抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

眉間に皺しわしわ「逆転のトライアングル」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はアカデミー賞ノミネーションで大躍進したカンヌのパルム・ドール作品。リューベン・オストルンドはカンヌ連続受賞。でもでもでもでも。『パラサイト/半地下の家族』→『TITANE/チタン』→『逆転のトライアングル』ってカンヌちゃんなんか過激にすれば優勝できるようになってない??大丈夫?

 とりあえず音楽がうるせえ映画でした(-1000点)

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WATCHA3.0点

Filmarks2.9点

(以下ネタバレ有)

1.しつこい&ずるい

 先に言いましょう、この映画はずりい。はっきり言って気に入らない。まず単純に、この映画に嫌い!と言っても好き!と言ってもリューベン・オストルンド的にはへー、ってニヤニヤされながら裏で断罪されるタイプなのが気に入らない。この人は人間だれしもが持ちかねない、いやーな意地悪で居心地の悪いところを指摘してくるから面白い監督だったと理解してるんですが、今回は基本的に浅い、ウエストランドの漫才の10倍くらい浅いところでインフルエンサーだの金持ちを弄って喜んでる。

 第1章で女ってやつは、と変にいじくっておいて第2章ではゲロとフンで金持ち自業自得的な地獄絵図クルーズ、第3章で無人島に漂着して自活力があった清掃員に逆転されちゃうっていう話に見せかけて、そういう奴は最後には暴君になってくよね、金持ちの方がええわっていう方に見える。少なくとも、試写会場で笑いが漏れている段階で映画を見れる、という日本の富裕層には人ごとにしか映ってない。カンヌも喜んでパルムドールあげるでしょうな。マイノリティの側から平等平等言われてイライラしていたマジョリティ側の溜飲を下げる為だけの映画です。特にフェミニストを笑う感じは全く好きでない。

 ただ、その最後のシーンでの排泄に見せかけて殺そうとするシークエンスは結構好きな撮り方で、こっち見ないまま「あなたを雇おうと思うの」はいいセリフだと思うんです。思うんですけど、リセットした社会で漂流教室だの蠅の王だのみたく、社会を作り直して、それがリセットされるかもしれないタイミングで飛び出るのが作り直す前の社会での規範の時点で興ざめはするんですよ。

 大体ね、社会を作り直したんだったらちゃんと無人島に生き残るメンバーに意味を持たせるべきで、武器会社夫婦が自社製品で死ぬのはまだオストルンドっぽい。アジア人が権力握って若い男を抱き始めるのもまだオストルンドを感じる。でも、こんだけ振っておいてクルーの業務上のトップであり、旧体制をすっごい内面化しているポーラであったり、脳卒中の後遺症で対話しづらいドイツ人とかが無人島に映ってから一気に背景化していて、それは社会になっていない。無論、豪華客船の中も非常に階層が限定的なメンバーなので社会そのもの戯画化にはなっておらず、島を社会全体に拡大して想像することが出来た『イニシェリン島の精霊』と比較すると何段も劣る社会風刺ごっこだと言わざるを得ない。

 バレンシアガ!H&M!がつまんなかった時点でこの映画に対する態度は決まっていたのだな、と振り返ると思います。共産主義と資本主義の引用合戦とかしつこいうえに上っ面で聞いてられない。