どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。
7月に見た旧作のご案内。18本見れました。見たかったここ数年の作品や、エバーグリーンな名作まで割と幅広く見れた印象。夏は暑いし劇場行く回数減りそうだしで、もっと増えるかも。
トゥルー・クライム
WATCHA3.0点
Filmarks3.1点
イーストウッド作品っぽさと言ってしまえばそれまでだが、今回のキャラである記者は本当に人間のクズだし、その記者としての部分も指摘された通りマスターベーションと言われても仕方ない。しかし、構造上完全に彼がヒーローとして描かれている。「運び屋」でモロに反省したように感じた半生が割と直接的な役柄と言えるだろう。
それと同様に、窮地に立たされた黒人を颯爽と救う白人ヒーローという構図がどうしても浮かび上がったまま、黒人に対する偏見的な描き方に強い違和感を感じる。過去の作品を現在の視点で批評するのはずるいとは思っても、それぐらい強めに出ている。
構図上の差別意識を少なからず感じるのも、あまりにも荒唐無稽すぎるから。6年かかっても何も進展していない冤罪を12時間で解決するにしても、流石に説得力のない展開や証拠が出てくる。ミステリーとしてもレベルが低いと言わざるを得ない。
八甲田山
WATCHA5.0点
Filmarks5.0点
午前10時の映画祭にて。
凄まじすぎる。実際に冬の八甲田山での撮影なので事実上ドキュメンタリー。その凄絶さは言葉では表せず、目を背けたくなる惨状でも目が離せず3時間弱はあっという間に。これを経験した昭和の名優たちはそりゃ顔の迫力が違うわ。
神田隊と徳島隊がしっかり描かれるので、何故成功と失敗が分かれたのか明確だし、組織としての限界も見える。片方が出発してるのにまだ計画も満足にできていなかったり、当事者意識が徹底的に末端に足りない。指揮系統は早くから混乱する。日本式社会の縮図とも言える軍隊式の大きな弱みがそこにある。
4Kリマスターになったことで、おそらく製作当時より過酷さが画面と音とで襲ってくる。いやホント怖い。最高の映画だが、2度と見たくない、とも思った。
夜のピクニック
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
恩田陸の名作だが、原作を読んだのが遥か昔すぎて覚えていない。「六番目の小夜子」も覚えていない。「蜜蜂と遠雷」は読んですらいない。
ただ80km歩く、その間にちょっとした変化しかない、でもそれが高校生年代には特別になる。そんな作品。作品としては素敵だが、こうした行事をプラスに捉える教師や教育委員会は撲滅したい。
とにかく多部ちゃんが大好きなので、彼女の魅力だけでずーっと引っ張れた。可愛い。あと眉毛凄いな、加藤諒かよ、とか思ってたらクレジットされてたり、池松壮亮が幼いまま出てたりと、後のスターも割と集合している、そんな彼らの青春時代に近い時期をカメラに収めた、そう意味でも貴重な作品。
ただ、距離感の遠い2人をくっつけようとする周囲に対して秘密がある、という設定を生かすことなく観客には秘密を序盤で提示し、その事実を知っていた友人がいることが明らかになると、何でお前くっつけようとしてたんだ、とはなる。
ノーカントリー
WATCHA4.0点
Filmarks4.2点
いわば災害的な悪役シガーに尽きる。
彼のような存在の前では旧時代の正義や悪といった二分法は全く意味をなさない。彼のルールに則ったところで生死はコインが定め、ルールを外れれば殺される。明文化されないまでも彼自身の中の哲学に近い行動倫理が彼の悪役としての魅力を底上げしている。
そして当然忘れてはいけない追う追われるの関係の中での双方の武器、装置に関する工夫の数々。対比関係に色々置かれている両者だが、その作成に捧げたであろう努力にはチャーミングさすら覚える。
コーエン兄弟は「ファーゴ」とかコレとかバイオレンスを押し出してる作品だと趣味に合うようだ。
フライトプラン
WATCHA3.5点
Filmarks3.3点
面白い!と思っていたら途中から明らかになる犯人の計略が浅過ぎて笑いだすかと思った…。
ジョディ・フォスターが凄い頑張ってるから成立してるけど、これ普通にB級映画。
あと吹き替えでみたら娘さん役がGRIDMANの宮本侑芽さんだったので単純に少し得点上げます笑
フライト・ゲームと合わせて飛行機バカ映画として楽しむのがいいでしょう。
以下気になった点をいくつか。
・どう考えても消えた娘が死んでないことはバレるのにどうする気?爆破しても遺体や遺品でバレるだろ。
・棺に仕込んだブツはここまで主人公暴走しなくては開かなかった。っていうか、遺体安置所を抱き込んだなら棺の番号ぐらい知っておけ。
・乗客の無関心が計画に組み込まれてるのは流石に厳しい。それを成立させるなら無関心だった乗客たちからの謝罪ムーブが欲しい。そうすることでメッセージ化できる。
・うん、ジョディ・フォスターもやり過ぎだよね。車の窓割ったり普通にハイジャックしてるよね。
・なんで飛行機降りかけた保安官=犯人は戻ってくるの?そしてなんでベラベラ真相を話すの?
・アラブ人達はなんだったの?
明日に向って撃て!
WATCHA4.0点
Filmarks4.0点
「さらば愛しきアウトロー」の為に録画にあったから鑑賞。
ヒラコー先生のドリフターズでもお馴染みブッチとキッドの強盗コンビ。彼らがヒーローとして描かれるのってこの映画のお陰なのかしら。
悪い連中に全く見えないカッコいい2人が本当に最高。ポール・ニューマンもロバート・レッドフォードも本当に格好いい。
銃撃シーンも両手に構えて彼方此方に打ってるのも素敵だし、ラストは忘れられないやーつ。まさにアメリカン・ニューシネマのお手本のように悲しくも、しかししっかりと心に残る。
フィールド・オブ・ドリームス
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
野球好きだけどメジャーリーグは詳しくないからシューレス・ジョーは知らなかったぜ!!
野球の話かと思ったが、家族と夢を追うことについての話だった。夢を追うことを諦めないのが大事なのはよーく伝わったが、だからこそ義兄に選手たちが見えるようになる瞬間の論理はもっとちゃんとしてて欲しかった。他のとこのSF的な設定やなんで代名詞の内容がわかるの?とかのあやふや感は許すからさ。
正直、オチがかなり早めに見えてしまったので途中のアラが目についたがトータルで見ればいい映画だと思う。
奥さん役のエイミー・マディガンはどの男たちよりもカッコよく素敵だったが、彼女が1番かっこいい2幕目は切り替わりが1幕目から流石に変わりすぎで少し停滞したかな。
ニキータ
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
もっと美味しく料理できただろー!!と思うが、この反省がコロンビアーナに生きたと思うので許す。
あれほど野生児的な振る舞いをするニキータがしっかり言うことを聞くようになり、そしてラストがあるのだから技術面だけでなく精神面の鍛錬ももっと描いて欲しかった。
そのせいもあって、どうも彼女は使える駒だが、男に守られる存在として描かれているように感じる。この辺は時代か。
ずーっと凄そうに描かれている秘密機関もこのジャン・レノを寄越してるようだと大したこともなさそうだ。ジャン・レノの狂気演技は素晴らしいのだが。
フィルス
WATCHA4.0点
Filmarks3.9点
クズな刑事もの。全然事件を解決しないで薬とセックスばっかりじゃないか!出世したいんじゃないのか!なんて思ってたら予想外の仕掛けで説明されて納得。繰り返されるジョーク的な差別ネタがきちんと回収される爽快感。上手く行かないすべての人たちへのセラピーみたいな映画になったのでは。
「トレインスポッティング」的なものを目指そうとした感も感じたが、原作者が一緒なのか。だとしたらむしろなんとか逆行しようとして抗い切れなかった、というところかも。
赤ずきん
WATCHA3.0点
Filmarks3.0点
本当は怖いグリム童話的な話かと思ったら人狼ゲームと狼男とヴァンパイア全部混ぜたみたいな話だった。
誰が人狼か、で引っ張るにしてはその要素が少ないし、三角関係の恋模様も、家族問題も入れてるからそれぞれが薄い。
中世的価値観の文字通りの魔女裁判は怖いなぁ、などと思いつつ、ミステリ畑の私は最初は本当に狼が出てくるとは思わず見立て殺人だ!!と興奮していたのでした。
愛と青春の旅だち
WATCHA2.0点
Filmarks2.0点
あらゆる差別、暴力、レイシズムが温存された軍隊での鍛錬の日々をこれでもかと肯定的に描く作品だと思ってしまった。
酷い差別発言、暴力、人格否定、洗脳に近い行動を繰り返すフォーリー軍曹とは同じ土俵で戦って勝つのではなく、土俵が間違っていると思想的に敗北させなくてはいけない。これが師弟愛なら体罰も認める社会にしましょう
結局、冒頭の入隊時の恐怖心の植え付けの文句は変わっておらず若い子頑張れ的な視線を送られている。主人公にも恐怖支配の構造が内面化されただけの話だ。
居場所がない、だから軍隊でも頑張れるという話も別段生きてこないし、恋愛によって自分が別の居場所を見つける文脈にもなっていない。チーム感も醸成されることなく終わった。
リネットにも特に報いはなく、ディストピアもの、軍隊地獄もの、胸糞ものとしてなら理解できるが作り手が肯定的に締めていることがさっぱり分からない
築地ワンダーランド
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
日本における食の聖地、築地の内部を撮ったドキュメンタリー。いわゆる職人的な仕事ぶりを映し続けるNHKスペシャルとか築地市場のPVとしては素敵だが、聖性ばかりが強調された印象。
鈴木智彦「サカナとヤクザ」を読んだ後には綺麗事しか描写していないことがどうしても気になるし、属人的で閉鎖的なコミュニティが食文化を担ってきた自負と重なって、変化しないことを良しとしすぎてる様にも映る。明らかに衛生面とか十分には見えない。
そして何より、彼らの誇る食文化の成れの果てがマグロ、ウナギ、サンマ、クジラ…幾多の生物資源を滅ぼそうとしている。魚は毎日変わる、再現性がない、という自然相手ということを自分たちの仕事の凄さの描写にこそ用いるが、その自然の資価値には触れない。日本の漁業へのスタンスが垣間見える。
ペイチェック 消された記憶
WATCHA3.0点
Filmarks3.1点
設定が「トータル・リコール」の頭脳派だなーと思ったらやっぱり原作フィリップ・K・ディック。劇中で言われるようにただの技術者のベンアフレックがやけに強いなぁ、と思ってたら鳩が飛んでやっぱりジョン・ウー。なんで技術者が棒術心得てるのよ…
主人公の作戦が偶然や相手のバカな行動に助けられてるのは、見えてるから、で済ませられるのでいいんだが、FBIに目をつけられてるのを分かって街中でカーチェイスにドンパチやる悪役、そっちを追いかけずにベンアフレックを探すFBIの行動原理はわからん。挙句に未来は見たら未来じゃなくなる、からの壊す前にもっかい未来見よーぜ!の自己矛盾。
あと、仕事して記憶を消すのが生業ならその仕事中に恋愛するとか、送金ちょろまかされる今回のような事態を想定してないとか、ベンアフレック自体のプロ意識は足りない。
パンダコパンダ
WATCHA3.7点
Filmarks3.5点
なんとまあ幸せな世界。
トトロの源流にも感じるパパンダのデザインはよく見ると少し怖いのだがそれを忘れられるファンシーさ。と同時に、アルプスの少女ハイジのような生活描写も楽しい。勿論技術的には現在のアニメーションほどではないが、アニメ的快楽とでもいうべき飛躍表現が実に心地いい。すっごい幸せな世界の中にも育児や家庭内役割の文脈も示唆されていて、実は深いのでは。だからこそ、オチでパパンダだけが頑張るところとか、父の役割が結局固定されているのは残念。いや、そこまで求めるものじゃないのはわかってるんだけど。
でも、コレってパンダがミミ子から見た世界ってだけで、パンダ親子はいついた不審者だったら怖いよねぇ。
パンダコパンダ 雨ふりサーカス
WATCHA4.0点
Filmarks3.9点
第1作よりもっと幸せな世界!
新たにトラちゃんが加入し、サーカスという要素が加わっているので寓話性が格段に増してもう見ているだけで笑顔になる。線路を外れてなお走り続ける蒸気機関はルパンっぽさもあった。
アトミック・ブロンド
WATCHA4.0点
Filmarks3.8点
女性主人公のスパイアクション。冷戦末期のベルリンが舞台ということで、単純に「ブリッジ・オブ・スパイ」とか思い出した(壁描写はあっちに軍配)
基本的にストーリーが入り組んでいる、というかスパイが各国出てきて誰かが裏切り者らしい、という話にスパイリストを持っている男を東ドイツから西ドイツに移すという臨時ミッションが間に挟まってくるせいで、何が起きているのかは分かりづらい。フランスの諜報員とか何がしたかったのかよくわからん。
だが、それらを超越するのがシャーリーズ・セロンのアクション。コレの後に「タリーと私の秘密の時間」を撮ったとは思えぬ絞り方で、ガンアクションは単純にカッコいい。そして大幅加点が、男女の身体能力の差を織り込み済みの格闘。一撃の強さは敵わないので、手近なもので殺傷能力がありそうならなんでも利用、股間や関節など急所を徹底強打、オーバーキル気味でもガンガン殺る、というアクション設計とそれへの説得力が段違い。東ドイツでの建物内での階段→部屋での殺し合いは、近づきつつある敵との双方を映すようなカメラの回り込み方なども含めて最高でした。
ただ、あくまでスパイとしては「ジョーカー・ゲーム」(実写版は知らん)のD機関の教えが絶対派なので、死体の山ができているのはどうなんでしょうか
ミクロの決死圏
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
体内に入って手術する、というワンアイデアで進む話だが、裏切り者がいるとか微妙にサスペンス感を持たせながら、基本的に何が起こるかフってオトす丁寧な作り。
閉所恐怖症的なとこも含めてもっとできたことはあると思うが、なによりも当時分かっていない色んなことが詰まった未知である身体、そして例えられる宇宙、生命の神秘。そういう、わからないワンダーを映画にしたい!という強い熱がまず最高。わかる事が増えた結果こういう余白を想像する映画は作りづらくなってるよなぁ…
海を感じる時
WATCHA2.5点
Filmarks2.4点
あまりにも台詞と台詞の間が長すぎる上に、ひとつひとつの台詞・発声・所作全てが非常に文語的で古臭い。70年代の小説が原作とは言え、映画化は2014年。原作を読んでないから分からないが、少なくとも監督か脚本家が自分に酔っているだけに感じる。2014年としてのアップデートを全く感じない。「かぐや姫の物語」と同じ年であるとは思えない。
結局物語的な展開も無いし、伝えるべくメッセージも無いし、共感させて没入させるキャラもいないし。怒りこそ覚えないが時間をただ過ごしただけ、という印象