抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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初めから詰んでいたのだ!「女神の見えざる手」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 年内に押し込むために超突貫工事で記事を連続アップです。

 映画「否定と肯定」を見にめったに来ないTOHOシャンテに行ったので、周辺で見れるものを探してみてみたのが本作です。こういう時にふらっと見つけるのが案外掘り出し物なんですよね。 

女神の見えざる手(字幕版)

 

WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

(以下ネタバレあり)

 1.とにかくバケモノロビイスト

 日本人にはあまり馴染みのないロビイストという職業を題材にした本作。敏腕ロビイストのスローンが絶対に不可能と思われる銃規制の法案成立のためのロビー活動に挑むという内容です。冒頭は聴聞会から始まり、途中途中で聴聞会を挟みつつ、銃規制法案の行方を描いていくという構成もよかったですが、何より特筆すべきは、主人公エリザベス・スローンです。とにかくロビイストとして辣腕!銃撃事件のサバイバーであることを隠していた部下の過去を生放送で暴露する、とにかく寝ないために錠剤を飲んで飲んで飲む。更に、これはあくまで後に分かることではありますが、銃規制法案成立のためのロビー活動の報酬は0ドル!更に成立するために自分が懲役刑に処されることまで織り込むという捨て身っぷり。そこまで銃規制にのめり込んだ彼女に内在する理由も全く不明。それなのに、とにかく勝つために勝利を選ばないところは、最早共感できるラインの遥か彼方に飛んでいくので、こちらは彼女を応援するよりも、スゲー…と感心しっぱなし。ここまで共感性0のサイコパスっぷりが際立つ主人公といえばELLEが思い出されますね。

tea-rwb.hatenablog.com

2.とにかく驚くロビー活動と結末

 個人的には、アメリカでの銃規制の難しさや、その障害となるNRA(全米ライフル協会)については、いろんなところで知っていたので本作で描かれるロビー活動の困難さは想像しやすいものでした。

 ロビイストについてはこちらなどをご覧ください↓

miyearnzzlabo.com

 ただ、ロビー活動の成果を映画的に表すのは難しそうな中で、議員の数取りゲーム的に描き、実際の写真をあっちへこっちへ動かしながら法案成立が近づいていくのが非常にわかりやすく描かれていました。ロビー活動の内容としては、銃規制反対派も賛成派もどちらも考えうる限りの汚い手を使っていて、まさに総力戦。前の会社でスローンが鼻で笑っていた女性票をしっかり確保していたりと、見ごたえ抜群でした。

 ロビー活動が功を奏し、銃規制法案が成立に傾いてきたタイミングでスローンの私生活やロビー活動がメディアに報道され始め、プライベートはなくなり、更には議会から呼び出される始末。ところが、この聴聞会を開かせるところもスローンの計画通り。黙秘権を行使している中で、思わず逆上して質問に答えなくてはいけなくなることも、最後に爆弾を出すための用意。聴聞会に男娼が現れたところは唯一スローンの計算外に見えましたが、彼が偽証罪にはなりますが彼女との約束を守ってセーフ。疑ってごめんね。

 そして、すっぱり手を切ったと思い込んでいた右腕が内通していてすべてをひっくり返す"Earth quake"ファイルをアップロードして聴聞会が体をなさなくなるということに。冒頭のホテルで予告していたロビイストの鉄則の話が前振りとして完璧に機能していたことを思い知るわけです。そう、仲違いして喧嘩別れしたに見えた始まってすぐのあの瞬間に勝負は決していたのだ!!!いやーほんとに見事すぎる手腕でした。

 まあ、そこまでやったので結局何人の議員が賛成に回ったのか、"Earth quake"の効果はいかほどだったのか、銃規制法案のその後を描いてほしかったな…という悔しさも残りました。

 同日にみた「否定と肯定」にも通底する、現代の社会的背景を想起させる作品でしたが、此方の方は銃規制をしなくてはならない、というようなメッセージではなくしっかりとしたエンターテインメント作品でした。