どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。
今回はアニメ映画。しかも音楽モノ。音楽映画、しかも伝記は合わないよーとシャラメまあまあな文句を言っていたわけですが、果たして。
1.ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース

WATCHA4.0点
Filmarks4.0点
相も変わらず洋楽が全く分からない人間の私。当然のようにファレル・ウィリアムスも知らないんですが、彼の伝記ドキュメンタリー映画を本人の希望でレゴムービー風に作ったよーという作品。なるほど、公式HPによれば現代のカルチャーアイコンらしいです。グラミー賞24回ノミネート、7回受賞。凄い。しかし、現代のカルチャーアイコンを知らない映画・アニメ・ラジオ好きって、じゃあカルチャーとは。
などと非常に偏見と卑屈に満ちた導入をすべて反省したくなるぐらい非常に楽しい作品でした。家庭の様子からインタビューにスムーズに入っていき、ファレル・ウィリアムスという人物が如何にフレンドリーないいやつかをまあまず分からせる。いや、ほんとこの人いい人だわ。バージニアの海岸の貧困層出身ながら、グレることなく高校時代の仲間とザ・ネプチューンズを結成し、そこからしれっとドロップアウトしていた仲間にもヒットメイカーになってから手を差し伸べたり、なんかもう人として普通に良い人。友だちに全然なりたい。売り込みで電話かけてた先のインターン生とそのまま電話友達になって人生賭けるマネージャーになってもらえる、とかも凄いエピソード。
で、振り返っていった過去の音楽の話を含めて、彼はシンガーとか、バンドマンっていうのじゃなく、まさにミュージシャン。HIP HOPを筆頭に色んなアーティストをプロデュースもして、ジャンルも飛び越えて色んな楽曲を作り出し、更にはブランドなんかも展開してどんどんヒットを飛ばしていく。その様子が、それぞれはシンプルなパーツであるレゴを組み合わせていくようにして出来ていく、既存のものから新しいものを組み合わせていく=すなわちサンプリング、という映画の主題と非常にマッチしている。語り口と手法が一致しているアニメーション、というのは非常に好みです、はい。レゴで表現していることによって、ある種の時代感とか、ちょっとした閉塞感とか、「リアル」っぽさとか、そういうのから全部遊離している。本人のインタビュー映像だったりとかから構成してるはずなんだけど、画面が常に動いていて、この形式のドキュメンタリー映画による弱点を完全にカバーしているように思える。大したもん!
順風満帆に見えていたミュージシャンライフに影を落とすのが、売れる為に〇〇向けを作って、みたいな方向に誘導していったり、過去の焼き直し=失敗しない・冒険しない、を求める"べき"ネスマンたち、っていうのも音楽の伝記ものとしては割と新鮮だったし、その上でやってくるブラック・ライブズ・マターの流れ。なるほどなーって感じ。
単にレゴムービーをファレル・ウィリアムスが気に入っているからレゴ調なのだろうと思い込んで見たわけですが、同時期に公開していた『ベターマン』でロビー・ウィリアムズをサルとして表現してやるのと、基本的には同じなんだろうなぁ、なんて。あ、どっちもウィリアムスだ。
2.ボサノヴァ~撃たれたピアニスト~

WATCHA3.5点
Filmarks3.7点
アメリカの書店で刊行記念イベントが行われている。そこで語られているのは、南米・ブラジルに取材に赴いて記されたピアニスト、テノーリオ・ジュニオールについての取材経験だった、という形の作品。一応扱いはフィクションのアニメーションだが、多分ほぼドキュメンタリーというか、ファレル・ウィリアムスの映画との差を見つけるのは難しい。
例によって音楽が分からん私にとってはボサノヴァ、という音楽ジャンルがなんなのかはようわからん、というのが本音なのだが基本的に歌の無い音楽としてとても良かった。ファレルのも、ビートが基本にあるからノリやすいっていうところがあったけど、この作品もまた良い。ブラジルの音楽シーンを取材していくにつれてアルバム1つを残してアルゼンチンで失踪したピアニストについて知っていく過程を追っていく物語。ただ、この尺にしてはちょっとダレ過ぎか。話を聞きに行って南米音楽の巨匠たち(当然私は誰も知らない)や、テノーリオ・ジュニオールの家族や関係者に話を聞くだけなので単調なうえに、終盤にはかつてブラジル国内でこの人物を取材していた短編映画もあり、テノーリオの家族や、アルゼンチンの軍人にも取材に成功していることも分かる。貴重な人材が歴史の狭間で埋もれないために大事、というのは百も承知の上なのだが、さも初めて発見した俺のセンス!みたいな感じでアメリカの書店で喋っているお前、お前の調べたことの新規性ってなんだったん?アメリカ国内で「発見」されていないから偉い、なのか?とちょっとイラっとした。っていうか、Wikipedia読んでたな、お前。そのレベルの人物はもはや「発見」でもないのでは??そう思いだすと、この件は私が取材をお願いしたんですよーとか言ってるイベントの対談相手にもむかついてくる。結局何が起きて、というのも既に明かされていたことの追随でしかなく、アルゼンチン軍事政権クーデーターによる諸々を掘りに行ったわけでもない、非常にどっちつかずな印象に。
とはいえ、中盤までのボサノヴァやサンバ・ジャズの音楽が非常に心地よいこと、照明の当て方や、鉛筆でしゃしゃっと書いたような髪、水彩画でありそうな、と同時に油彩画、ピカソのような彩色だったりと、アニメーションとしての面白さは確かに持ってはいることも明言しておくべきだろう。