抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

焼きうどんにポテサラ!?「すずめの戸締まり」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 来ちゃいましたね。新海誠監督の最新作。いつも参加しているアニならでも語りますよ。っていうか一番私が聴きたい。


ってことでいってみよー

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WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ)

1.ロードムービーからのロードムービー

 日本各地で戸締りしていくよー、っていう映画だとは聞いていたんですが、主人公は九州在住で、締め師の方の苗字が宗像っていうから福岡みに溢れている!!という期待がソッコーで潰されました。何なら宮崎から愛媛に行って、神戸・東京・三陸と移動していくので福岡寄ってねぇ!

 えー、話が早速逸れましたがまあそういう感じでロードムービーなんですね。だけども、途中でパーティが入れ替わるし、目的も入れ替わるっていう作り。前半は宮崎の地元でうっかり抜いてしまった要石が猫化したダイジンを追っかける鈴芽とイスのロードムービー。その後、環叔母さんが合流して全ての性癖を注入された芹沢くんcv.神木隆之介にダイジン・サダイジンの珍道中with懐メロに。後半の目的は常世に要石として存在することになった草太に再会するために、かつて迷い込んだ扉のある里帰りの旅。

 個人的には、ここのロードムービー×2の接続がまずそんなにうまくいっていないように思えて。特に東京での戸締りシークエンスで一回ものすごく盛り上がったのに、そっからただ懐メロ流しながら北上するだけの旅には劇的なところを感じない上に、SAで突如サダイジンが現れた上に環さんに憑依して、心の闇の部分を吐露させてからの仲直りっていうのも、突然すぎるし、前半からの環さんの保護者としての心配の決着として薄い。決着してねぇし。

 あと、シンプルに東京で一回リセットしちゃってる。宮崎から東京にたどり着くまで、道中であった人たちからいろんなものを貰って身に着ける鈴芽。草太からは靴を拝借する訳ですが、そのタイミングで制服に着替えてしまう。ロードムービーとして2段構えだからリセットっていうのも分かるんだけど、じゃあ前半・後半が分離しすぎちゃう、っていう批判は免れないよね。

 そのうえで、最終決戦がまた実に盛り上がらない。一番凄みを見せてほしいところなのに、何度目かの空から落下シーン、後ろでなんかやってる怪獣バトル(魅力に欠けるみみずvs突然出てきたサダイジンという興味を惹かれないカード)(そしてシンプルにここは交通整理が下手)、物語的な突破力も無い感じで、結果後ろの丸々カットして、47都道府県とコラボしてるんだから全部の都道府県で戸締りしてくれる10分×47都道府県みたいなシリーズの方が面白いんじゃね、スポンサー配慮もその方が楽でしょ、的な気持ちで劇場を後に。うーん、どうしてもネガティブめだ。決して悪くはないんだが、ここ2作の新海誠に感じ、求めたアベレージからは背景とかも含めて足りてない、そうなんだよ、気持ちとしては足りてない、になるんですよ。ただ、3.11を扱うっていうこと、忘れた場所になったら良くないという考え、そういうのは凄くプラスに捉えて応援していきたいし。あ、でも、忘れたから地震が来る、みたいな神視点は好きじゃない。努力しないと地震が来て罰されるっていう視点になってしまいがちで、これは本当に嫌。天災は何の罪もない人を何の予兆もなく襲うから天災なのだ。閉じ士のせいでもない。これは次項に繋がりそう。

 こういう震災モノの映画で、家に帰るとこ、どっかで見たなぁ、線は僕を描くだっけ、確かに「行ってきます」って言えなかった喪失の話だけどしっくり来ねえ、と思っていたが、Filmarksを漁ってて分かった、『風の電話』だ。西島秀俊とかが広島から大槌までヒッチハイクさせてくれるやつ。主演はモトーラ世理奈さん。あれもラストはイマイチかもしれんが、よく考えたら似てるな。

2.拭えぬ「巻き戻し」感

 まず始まる映像からしてですね、あ!『ほしを追う子ども』をやる気では??っていうのが透けて見える訳ですよ。うわ、あんまり覚えてないけど兎に角ハマッていない事実とジブリ臭だけは覚えているぞ、と。で、実際のところ本当に東日本大震災星を追う子どもをmeetsさせた感じで、しつこいぐらいのジブリ感もそのせいだと信じたいです、ええ。ルージュの伝言かけながら後ろをクロネコヤマトのトラックが通った時は死にたくなりましたが。

 で、やりきれなかったり、不評だったモチーフやイメージをやり直すこと自体は別に問題ないと思うんです。新海さん、そういう節あるし。でも、やり直してきてもっかい1周しちゃって帰ってきてるような感覚が否めなくて、これを他の監督とかでやった時には「原点回帰」とかそういう言い方をして褒めることもあるんでしょうけど、今回はそうは感じられなくて。前に進んだ結果、戻ってきているというよりもシンプルに巻き戻った感じがするというか。『君の名は』でポップで爽快なエンタメ性を獲得し、『天気の子』ではセカイ系として君と僕の関係が世界を救うの先、救わなくてもいいじゃん、君が大事なんだから世界を犠牲にするさ、という若者を大人が責任取ってやるぜっていうものを見せてくれました。どちらもが、既に決まったある運命から逃れる為に戦う若人の話であり、運命に抗っていました。でも今回は違う。既に後ろ戸があり、そこから日本中の地下にいるミミズを出さないようにする、という仕組みにずーっと則っただけで、しかも幼い頃の自分に椅子をくれたのは未来の自分だった、っていうパラドックスを回収する、むしろ運命論や決定論に従属するような内容。神のご意志としての天変地異感というか、日本の宗教的な感じ。明確に死との断絶があって、みたいな。忘れたら地震おこるよっていうのもそう。どこか前向きに、未来を見せてくれていたのに、今回は過去に矢印が向いていて、内省的で、それってむしろエヴァぐらいのころのセカイ系っぽいのかもしれんというか。いいじゃん。草太の為に首都直下型地震起こしちゃえよ。見たかったよ、新海誠が描く首都直下型地震

 ってことでですね、どうにも私自身も後ろ向きな感想が多めになってしまいました。前を向くために、後ろを締める、自分と向き合うっていうのは凄くいいことなんですけど、その前を向く要素といえる推進力の恋愛パートも魅力が乏しかったのかもしれません。死ぬのが怖くなるほど魅力的だったか、あの椅子。

 ちなみに、マジレスすると東京都の教員は追加募集をかけてるぐらい足りてないベースなんで、草太くんは採用試験の2次は欠席したかもしれませんけど、非常勤なら何とかなると思いますし、あと私立の採用シーズンはその後なので問題ないですね。