抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

「ネクスト・ゴール・ウィンズ」公開記念!サッカーを見てくれないならサッカードキュメンタリーを見てくれてもいいじゃない特集

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 Jリーグも開幕しました。サッカーの季節です。サッカーは幾つもの国籍の選手が一つのチームに集まり、多様な背景を持つ選手がプレーする。言語とて1つとは限らない。だが、ボールを蹴るという共通言語のもと互いをリスペクトできる。そしてそれはピッチの上を超える。そしてそのタイミングで、タイカ・ワイティティ監督最新作『ネクスト・ゴール・ウィンズ』が公開されました。これはもとになったドキュメンタリー映画があって、『ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』というもの。

 ワールドカップに合わせてサッカー企画したりしてるんだし、今回もサッカー関係のエンタメ紹介をやろう、だったら今回はもとの映画がドキュメンタリーだし、ドキュメンタリーシリーズを紹介しようじゃないか!という勝手に応援企画になります。

 鑑賞したものの記録って皆さん色んな映画アプリとかで記録してると思うんですが、ドキュメンタリーシリーズってそういうのに登録されてないんでいい感想置き場にもなります。ここで紹介できていないものもいっぱいあるので、定期的に見たら追加していくことにしたいと思います。

ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦(字幕版)

 

レクサムへようこそ(Disney+)

 世界で3番目に古いクラブであり、ウェールズ最古のスタジアムを持つレクサム。かつての強豪もセミプロのイングランド5部、世界一抜け出すのが難しいと言われるリーグに所属して10年を超える。

 このレクサムというクラブをみんな大好きライアン・レイノルズとロブ・マケルヘニーという2人が買収、上昇を目指していくぞ、という様子に密着したドキュメンタリになります。

 サッカーを知らない人にも非常にお勧めできる作品になっており、ライアンもロブも当然サッカーは素人、そんな彼らがフィーリングで選んだというレクサムをどう競技的にも、商業的にも、あるいは地域的にも大きなクラブにしていくのかを一緒に見ていく過程は、サカつく的な面白さに溢れています。登場人物のメインであるライアン・レイノルズは映画好きならある程度知っているだろう、ということもあって知らん世界の知らん話になりきらず、サッカー素人、ウェールズ素人の彼らが学んでいくことで視聴者も一緒にルールを学び、サッカー観戦の興奮を味わい、困難に直面することができるでしょう。

 レクサムの地元住民、およびクラブの職員やボランティアたちの物語をしっかり描いているのもこの地域やチームへの愛着を沸かせる要因です。特に、ふらっと街のビデオショップを訪れたライアン・レイノルズが「この店で最も借りられていないのは?」と尋ねて咄嗟に「グリーン・ランタン」だな、と返せるイギリス仕草ですよ!一事が万事そんな連中で、ちょっと負けが込みだすと監督をクビにしろ、勝ちだすと人生は明るい!みたいに感情を左右されまくっているサポーターたちが愛らしいことこの上ありません。こういう週末の感情メーターだと、サッカーファンのことは理解してくださいな。

 そしてDisney+にてシーズン2が配信スタートしています。

サンダーランドこそ我が人生(Netflix)

 かなり下部のリーグからサカつく的になりあがっていくところに立ち会えるようこそレクサムへと非常に対照的なドキュメンタリー。第2次世界大戦前に幾度もの優勝を経験しているイングランドの名門サンダーランドは遂に華のプレミアリーグから降格。2部での戦いに久々に臨むことになる、というのが始まり。

 本来であれば、プレミアリーグに復帰するまでのクラブの栄光の過程を密着していくようなドキュメンタリーになっていくはずだった、企画段階では絶対にそうだったはずだ。だが、スポーツとは、サッカーとは無情である。前年までイングランド最高峰リーグにいたチームは態勢を整え直すことができないままずるずると2部リーグでも負け続けて、ついにそのまま3部に連続で降格してしまう。

 3部からの這い上がりを目指す名門を追うことになるシーズン2も上手くいかないことだらけで、上手くいかない組織というのはこういうものである、という地獄を延々と見せられる。誰もが全力で、誰もが勝つために頑張っているのに、どうしてもうまくいかない。でもそれこそが「人生」なんだ。上手くいこうがいくまいが、サンダーランドのサポーターたちにとってその週末は人生と一体化している。レクサムでも、サンダーランドでも関係ない。クラブの規模やサイズに関係なく、そこに住む人々にとってどれだけ重要な存在であるのか、イングランドにおいていかにフットボールがカルチャーとして根付いているのか、を周縁からも見事に捉えたドキュメンタリーとなっている。

 この2月にめでたくシーズン3が公開されています。

オール・オア・ナッシング~マンチェスター・シティの進化~(Amazon Prime Video)

 オール・オア・ナッシングはAmazon Prime Videoで配信されているドキュメンタリーシリーズで、1年に1チームを選んでしっかり密着した様子を流すものだ。これまでにサッカーだけでマンチェスター・シティアーセナルトッテナム・ホットスパーユヴェントス、ブラジル代表が取り上げられている。サッカー以外にも、というかそっちが本筋かな、アメフトやアイスホッケーのチームなんかも密着されているので単にスポーツに関心があれば楽しく見れるシリーズだろう。その中でも今回はマンチェスター・シティを扱ったものを紹介しよう。

大きな期待

 世界最強のチームはどこか。それはとても難しい。マドリー?バイエルンパリ・サンジェルマン?だが、世界最高の監督は誰だ、と問われればペップ・グアルディオラ以外の名前を挙げる方が難しい。そして彼が最強に現在最も近い地位にまで連れて行ったチームがマンチェスター・シティであり、彼の旅の序盤17-18シーズンに密着したのがこのドキュメンタリーシリーズだ。

 この当時はまだ強いけど最強かはわからない、みたいなラインだったが既にその萌芽は見られる。現在の中心選手であるエデルソンやデ・ブライネも登場しているが、既に引退した選手も多く、更にはここから逮捕され裁判で無罪が最近確定した選手もいたりと、5年も経てば色々ある。いかにして彼らがモチベーションを保ちながら最強をめがけて戦っているのか、流石に戦術面や練習面の細かいところは教えてくれず、試合前・後の演説を通してペップのモチベーターの側面が強く印象付けられる。

 そして何よりのストーリーはここでアシスタントコーチとして登場しているミケル・アルテタがこののちシティに立ちふさがり、そしてオール・オア・ナッシングでも密着されることになることだろうか。

チルダズ:女子サッカーワールドカップへの道(Disney+)

 

 愛称を"マチルダズ"と呼ばれるオーストラリア女子代表を扱ったドキュメンタリー。コロナ禍を経ての東京オリンピック以降を扱いながら、今年オーストラリア・ニュージーランド共催だった女子W杯に向けて戦う道のりを描く。女子サッカーにしかない出産などのライフイベントに伴う競技とのバランス、男子と比較して舐められがちな側面について、そして国を背負うという話。ドキュメンタリーとして上手とは言えないが、彼女たちを応援したくなる作りになっている。

 とはいえ、子のドキュメンタリーだけ見るとオーストラリア代表がめちゃくちゃ強くて、W杯優勝しないと失敗ぐらいの温度感に見えるかもしれないけど、今の日本ぐらいの強さです。結果的に日本はベスト8、オーストラリアはベスト4でした。日本も惜しかったですが、失敗できない地元開催でベスト4はかなり頑張った印象です。

 また、Netflixでは、「プレッシャーと共に:サッカー女子W杯アメリカ代表を追う」というタイトルで同じ女子W杯におけるアメリカ代表チームを追いかけたものがあります。

ディス・イズ・フットボール(Amazon Prime Video)

チャンス

 世界中でフットボールがどのような受容されているのかを描いたドキュメンタリーシリーズ。一番広くサッカーを捉えているかもしれない。

 第1話はアフリカ、ルワンダの虐殺から生き延びた人たちがリヴァプールを応援することでサッカーがもたらします救済を描く。

 第2話は女子サッカーの歩みを絶対王者アメリカ代表と震災を絡めての日本代表で綴った。改めてあの時を思い出すと共に、日本に丸山桂里奈がいなかった世界を思うととてつもない人物だと思う。サッカーの歴史に残るのは宮間あやだし、澤穂希なんだけど、このドキュメンタリーの文脈だと丸山桂里奈だ。彼女は2010年に移籍するまでは東電の所属なのだ。

 第3話バイエルンミュンヘンがどうして世界的なビッグクラブになったのかをオリバー・カーンなどのレジェンドのコメントを含めてとき解き、その上でそのバイエルンに新人監督で勝ったチェルシーがビッグクラブになった瞬間を切り取る。

 第4話の舞台はアイスランド。世界でも小国の彼らがユーロやW杯で奇跡の躍進を遂げたその模様を振り返る。

 第5話。フットボールがいかに人々に寄り添って生きているのか、その現地調査。中国では屋上を改装してミニコートにする人がいたり、南アフリカで最年少で主審を担当する人、ブラインドサッカー。多様なサッカーへの関わり方を提示してくれる。

 第6話は驚異。とにかくリオネルメッシすげー物語.

FIFAを暴く(Netflix)

 

 サッカーがいいものであるかのような、フットボールの夢と可能性を描くだけがドキュメンタリーシリーズではない。ミニシリーズ『FIFAを暴く』では、FIFAの会長として独裁に近い地位を得たゼップ・ブラッターと彼の周りの理事たちによってなされた大規模な汚職事件について扱っている。オリンピックもそうであるが、極端に肥大化したスポーツイベントっていうのは、当然金が絡んできな臭くなっていく。また、ギャンブルやイタリアンマフィアが絡んだカルチョ・スキャンダルなんかを記憶している方もいらっしゃるだろう。

 そして、FIFAにおいては完全にこれが協会内政治とリンクしてしまい、最悪の展開を迎えたのだ。南アフリカW杯、ロシアW杯、カタールW杯あたりの招聘がどれだけグレーで、でもそれはどう黙認されてきたのか。悲しいかな、でもサウジが34年開催に唯一立候補してるんだよなぁ…。アジア連盟の感じだとサウジアラビアもおそらく、と言わざるを得ない。