どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。
今回は東京国際映画祭のコンペにも選ばれた片山慎三最新作。原作はつげ義春とのこと。
WATCHA3.5点
Filmarks3.4点
(以下ネタバレ有)
なんだかまだ企業の紹介なのか、本編なのかわからないようなレベルのモンタージュ映像から始まり、大雨の中、金属のものを外していって結局泥の中で男は女にバックで挿入する。もろ、タイトル通りの雨の中の慾情を見せて始まる物語はつかみどころが実にない前半を送る。
前半は正直退屈だ。日活ロマンポルノよろしく、濡れ場をちょっとずつ挟んでおけばいいんだろう感を感じつつ、いわゆるアングラ演劇、みたいな言葉しか知らないけどこんな感じだったんでしょ?なイメージの具現化が行われている感じで全然話の目指すべきゴールが見えてこない。子どものつむじから髄液を抽出して全能薬にする??いったい話はどこで、どんな世界だというのか。リアリティラインが良く分からない中、どうやら南部の存在が明らかになり、例えば満州とか、そういう占領期の文化圏ぽくみえるし、そうえいば冒頭で部屋を掃除していた娘もカタコトだった。
っていう訳で、もうリアリティラインが爆散霧消する海からやってきた外国人、南にある馬鹿みたいに真っ白な城に住む真っ白な森田剛。その帰り道に、キスしながらの運転で事故に遭い、夢は醒める。ここは戦場。おそらくは南方戦線か対中戦線。夢に出てきた森田剛は同僚の兵士だし、家主だった竹中直人は病院の先生。自分は竹中直人が使っていた杖を用いないと歩けない左手と足の負傷を抱える負傷兵。そう、夢落ちだったのだ。夢落ちを明らかにした後も、夢のシークエンスと現実のシークエンスを交差させながら、なんなら現実では死ぬまでのほんの少しの時間を夢の中ではもっと短い時間で、という感じはダンケルクに近い作りかもしれない。
主人公は戦争によって左手と右足を失うのだが、まあ間違いなく想起するのは水木しげる。見終わってから調べるまでは全く知らなかった、というかつげ義春がどういうタイプの漫画家であるのかすら知らなかった。のだが、つげ先生は水木しげるの下でアシスタントをしていた時期があり、まあほぼ間違いなく彼のキャラクターには水木しげるが影響を与えているだろう。その上で、描かれる戦争描写は基本的に日本軍が苛烈に攻撃しているものがメインで、日本軍が命を奪っているという描写をしっかりしたり、ってなるとつむじ風って731部隊的な話なのかも?と色々と考える。戦場描写は塚本晋也の『野火』っぽさがありましたね。まあでも、こうした加害描写をきちんと描いていくことは、ちょっと『ゲゲゲの謎』における水木の存在と拡張っていうものに近い感じは受け止めました。戦争映画としては似ていると思う。
一方で、作品としては確かに激しい濡れ場が多く、それがモザイクで目立ってしまうのも事実で、福子という女性への愛と、漫画に情熱を向けた死ぬまでの一瞬の話である、と捉えることができ、その決心に至るような夢の世界での幸せに見える瞬間や不思議な出来事は、それぞれ夢遊性を増す為に扉を開けたらもう別世界、みたいな転換の仕方が印象的だった(一部、壁のこっちとこっちでちがう、みたいなのもあった)。また、つむじ風精製工場が警察の検挙を受けそうになり、福子を探して走り回る主人公はこれまでの舞台を夢も現も関係なく走り回わって彼女を求めた。こうした一連の演出は、序盤以降感じさせた「アングラ演劇」の匂いをさせる技法だっただろう。
そう思うと、技法的には面白いな、っていうところはあるんだが、爆裂面白いか?と問われると、流石に種蒔きの前半が停滞しすぎだし、夢だと分かってからもちょっとしつこいようにも感じた。どっちにしても、つげ義春をまるで知らないとか予告編を見なかったとか、非はこちらにある気がする。