫌をそこねるような質問もしない。女性司会者なんで、多分っていうか確実に松澤千晶さんをイメージしているんだと思いますけど、いやほんとそれは無いから。一回でいいからAJのステージとか見てくれよ、と思いました。

 夕方17時に枠をぶつけて視聴率で争う、は、まあほら、ファンタジーだし。最後にDVD予約枚数とかで視聴率じゃない方の勝負も見せて。勝負勝負は避けろというけど、勝負でしか出来ないものも、ある。勝ちにゴールポストを動かすのもありですよ?という感じのいいファンタジーぐあいでしたね。