抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

めくるめくおじさん狂騒曲「ジェントルメン」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は「ジェントルメン」の感想です。本当にどうでもいいですが、エンディング曲が、FC東京主催試合でのボールパーソン紹介のテーマ曲と同じだったので、エンディング、頭の中では「Today's ボールパーソン小平南ハイスクール」がstevenの声で流れました。

The Gentlemen (Original Motion Picture Soundtrack)

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

(以下ネタバレ有)

 

1.ガイ・リッチーの帰還

 かつて『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で鮮烈なデビューを飾り、『スナッチ』で名声を不動のものとしたガイ・リッチー監督。どちらもイギリスを舞台に、裏社会的なギャングものをやってきたわけで。その後は『アラジン』『シャーロック・ホームズ』みたいな割とビッグバジェットな全年齢向け感溢れる作品を送っていた訳ですが、今回『ジェントルメン』とは名ばかりのイギリスの大麻をめぐるどこかおかしい作品を撮った!ということで、皆さんがガイ・リッチーが帰ってきた!と大騒ぎでございました。

 そんな騒ぎを横目に見ていた緊急事態宣言中(いや今も宣言中ですが)をなんとか乗り越えまして、無事鑑賞できました、よかったよかった。

 で、みんなしていうあの頃のガイ・リッチーが帰ってきた!なんて言ってるんですけど、それはちょっとどうなのかしら?という風に思いました。小見出しにしておいて帰還じゃないのかよ。っていうのも、かなり編集のカッコよさが目立つ2作品に比べて、本作はその編集のカッコよさに仕組み上のエクスキューズがついているし、『スナッチ』のブラピみたいな何言ってんのか訳わかんない方言強いやつもいません。無駄話や時系列の違い、場面の転換にも編集同様のエクスキューズが使われる格好なので、なんだろう、あの頃のガイ・リッチーが帰ってきたんじゃなくて、ガイ・リッチーが外面を良くしてきた、とか、丸くなってきた、みたいな印象がとっても強い。これが俺の考えるかっこいい、だ!!をドンと打ち出しているというより、こういう風にするとみんなかっこいいって思うよね!?みたいな感じ。伝われー。

 んで、じゃあその創作上のエクスキューズっていうのは何かというと、基本的に語り手の時制が動いていないこと。冒頭で大麻組織のボス、マシュー・マコノヒーが撃たれた、みたいなシーンこそあれ、それ以外は終盤に至るまでマコノヒーの秘書的な役割のチャーリー・ハナムの家を訪れたうさんくさい私立探偵のヒュー・グラントが調査結果をゆするために報告している、という形式。しかも、それが脚本、という形で提示されているので、ヒュー・グラントのキャラも相まって脚色がなされたり、時系列戻したりなんてのも余裕で受け入れられる。いわば、ガイ・リッチー作品の持つ独特な部分を全部ここで回収しちゃってるわけで、一回こっきりの技だろうとはいえ、とても良くできていると思います。更に言えば、それを成立させるために、2人がこの話を始める前のアイスブレイク的な会話でヒュー・グラントのいうことはそんなに信用ならんぞ、ということだけはしっかり見せていてここが特筆して巧みではないでしょうか。

2.みんな大好きおじさん大集合

 最終的には、そんなヒュー・グラントが掌の上で転がしてました、と思ったらそれも掌の上で転がされてました、みたいなツイストを仕掛けて時間が進んでいくことにはなるんですが、まあ正直それは終わり方の問題でオマケみたいなもん。やはり本筋はおじさんたちのイチャイチャ、もとい会話劇でしょう。

 そもそも、大麻組織の重鎮たるチャーリー・ハナムが場の支配権を一見ヒュー・グラントに譲っているように見える会話がもう濃厚なイチャイチャに見える訳ですが、そこに真面目なボクシングジム経営のコリン・ファレルやら、悪い顔が良く似合うヘンリー・ゴールディングなんかがもう大好きですよ。なんなんですか、あのコリン・ファレルの服。コリン・ファレルなのにあんなに街の片隅にいそうな感じだせるの凄いですよ。あと、ヘンリー・ゴールディングは007キャスティング会議で悪役指名も考えていた私の慧眼!(いつまで昨年のおれならを引っ張るのか)。

 そして胡散臭いマシュー・マコノヒーの取引相手であるマシュー(ややこしい)を演じるジェレミー・ストロングもいいうさん臭さ。最後のやられっぷりも良かったですね。

 ああそうだ、あと思い出した、ヒュー・グラントを雇った小物編集長エディ・マーサンの悲壮なやられっぷりも良かったんですけど、彼らが編集長室で話していた時に口をはさんで怒られる副編かただの編集者かわかんないですけど彼!彼のシュンとした顔がもう絶品でした。あの顔できるの凄い。