抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

可愛い子どもにカッコイイ大人たち「ジョジョ・ラビット」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 ファーストデイ特打5本鑑賞を敢行しようと思ったのですが、寝坊で1本消え、体調不良で「9人の翻訳家」をリタイアし…と結局夕方から始発までの3本勝負になった3本目。
 オスカーにも多数ノミネートされ、「Thor:Love&Thunder」がこの後も準備されているタイカ・ワイティティ監督作品「ジョジョ・ラビット」になります。

 大好き!!

Jojo Rabbit (Original Motion Picture Soundtrack)

WATCHA5.0点

Filmarks4.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.演技上手すぎ合戦!笑ってはいけないヒトラー24時

 まあとにかく本作を語る上では、全員最高な演者陣を褒めることは外せません。

 まずは圧倒的な魅力を誇るローマン・グリフィス・デイビスとその親友ヨーキーを演じたアーキー・イェーツの子役コンビ。後述する点でもありますが、ほぼ1点を除いて子ども視点で描かれる本作において彼らが魅力的でなければ、物語への没入感を得られません。その点彼らは非常に魅力的。特にヨーキーのマスコット感が最高でした。時々ジョジョに会った時の彼の安心感ったらないですよ。よく考えるとヨーキーは非常に現実が見えているキャラだな、とも思うんですがそれもそんなにノイズにならない。

 そしてオスカーノミネートの母親役スカーレット・ヨハンソン。コミカルでありながら、芯の通った強い女性であり、素晴らしい母親が最高。あれ、なんかこの前もユダヤ人匿ってなかったっけ?という気もしますが、彼女の繰り返される靴紐周りの言動やビビッドな衣装がジョジョの成長も描く助けになっていますし、彼女ナシではありえない映画でした。

 そしてナチスチームで言えば、圧倒的な信奉者のレベル・ウィルソンとすっげー良い奴サム・ロックウェルも最高。ドイツ国内の人たちの考えの両極端を表しているようでもあり、素晴らしい。っていうか、最後のサム・ロックウェル最高すぎませんか。ナチスじゃない世の中に生まれて欲しかったですね…。無論、彼らが輝くためにジョジョを囃し立てるザコ連中の存在も忘れてはなりませんが。

 んで、個人的に凄いな、と思うのはタイカ・ワイティティ。まあ最高のトリックスターで分かりやすく目立つのでしょうがないですけど、ここまでヒトラーで遊んだ人も珍しいのでは。まして、ノリノリで自分でやっちゃうんですもん。ジョジョの状況やヒトラー本人の状況によって細かくヒトラーの容姿を変えたりしてるし、プールで横に泳ぐヒトラーはもう笑いをこらえられませんでした。まあタイカ・ワイティティが凄い、っていうよりもあの横で見えないフリして芝居するスカーレット・ヨハンソンとかが凄いな、というのが正直なところですが。何テイクしても笑っちゃうよな…。役者さんって凄い。

2.子どもに投影されるナチズム

 さて、ヒトラーの演技が愉快、なんて話をしましたが、今作のヒトラージョジョのイマジナリー・フレンド。イマジナリー・フレンドとしてのヒトラーは、いわゆるナチズムの象徴であり、洗脳のように刷り込まれ、子ども達に内面化されたナチズムであります。いわば、今回の週末キャンプに参加していた子ども、そしてナチズムに無自覚に加担していた人物全員に脳内ヒトラーがいたはずです。

 そんなジョジョの視点を徹底したことで、本作は戦争の物語ではなく、少年の成長を描く作品であり、それなのに戦争批判にしっかり繋がっている、という構造になりました。

 ジョジョにとっては、ドイツが勝つかどうかの大局的な話なんてわからないし、目の前のユダヤ人との対話とか、周りにバカにされないとか、そういうことの方が大事です。そんな中で究極である、母親との死別、というシーンも視線を徹底してあり、吊るされている母親の足しか描写はしません。その前段階で踊っているときにも足元だけを映すことで前振りはしてある訳ですが。ここ、ズルいのは母親とユダヤ人少女の会話だけはジョジョの視点を外れて観客にだけ見せているんですよね。そこだけはジョジョが知り得ないことを見せている。そのせいで母親との死別が、映画が始まってからの時間以上の重さがある、というか。それまでジョジョが生きてきた年数分ぐらいの重さを感じることになる訳です。そんなのはズルいです。

 で、こうした出来事を経て、まあ綺麗にイマジナリー・ヒトラーと決別し、戦争の敗北を少女の自由と捉えなおして踊って終わる。この過程で明確にドイツの敗北シーンを子ども視点では織り込み、ヨーキーにあっさりと切り替えさせて戦争教育のおぞましさをしっかり批判することになる。ジョジョのように、ユダヤ人に対して特別な感情を抱いていても戦争の洗脳教育は解けない、という恐ろしさも感じます。

 なんか、構図としては少しヒトラーを単純悪として描きすぎているような気がしないでもないですが、個人的にはこれぐらい単純化したものだろうと、ただの悪役設定にしているだけの作品がゴマンとある中ではしっかりナチスと向き合っていたのかな、と思います。あとは、ジョジョの周りは、現代的に見た時の正しさを分かっている人が多すぎかな、とは思いますが。でもヨーキーに死んでほしくないもんなぁ…。