抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

英雄「ナポレオン」感想

どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

今回はスコセッシに続くApple TV+案件。映画館でやってるうちに見ないと!だったのですが、公開直前にスマホが逝ったので機種変、iPhoneなので Apple TV+が3ヶ月無料でついてきてしまいました。テッドラッソ見ようっと

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WATCHA3.5点

Filmarks3..5点

(以下ネタバレ有)

1.どんなナポレオンを描きたかったのか

 ナポレオン・ボナパルトナポレオン1世。世界史に名を残す稀代の軍人・革命家・将軍。そんな彼は様々な著作に描かれてきた中で、リドリー・スコット御大が今回は映画化。映画とナポレオン、となると作られずに終わったキューブリックのナポレオンなんかが有名だろうか。世界史よりも日本史を好んでいた私にとっては、首を回すマジシャン…はさておいても、アガサ・クリスティABC殺人事件』で犯人が自らの名前にボナパルトがついていること、あとはトルストイの名著『戦争と平和』で描かれた帝政ロシアとフランスの戦争、といったところが印象的だろうか。アウステルリッツ、エルバ、ワーテルロー。要所要所になる地名はビシッとインプットされている。中学生の私、よくトルストイとか読んでたな。今からは読めないぞ(ドストエフスキーから目を背けながら)

 で、今回ホアキン・フェニックスを擁して描こうとしたナポレオンは一体どういう存在だったのか。正直に言ってつかみどころがなかったというのが個人的な感覚だ。稀代の天才としての魅力はトゥーロンでの砦の奪取やアウステルリッツの見事な計略でしっかりと描いているのだが、おそらくは重要視した視点は妻ジョゼフィーヌからの視点であり、完全にかぐや様は告らせたい的な惚れた方が負け理論でジョゼフィーヌがナポレオンをコントロールしようとしている感じが出てきたり。どんなに世界や欧州を征服し、オーストリアが誇るハプスブルク家帝政ロシア、そして勿論大英帝国さんと、政治的に喧嘩する相手が兄弟であろうともジョゼフィーヌの歓心を買わなくてはいられなかったし、そしておそらくそれは間違いなかった、という描き方。ジョゼフィーヌと国の未来(という名のナポレオン一族としての君主制の維持)を天秤にかけてジョゼフィーヌを切った結果ナポレオンは地獄の冬将軍遠征に突き進み、エルバに追放され、そして彼女の死と合わせて彼の再起も失敗する。ジョゼフィーヌ無くしてナポレオンは成り立たなかった、ということなのだろう。ただ、そこをメインに描くんだったら、革命家のナポレオンという存在が市民革命と絶対王政という時代を先駆けた形の異端児であったこと、そこを潰そうとするためのウィーン会議だったことっていうのをもうちょっとちゃんと描ければナポレオンが革命側から王政側になってしまった、世界を変えようとしたんだけど旧世界のやり方を踏襲してしまった、日本で言う平清盛みたいな存在だったというところで描けた方が良かったのでは、って思ってしまった。

 とはいえ、すごいっすねっていうのは合戦描写。アウステルリッツの合戦の戦略からの湖面に大砲連打からのバンバン沈めていくところはこれでもかと水中からのカメラも含めて使ってきます。追撃されるロシア・オーストリア軍たちの混乱さながらのカメラワークも巣橋かったですし。こうしたいくつもの会戦シーンに加え、いわゆる宮廷的なシーン、民衆にとこの時期のヨーロッパをちゃんと再現しながらやるのはエキストラ馬、衣装のことを考えただけで気が遠くなるようなものですが、そこのクオリティコントロールがしっかり出来ていて最後まで騙してくれる。っていうかアウステルリッツは雪で凍った湖自体を作ったらしい。平原に穴を掘ってってうーんうそでしょってなりますな。This is スペクタクル。この規模の戦争描写をスクリーンで見るのは中々ないかもしれません。