抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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ついにきた!スタジオライカの最新作!「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は今年1番の期待作として当初から名前を挙げていた作品の感想になります。

Missing Link [DVD]

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 

1.スタジオライカの最新作!

 さて、本作は「KUBO/二本の弦の秘密」などで有名なパペットによるストップモーションアニメの素晴らしい作品を送り出しているスタジオライカの最新作。米国でも十分に評価された作品であり、いまやなかなか長編制作の難しい手法でいまなお作り続けている尊敬すべき存在であります。

 という訳で、本作でもその実力は健在。これまでにも増して滑らかに動き、表情豊かな登場人物たちに、これは本当にストップモーションなのかと驚きます。特に、エンドクレジットで製作現場を公開してくれる象に乗っているシーンや、氷・水の表現、そしてまるで「インセプション」のように、あるいは「ドクター・ストレンジ」のように波に合わせて角度が変わっていく船内での戦闘模様なんかは、一体どれだけの手間と時間をかけたんだろうか…と戦慄するレベルでございました。

 ただ、一方で少し寂しさもあったというか。高度に発達した科学はもはや魔法だ、なんて言ったりしますが、ここまで高度に発達(高度に手間暇をかけた)ストップモーションアニメーションは、もはや対抗軸としてあるはずのディズニー・ピクサー作品のような3DCGとの境界が無くなってしまってはいないだろうか、とも思うのです。前作KUBOでは折り紙の描写なんかが、ストップモーションじゃないとできないような感じでしたが、本作ではストップモーションっぽさを感じたのは、前述の象に乗っているシーンの揺れ方ぐらい。より一般向け、大衆受けになっているような気もしますが、手法を用いるからにはそれにあった表現や設定が欲しいな、と思ってしまうのは、ライカが優秀すぎるからでしょうか。

2.異種族ロードムービー

 外側の話を随分としてしまいましたが、本作はいわゆるUMAを探すライオネル卿とビッグフットのリンク(スーザン)のロードムービーですね。ネッシーでキャラ紹介を済ませた後は、シアトルのあたりでしょうか、アメリカはワシントン州で2人が出会い、アメリカ横断、ロンドンに渡り、そこからヒマラヤへ向かってイエティの集落を目指す、というもの。途中で、地図の所有者であるアデリーナ夫人とも合流して追っ手を躱しながら…というストーリーとしてはめちゃくちゃ王道。船、象、馬車、電車と様々な乗り物に乗りながら移動していくので空間描写としてはいろいろ楽しいですが、基本的にゴールに到達するまでの話になってしまうので、そこはキャラの魅力で引っ張る感じです。

 となると、私にとってノイズになってしまうのがMr.リンクの設定。門前の小僧習わぬ経を読む、という具合で言語を習得している彼ですが、狭い世界しか知らないので外へ連れ出してくれ!という願い通り、そこまで完璧な言語能力な訳でもなく、ある種彼のカルチャーギャップコメディとしても楽しめるつくりなのですが、それにしてはちょっと都合のいいバカさになっているな、と感じてしまいましたね。

 それから、本作の敵となるのは、ライオネル卿を探検家クラブに入れるわけにはいかない、と暗躍する会長と彼の雇った殺し屋。殺し屋の割にヌルいな、はおいておいて、既存の世界の法則が壊れることをとにかく危惧してやっている様は、完全にイギリスの帝国主義的な支配を批判する構造。そもそも進化論を認めないなど、キリスト教原理主義的なアメリカの保守層を皮肉っている面もあるかもしれません。その点、リンクのいる側がいわゆる未開の側なので問われるのがライオネル卿の立ち位置ですが、うーん、いまいちだったかな、と。植民地支配的な構造とかに触れるのであれば、ヒマラヤでのザズーはもう少し賢く描いてもいいような気がするし、たまたま喋れるからリンクと意思統一しただけで、動物に擬人性が無ければ、彼は友人として認めるのか、そこは微妙な感じがしました。アデリーナが恋愛っぽさを出していた空気を一瞬で切って自分の冒険に飛び出すあたりはとても良かったのですが。

 

 まあ結論なんですが、本編の内容より途中からエンドロールでのどうやって撮ったか公開!が楽しみになってしまっていた時点で、本作と私との相性はあまりよくなかったんだと思います。基本的には誰でも楽しめるエンタメです、鬼滅以外にもぜひ劇場へ!