抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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細田守の幸せな世界「未来のミライ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 すっかり夏休みも終盤。1試合も見ないまま甲子園が終わってしまいましたが、映画も夏休み戦線、特にアニメ映画が満載。日テレがネクスジブリとして抱え込んでいる細田守最新作です。アニメ好きなんですが、ジブリ細田守、ディズニーからは意図的に距離を置いていたのです。ところが、本作で神田松之丞さんが声優を務められる上に、好きな声優である本渡楓さんまでご出演とのこと。これは仕方ないと覚悟を決めて向き合うことにしました。なんとなく見たことあるけど、となりのトトロなんかまで録画しちゃいましたもん。というわけで、ワンピース、バケモノの子、時かけを予習して臨んだ「未来のミライ」です。

未来のミライ

WATCHA3.0点

Filmarks2.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.アニメ的快感にあふれる映像

 細田作品はどれを見ても思いますが、とにかく映像が美しいですよね。新海誠作品も美しさが称賛されますが、あっちは背景美術とかが美しい印象、細田作品は人物の動き方がいいですね。くんちゃんが自転車を漕ぐシーンや家の中を行ったり来たりするシーンは見ているだけですげー…と口をあんぐり開けてしまうほどのレベル。凄い。

 そしてくんちゃんが経験する異世界?もよかったですね。犬のユッコが初めて擬人化したシーンはバケモノの子の剣術鍛錬の場所に似てはいましたが、特にひいおじいさん(cv福山雅治以上に福山雅治)が登場した戦後すぐの情景は出色。あとは未来の東京駅の無機質な怖さもしっかりと演出できていたと思います。最後に登場する家族の木(ファミリーツリー=家系図ってことだろう)のなかの世界は、細田さんの初期作品であるデジモンの世界観も感じました。

 あと、映像とは違いますが、OP、ED共に担当されていた山下達郎さんの音楽も最高であれで挟まれてただけでいいもん見た、という気になることができました。

2.リアルな育児を描いた意味

 本作で描かれるくんちゃんは4歳。監督自身も言っていますが、これまで殆ど類を見ない、かなり勇気のある選択だったと思います。だからくんちゃんはいくつかのエピソードを経ても、その前後での成長はありますが必ずリセットされ、また毎度のように赤ちゃん返りをしてしまいます。ただ、これ自体は4歳という年齢としては極めて普通のこと。

 また4歳であることから行動範囲が極めて狭く、ほとんどが家の中、公園に自転車の練習をしに行ったぐらいしか舞台がありません。必然的に両親とミライちゃん、すなわち家族が重要な人物となるわけです。その中で、手探りで頑張っていくお父さんや怒りたくないのに怒っちゃうお母さんなど、めちゃくちゃリアルな育児・家事描写をしているし、お母さんがお父さんに言い放った台詞は家族連れ出来たら耳が痛くなったお父さんもいらっしゃると思います。

 細田監督と向き合ってまだ少ししか経ってないので、正確にはわからないのですが、細田監督は現実とファンタジーの融合した世界の中でジブリがファンタジーよりならば、現実よりに描いていきたいと考えているんだと思います。バケモノの子もわざわざ渋谷に帰ってくる展開になりますし、デジモンも現実に侵食してくる話でした。そういった意味で、アニメーションという世界にここまで明確に育児を持ち込んだのは初めてではないでしょうか。

3.気になって仕方がない説明不足

 さあアニメ的演出に関しては素晴らしいものを見せてくれた本作。しかし、脚本や構成の面では首をかしげたくなることが多いのも事実です。

 何といってもくんちゃんの異世界?時間?の移動。何回かの移動が終了したタイミングでくんちゃんが寝ていた描写があるので、夢の中ともとれますが、それであればくんちゃんの知らない言葉「嫉妬」などが出てくることや、ひいおじいちゃんのエピソードを正確に再現できたことが不可解に。本当に移動しているのであれば、その方法が分からないわけです。くんちゃんだけではなく、ユッコが人化及び未来のミライちゃんがタイムスリップしてくる理由や方法が説明されていません。SF的なことを一切話していないなら文句はないんですが、ミライちゃんは現在と未来の姿が同時に存在できないとか、そんな説明はしているんだから説明できるようにしてくれないと困ります。(なお、この説明も未来のくんちゃんと現在のくんちゃんが会話することによって崩壊しています。)

 最も伝えたいメッセージであったと思われることは、自分は色んな偶然の重なり、血のつながりで奇跡的に今、ここに立っている、的なことな訳ですが、まずこれの伝え方が下手くそ。せっかく色んなことを演出で見せていたりしたのに、ここは全部ミライちゃんが喋ってる。一番やっちゃいけないことだよね。カメラを止めるな!はこういうのを見せるのが非常にうまかった。

 と同時に、このメッセージにも乗れない。個人的には「私はここに存在しているのは私だから」という考え方であって、血を重視していない。生まれが九州ということもあり、親戚一同も大事だし、血を強く意識することの方が多いんですが、だからこそ自分の存在理由をそこではなく、自分自身に強く求めているんですよね。血がそこまで重要なら、例えば非嫡出子なんかは認められないのではないでしょうか。あるいはもっと身近なことで言えば「お前なんて生まれてこなければよかった」的な言説をする親の元に生まれた子はどうなのでしょう。自分を証明するものが血以外にない、というのはあまりにも受け入れ難いメッセージでした。 

tea-rwb.hatenablog.com

4.細田守の家族観

 結局のところ、上記のメッセージが受け入れられないのも、実は一発目の家の様相からなんですよね。建築家の夫が自ら設計した家。階段が多く、上から見通せる家。とても素敵に感じるかもしれませんが、これから子育てをしようという家としては危険極まりなく、ありえない、というのが私の感想でした。結局お父さんは父ではなく、建築家としてこの家を建て、親になっていない、住む人のことを考えないでエゴイスティックに家を作る人なんだと思ってしまったわけです。

 それでいて、独立してフリーで設計をできる稼ぎもあり、どうみても40代になってないのに横浜に戸建てを建てれる。祖父母も面倒を見てくれる。

 超富裕層じゃん。

 なんていうか、今の状況で映画を作るときにこんな恵まれた家庭での話したって、おとぎ話と変わらない気がするんですよね。みんな優しくて、みんな幸せ。

 インタビューとかを読むと細田監督は自分の経験を直接映画に落とし込む方のようで。結局のところ、細田監督が見事に幸せなだけ、もっというなら父というより、監督として幸せなんだろうなぁ、と思うしかないわけですよ。私小説やエッセイと同じジャンルの作品だったということなんでしょうね。

 

 あ、そもそもの見に行くインセンティブ要因だった本渡楓さんは念願の赤ちゃん役が十分できていたと思いますし、神田松之丞さんは感情が死んでる完璧な演技だったと思います。あの迷子案内の人、見に来た子どもには怖すぎないですかね?笑