抹茶飲んでからマラカス鳴らす

見た映画、読んだ本、見たアニメ。そんな話を中心に。。。

サスペンスに見せたコメディと高らかな女性賛歌「エル ELLE」

どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

サラエヴォの銃声」以来の日本及びアメリカ以外での制作の映画です。

9日から見たい映画がまた公開されるので今回は早めに書き上げました。

 

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Filmarks3.8点

WATCHA4.0点

(以下ネタバレ有り)

 

1.衝撃の幕開け、そして絡まる人間関係

 開幕から衝撃でした。イザベル・ユペール演じるミシェルが自宅で強姦被害に遭うところを猫が見ているシーンでスタート。犯人が立ち去るとミシェルは現場を片付け、風呂に入り、寿司を注文し、息子・ヴァンサンと夕食を楽しみ翌日からも出社して普段通りの生活を送ります。

 え、ちょっと待ってよ、警察呼ばないの???

 この時点で何かおかしいという雰囲気MAXです。

 そして、ミシェルの周りの人間関係はもうぐちゃぐちゃです。彼女は共にエロゲー会社を立ち上げたアンナという、いわば戦友がいますが、その旦那ロベールと不倫関係にあり、職場では部下達に一部を除いて嫌われっぱなし。元夫のリシャールとも良好な関係を築いているものの、リシャールは若い女に入れこみ、息子のヴァンサンは定職に就かずファーストフードのバイト。しかもどうやら地雷物件の匂いのする女性と結婚する気で妊娠もしている。父親は大量殺人鬼で服役中。母親は整形を繰り返し、若い男を金で買っている。極めつけは襲われた後にもかかわらず、敬虔なクリスチャンの隣人レベッカの夫・パトリックが気になり、覗きながら自慰をする始末。

 そんな中、社内に雑コラが頒布され、レイプ犯からは非通知でメッセージが届く。ミシェルは警察に頼らないで犯人捜しを始める、といった内容です。

 基本的には犯人を捜しながら、上記の人間達の関係が絡まって動いていく、ということになります。

2.実は重要なのは犯人ではなかった。

 作中、レイプ犯の正体は実はラストまで引っ張られません。割と中盤でミシェル本人も犯人がやや思いを寄せていた隣人パトリックであること、彼の性癖が歪んでいることを理解します。この先が理解不能。それと知りながら、警察に通報せず普通の隣人として接し、さらには誘い受けに近い形で再度レイプされるのです。あるいは最中に、あえて彼の性癖から外れる台詞を言ってみたり。もうミシェルの脳内が訳分かりません。

 即ち、犯人を探すミステリーが主軸ではないのです。途中、自宅内に犯人がいるかも、というサスペンスのようなシーンもあるにはありますが、おそらくこれも主題ではありません。主人公ミシェルを筆頭に我々の知ってるお約束や共感性をかなぐり捨てて、やべー奴ばっかの映画なんですね。つまりこの映画、レイプを設定に用いたブラックコメディなんだと思います。

 例えば、アンナ、ロベール、リシャールとの食事会の冒頭でミシェルは強姦被害にあったことを報告します。当然凍る空気。するとミシェルは言うのです。「こんな感じになるなら言わなきゃ良かった。この話はおしまい。注文しましょ。」と。

 あるいは、会社内に自身を雑コラされたエロ画像を頒布した犯人に対して、下半身の露出を要求し、あんたじゃない、割礼した男を探してる、と言っておしまい、など。ミシェルはあまりにも強すぎる女性と言えるでしょう。

 多くの「えっ」が襲ってくる本作最大の衝撃は、ラストにありました。犯人のパトリックを正当防衛で殺害、警察に通報後引っ越すことになった隣人レベッカ。彼女は最後にこう言い放ちます。「ありがとう、彼につきあってくれて」。背筋がぞわーっとします。レベッカは全部分かった上で泳がせていたのかもしれない…。

 この作品の評価は世界中で二分されて問題視されているそうです。性に奔放すぎる女性の描き方や、レイプの扱いについて文句も出ているようです。ただ、私はこの映画を女性賛歌として受け取りました。だって男がみんなバカで性欲の赴くまま。一方の女性達は強く生きています。ロベールとの不倫をミシェルの口から告げられてもアンナはミシェルではなく、ロベールを切り捨てています。ミシェル自体は幼少期の特殊な体験からある種の破滅衝動を抱えたような人物ともとれますが、彼女を含めた女性たちが実にしたたかで、狡猾で、強く生きている作品だったと思います。

 

 ただ、個人的に本作品一番の衝撃は観覧後、wikiを見ていた時でした。

 主演のイザベル・ユペールが64歳。えっ!

 ちっともそう見えない若さでしたし、濡れ場の数も質も凄かった。女優魂のすごさを見せつけられていたことに気づかされました。そらフランス映画なのにアカデミーで主演女優賞ノミネートされますわ。