抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

駆け出す「特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は京アニ最新作。継続的に作品を作り続けることが出来ている京都アニメーション。故にもうその悲劇からの復活という文脈は語らないことにします。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

(以下ネタバレ有)

 

1.巧みな演出健在

 京アニ作品には常に、そしてユーフォでは特に良いのが特徴的ではありますが今回も演出は非常に良かったですね。

 やはり1番印象的なのは窓と呼吸。鎧塚先輩は窓を少ししか開けられない、久美子は大きく開けられる。それが久美子の長所。全体の風通しを良くできる。同時に他者に対して寄り添うよりも覗き見る感じのみぞれ先輩の描写としても満点を叩き出している。常に正解を叩き出し追い詰め続ける求道者麗奈とはまた違う。まだ高校生、しかも2年生。でも部内では部長でリーダー。大人的振る舞いと子ども的振る舞いがブレる難しい年頃。それでも久美子は他者に寄り添い、他者を見て気付きを得ることができる。本人は無自覚だけど、だから滝先生は部長に彼女を選んだ。主人公だから部長になった、みたいなロジックは全く感じない。だからこそ、副部長秀一にも納得感が生まれる。

 そして鎧塚先輩から見たら久美子は泣いてると思った。ユーフォで泣くのは大事な時。それは次のコンクールにとってある。

 呼吸が合わないもなかメンバーつばめさん。そもそも呼吸を知らなかったけど、それができるようになったことを示すマリンバの運搬シーン。呼吸を合わせてマリンバを運ぶことの象徴性、そして「私もコンクールに出たいと思っていいのかな」。久美子がつばめの窓を開けたのだ。ユーフォシリーズ最新作としては、演奏シーン、特にアンサンブルコンテストの予選となる校内演奏会が2期さながらに全カットされることへの不満はあるが、ここは溜めと割り切っていいのかもしれない。本編の番外編、という扱いだろうか、「かけだすモナカ」というコンクールのメンバーから漏れた、葉月を中心とした面々の物語の精神的続編としては完璧であり、モナカメンバーのゴールとしても、久美子たちのゴールとしても次の全国大会で金を取れるかどうかこそが重要。だから今回はそのセットアップで構わないと思える。

 そもそもユーフォというシリーズが久美子たち北宇治カルテット4人をメインに描いてきたせいで彼女たちの年代の他の戦力が手薄だったこともある。香織先輩もあすか先輩もデカリボン先輩も、途中から影が濃くなったとはいえ、希美先輩に鎧塚先輩もいない。それでも全国金は絵空事でないことを示すための中編でもある。無論、3年生組を出してくれるのは嬉しかった。それでも、せっかくメンバーになった秀一、もっと死滅してキャスト名すら出てない1年生メンバー(名前も担当楽器も忘れてしまった麗奈に声をかけてきた子)ももっと描写して欲しかった。そこは否めない。でも、この辺のアンバランスな感じとかは、次の曲が始まるのを待っても良いのでは無いか。少なくともそう思える作品に仕上がったのではなかろうか。