抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

未体験ゾーンの映画たち2021「ある用務員」「シンクロニック」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 

 さあ、今年はついに手を出してしまいました未体験ゾーンの映画たち。韓国のアニメ映画がエントリーしてたので、アニならメンバーとしてチャックしないといけないかしら?なんて思ったが最後、気づけばラインナップを見渡して丸を付け始める始末。仕方ない、面白そうなんだもの。そして、面白かったんだもの。

 

 

1.ある用務員

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WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

 未体験ゾーン1発目は、「ある用務員」。

 ヤクザの娘・唯を学校の用務員として守る立場の深見の物語。89分のタイトな尺でありながら、開始30分程度まで深見と親分である真島の物語としてどっちかと言えば進む。そこで関係性を見せておいての父殺しの物語として前半はするのだが、真島の遺言に従って唯を守る立場になってからは、キャラ濃いめのヤクザや殺し屋が次々登場しては退場していくテンポの速いサスペンスアクションに。変にナヨナヨさせずにそっちに振り切ったのは英断だったと思いますね。ただ、ずっとアクションだとどうしてもテンションが上がりきってしまう中で、飄々と人を殺せる前野さんのシーンを挟んで一個ずつ笑わせていく感じも非常に丁寧。

 印象的な役者としては、やはり声が聞こえるだけで安心感と怖さを感じさせる真島を演じた山路和弘さん。立場的にも「91days」のドン・ヴァネッティなんかを思い出しましたね。ヤクザで言えば真島を殺すように仕向けた深森を演じた般若a.k.aラスボスです。多少聞き取りづらいセリフはありましたが、基本的に彼は顔と歩き方の演技だけでどの程度やばくて、しかし小物なのかがよく分かるのでもうそれだけで100点だと思っています。

 殺し屋の面々だとやはり女子高生コンビの金髪の方を演じていた伊澤彩織さん。普段はスタントウーマンということでなるほど納得のアクションの凄まじさ。そのあとの稲岡との凄絶な殴り合いと比べるとスタイリッシュで寸前まで深見を追い詰めた好戦闘でした。

 キャラから本筋に話を戻していくと、復讐の連鎖が野間口徹山路和弘福士誠治←芋生悠とつながっていくのに、彼女は復讐を選択しない。そこで連鎖を断つわけですが、その理由があなたや父とは違う!という理由で、復讐は何も生まない的な聞き飽きた反論出なかったのも良かったし、そこまで一切汚れていなかった真っ白の制服が、その決断のシーンでは深見の血がついている。シーンを考えるとそれ以前で深見の血が付着していそうなのに真っ白だったことから、彼女の決断が深見の運命も背負ってのものだ、という演出だと思いますが、これがまた良かったように感じました。

2.シンクロニック

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WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

 未体験ゾーン2発目は「シンクロニック」。

 MCUのヒーローにして、次のドラマでキャプテン・アメリカに指名されているにも関わらず、既にネトフリで「ユピテルとイオ」「デンジャー・ゾーン」と、不思議なSFに出演するのがライフワークなのかな?という不思議なキャリアな気がするアンソニー・マッキーと、2020年におれならにて次期007として指名させていただいたジェイミー・ドーナンのW主演。監督・脚本コンビはオスカー・アイザック主演、イーサン・ホークヴィランMCUドラマ「ムーンナイト」へのフックアップが決定しているコンビ。こういう先々フックアップが決まっている人を見ておくのは大事ですよ。

tea-rwb.hatenablog.com

  長々と前置きしていますが、内容としてはなるほどそりゃ「ムーンナイト」に抜擢されるわ!という内容のSFでした。基本的に夜ばっかで暗い!あとカメラが空にパンしていき、月や星空を映すショットが非常に多い印象でございました。

 救急隊員の主演2人が通報を受けて向かう先に変死やら変な怪我をしている人が続き、みんなシンクロニックという合成麻薬が傍らに。これが飲むと7分間タイムスリップしてしまう麻薬だった、というシンプルな話。ジェイミー・ドーナンの娘がこれを飲んでタイムスリップの挙句に行方不明になって、それを探すのがメインのストーリー。

 シンプルにバディものとしてまず楽しい。アンソニー・マッキー演じるスティーブの方はプレイボーイで独身。ずーっと鎮痛剤飲んでて、脳に腫瘍が見つかる。一方のジェイミー・ドーナンの演じるデニスは結婚しており、18歳の娘と赤ちゃんの二子をもうけている。過去のトラウマとなる棺に関連する映像がフラッシュバックしているスティーブと、未来を担う子どもたちと過ごすデニス。過去と現在と未来がしっかり繋がっているんだ、という作品を通して語られるメッセージだけでなく、死と生をも交互に担っている。2人の掛け合いも面白いが、救急隊員なのに現場についてもちっとも焦ってない感じなのがまた独特の空気感を醸し出しております。

 また、楽しいのはシンクロニックによるタイムスリップ。7分間限定のタイムスリップなんですが、そのルール説明がすっごい丁寧。タイムスリップするのはスティーブだけなんですが、わざわざ脳腫瘍の説明の際に脳の一部分が10代のまま、という特殊設定を付与して彼しか大人はタイムスリップできないことにしちゃう。スティーブは救急隊員ってことで、理系思考なんでしょう。一回目は普通に試すが、二回目は映像で記録。それによって、使用した場所で移動する時代が変わってしまうことを仮説として提唱し、三回目で確認。四回目は、いなくなったデニスの娘を連れ帰る可能性の検証の為に飼い犬と一緒にタイムスリップ。氷河期、南北戦争、入植時代など、様々な時代にタイムスリップし、その様子が背景が徐々に溶けていくように変化していくので面白かった。

 基本的にはSFだが、まあ題材が題材なのでモロ薬物依存の話でもあるし、薬物に限らず、酒もよく飲み、依存に関する話はかなり強い。ちっちゃく会話の端々で黒人差別の内容を扱ったり、バック・トゥ・ザ・フューチャーやら007やらの話も出てて楽しい。基本的には既に記したように、過去と現在、そして未来は繋がっているというのが大事なメッセージだ。タイムスリップの説明もレコード(=円形で繋がっている)だし、カメラのパンの動きもそう。そして最後の大ネタになる石に刻まれたメッセージもそう。未体験ゾーンにしてしまうのには惜しい気もするいい作品だった。