抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

青春映画の金字塔になった「ちはやふるー結びー」

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 幸いにして花粉症とは無縁の春を送っている中、今回取り扱うのは今を時めく若手俳優が勢ぞろいしたといえる「ちはやふる」シリーズ完結編です。

 控えめに言って神級。

ちはやふる-結び- (レンタル版)

WATCHA5.0点

Filmarks4.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.豪華なのに誰も消えていないキャスト陣

 ちはやふるを語る上で間違いなく外せないのがキャスト力でしょう。

 圧倒的天才肌でかるたバカというキャラを完璧に憑依させている広瀬すずさんは100点満点を軽く飛び越えていく名演技でしたし、君の名はで一気にビッグになった上白石萌音さんも、完璧。机くんも肉まんくんも含めて脇役といえる続投した瑞沢かるた部員たちもしっかり見せ場があってよかった。机くんは上の句の立役者でしたが、今回も成績面で太一の理解者となり、且つ初心者的ポジションとして新入生の理解もできる。そのうえで最初は偵察に回るなど、主題となる未来を提示する役割も担っていて素晴らしかったです。新入部員の2人もそれぞれに見せ場がある上にキャラがしっかり立っていて埋没していませんでした。

 そして語らなくてはならないのは真島太一役の野村周平さん。正直前作までで一番演技が微妙に見えたし、イケメンだからでしょ感が否めなかったのですが、今作はそれを撤回せざるを得ない好演。ほぼ主人公と言っていい立場で、國村隼さんや賀来賢人さんに負けない演技を見せてくれました。

 瑞沢の外では、まずこの作品から名前をもらった新田真剣佑さんは相変わらず福井弁がパーフェクトでとてもアメリカ帰りには見えませんし、勝手にふるえてろの天才松岡茉優さんはコメディリリーフなのに瞬間の品格を損なわない強者であり続けました。

 賀来賢人さん演じる周防名人はハンディキャップの描写が精緻。背負ったうえでのかるたへの向かい方が演技に現れており、太一のメンターとしても良質でした。あとは、新に告白し続ける清原果耶さん。感じと勘字のネタは面白かったですし、彼女のまじめな強さもまた、しっかりと表現されていました。

 ここまで細かく名前を挙げるのは、この映画の主題とメタ的にこの若手俳優陣の状況がダブって見えるからです。その辺は後述で。

2.青春映画のその先へ。

 青春映画の金字塔になったと銘打ったわけですが、そもそも青春映画を考えれば殆どが思春期の甘酸っぱい恋や部活にかけた思い、友情などが描かれ、実は学校生活が全てに見えてしまうというところがあります。そうした永遠にも思える青春の1ページを見ることで懐かしんだり、ファンタジーを感じたりするのが青春映画だと思うのですが、この映画はその課題をかるたというテーマごと超えていきました。

 まずは高校の部活という側面。当然欠かせないのが受験と代替わりです。受験の側面を太一を使って描くとともに、受験に無理解な千早の発言で千早の将来への無計画性というか、かるたバカっぷりを際立たせます。そして代替わりに関しては、大会会場での先輩の何気ない言葉で「その次」を意識させてくれ、そしてド素人の花野に試合経験を積ませることで当事者たちにも感じさせます。

 そしてかるた。生まれたのが平安時代、1000年前という実は信じられない奇跡を通して、今この一瞬もかるたのように永遠にできるのだ!という強いメッセージに感じます。それを強調するようなかるた紹介でのアニメパートもよかったですね。

 そしてメタ的な意味。今を時めく若手俳優たちが一堂に会して、各々が最大級の演技を見せてくれたこの作品。まさにこの映画の撮影自体が彼らにとって青春そのものだったのではないでしょうか。彼らの輝きに一瞬、そして永遠を感じます。また、ある意味で、この作品自体がかるた的に1000年経っても愛されるものになるぞ!という演者あるいは制作陣の確信を感じますし、それに耐える作品になったと思います。

3.最後に。

 まあ減点がないわけじゃないんですよ。

 学年1位を維持して東大理Ⅲを受けようとしている太一が塾の自習室で書いてる数式が明らかに二次式。方程式ですらなかった。そのディティールは拘ってほしかった。

 それから試合に復帰したシーン。太一の登録を残しておく的な描写をこっそり入れておいてほしかった。と、同時に太一の得意が守りがるただったというのも唐突。周防名人との特訓シーンで少しでもそれを暗示するか、一瞬でいいので周防名人のゾーンに太一が入るかどっちかの方がよかった気がします。

 

 といった戯言はもうどうでもいいんですよ。スローモーションの秀逸さや無音や音楽、試合音の切り替えが抜群な音響の話もしてもいいんですが、あんまり語りすぎれば野暮。まだやってるんだから今すぐ劇場に行ってください。控えめに言って神。今年ベスト級。邦画トップクラス。青春映画の金字塔。誉め言葉しか思いつきません!!