抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

無実と生存、どちらがお望み?「望み」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はゆりこのW堤(出典元:タイガーのW猪木。これが分かんない人は36時間テレビの裏側を見てきてください)となる「望み」です。どうでもいいですが、中心になる人物の部屋のポスターが浦和レッズだらけだったのですが、私の心中は穏やかでした。前日に勝ってるからね!!!17年ぶりに埼スタで勝ったからね!!!02年以来のシーズンダブルだもんね!!!

f:id:tea_rwB:20201002000754j:image

WATCHA4.0点

Filmarks3.8

(以下ネタバレ有)

 1.望みのぶつかり合い

 本作を一言で言うなれば、こんな年末年始は嫌だ!のトップクラス。

 順風満帆に見えた一家の長男が怪我でサッカーを挫折したのをきっかけになんか暗雲が立ち込め始め、ついに身近で起きた殺人事件、時を同じくして長男も姿を消す…というもの。

 報道ベースで、発見された被害者1名、逃走中の少年が2名、そして行方不明が1名とアナウンス。果たして自分の息子は加害者として生きているのか、あるいは被害者として死んでいるのか。実際どうなのか、というよりも夫と妻がそれぞれ、息子にどっちであってほしいか、と考えているかの衝突がメインで描かれていくことになります。

 石田ゆり子さんの演じる妻が息子の生存を願い、加害者家族として生きていく決意すら固めてしまう方向、堤真一さん演じる建築士の夫がたとえ死んでいても無実を信じる、という二項対立で進んでいきます。まあ正直言って、報道ベースの逃走2名を鵜呑みにしすぎて、主犯と共犯の2人が仲間割れして生存1人エンドとか、そもそも無実生存エンドとかを端から考慮しない、っていう若干強引な二項対立ではあるんですが、特に妻の方の孤独になって思い詰めていく感じがある種リアルであり、まあそこの対立になるのも納得かな、というバランス。絶妙なタイミングで考えを補強しに来てくれる義母とか、娘との対話で無実のほうに考えの舵を切ってからナイフをめぐる顛末で揺れる夫っていうのもまあ分かる。この辺は、シンプルに果たして生きているのか、あるいは…だけで一時間近く引っ張ってるのにダレることなく進められる脚本の力がかなり大きいのではないでしょうか。

 地味に効いてるのは、建築士である堤真一が顧客の依頼を聞いてる開幕のシークエンス。ここでは顧客の夫は建築士に任せるのがいい、と言いますが、妻はいろいろ注文をつけている。ただの主人公一家の紹介パートに見えて、夫婦は意外と根本的な価値観が違っているぞ、という前振りにもなっている。もっと言うと、主人公の家も注文住宅であり、ある種理想を詰め込むもの。もしかして、子どもに理想を詰め込んでませんか?みたいな問いかけまで感じる。

 あと、冒頭はホームビデオのようなサッカーの試合のシーンで、そのあとは家族写真の連続。どこかで見た覚えがあるな、とは思いましたが、そうか、葬式の時の待合で流すやつか、と後から納得できる、実は結論を先に明示していたパターンでもあるのでこの演出は好きです。

2.あざとさはあるが…

 まあ正直言って、満点じゃないですよ。がっくり来るところは要所要所ありました。一番酷いのは中盤で堤真一が回想するかつての長男の子役演技。さすがに演出ができてなさ過ぎてがっくりきますよ。

 まああとはスローモーションの多用、これでもかと泣かせたいだろうタイミングにかかるそんな雰囲気しかない音楽と、まあある意味わかりやすさ重視の堤幸彦感が凄いですよね。エピローグも過剰で、果たして生存だったのかは警察の入り口じゃなくて、安置所の扉から入っただけで説明できると思うし、ましてや病院のとこまで言うのはね。まあ「十二人の死にたい子どもたち」みたいな惨劇よりはいいですけどね。

 あと気になるのは、まあマスコミ描写ですよね。確かに、この世の中には嘘だろ、というぐらい安直でバカな行動をする人たちもいるし、一定以上のマスコミが集まったり、劇中描かれるような所業はあるとは思います。思いますが、流石に安易に同じ轍を踏みすぎというか。マスコミを悪くしたり、SNSでの晒し文化をこれまた極めて陳腐なやり方で見せてみたりと、うーんそこの描写はちっともフレッシュじゃない。マスゴミっていう感想を期待してるようにしか見えない。っていうか、一番悪質な登場した松田翔太の週刊誌記者には救いのある結末を用意するあたりむしろヌルいな、と。別に全員幸せになる物語である必要は本作は無かったように感じます。