抹茶飲んでからマラカス鳴らす

見た映画、読んだ本、見たアニメ。そんな話を中心に。。。

小事を大事に「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 さあ、相も変わらずファーストデイの分を粛々と。

 今回取り上げる「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」はTBSラジオ「アフター6ジャンクション」でカルチャートークとムービーウォッチメンで取り上げられていて、評判も非常に良かったので見てきました。と言っても、ムービーウォッチメンの前には2回挑戦したんですが、完売と体調不良で断念という状態だったので上映終了に間に合って良かったです。

 ところで、同じような状態の映画で「ヘレディタリー/継承」っていう案件があるんですが、ホラーダメな私は見に行くべきなのでしょうか…

バッド・ジーニアス 危険な天才たち(字幕版)


WATCHA4.5点

Filmarks4.5点

(以下ネタバレ有り)

 1.小事を大事にする日常サスペンス

 今作のテーマはカンニング。公式な試験であればともかく、小テストレベルなら誰もが未遂までならやったことがあるような極めて身近にして、ミニマムな題材です。この映画の凄いところは、撮影や演出、音楽を駆使してそのミニマムな題材をミッション・イン・ポッシブルのような国家機密に関わる大ごとかのように見せることに成功しているところ。考えて見れば、学生にとってカンニングがバレるかどうか自体は結構な重要事項だし、さらに映画上で成績を上げなくてはならない事情が描かれる為にカンニングの必要性もしっかり提示されています。

 最初のカンニングは、本当に小さなもの。転校して折角できた友人グレースに教えたところなのに、彼女がその問題を分からない。主人公リンが消しゴムに答えを書いてグレースに渡すだけなんですが、ここで消しゴムを靴に入れて靴をトレードするという方法をとる事でサスペンスが生まれました。靴を後ろに蹴る。取り替えて前に蹴る。靴から消しゴムを取り出す。この3ステップをそれぞれスローモーションや音楽でハラハラ見せられるのでバレる?バレない?でもうサスペンス。カンニングなんて、と普通なら思うんですが、試験中に後ろ向いて喋ったりするぐらいの感じがあるので、ゆるーい空気感なのかな?じゃあカンニングしても大した問題じゃないかな?感を見事に醸成しています。

 次のカンニングは最初のカンニングをグレースが彼氏のパットに話してしまって集団カンニングを行うことに。さっきとは違って断れば、と思うんですが、ここで転校にあたっての面接でお金を気にしていたことが利いてきて、莫大な儲けになると咄嗟に計算できてしまって引き受けちゃうわけです。総額の計算がすぐにできないパット&グレースと暗算で秒殺のリン、なんてのも彼らの能力差をうまく表していたと思います。

 カンニングの方法はピアノのクラシックの指使いを用いたもの。指使いに合わせて流れる原曲がただのカンニングに彩りを添えます。万全に見えた今回のカンニングの難点は、学校側の対策。なんとランダムに2パターンを配布しており、リンだけではカンニングの遂行が不可能になってしまう。なんやかんやでもう一方の問題を手に入れてからは、時間内に解き終わりカンニング仲間、もとい顧客に時間内に伝えることができるのか、という時間との勝負という違ったサスペンスになるので飽きることはありません。しかも、ちょこちょこ伏線張ってたメモが記名式というところでリンのカンニングがバレてしまうあたりは、流石にバレるだろ、というこっちの懸念も解消し、彼らがあくまで学生だったということも思い出させてくれます。

2.小事が大事に転がってしまったドラマ

 これでカンニングがバレてしまったリンはカンニングから手を引くわけですが、ここから再度それに挑戦することになるのがSTICという世界的な試験。いつの間にやら話はとんでもないところにまで行ってしまったわけです。時差を利用することを思いついちゃったから仕方ないね。死ぬ気で覚えて、トイレに仕込んだ携帯電話で休憩時間に正答を送る。タイで受信してそれを鉛筆のバーコードに刷るという一見完璧に見える手法。しっかり事前に練習しているし、この過程でリンと留学試験を争っていたバンクも加入。盤石に思えたところでどんでん返しを一発かましてくれるわけです。バンクは留学試験前日にボコされて受験を断念したいたのですが、それがパットの仕業だということ、それから冒頭から見せられていたそれぞれのメンバーの取り調べのようなシーンは捕まった時の練習だったこと、と2つのサプライズが我々を襲います。

 そして迎えた当日。よく考えたら、その個室使われてたらどうすんの、とかトイレ長すぎてバレない?とか、時間が微妙にズレたらどうすんの、などリスクマネジメントが全くできていない所詮は学生のレベルの計画であることが露呈し、その危惧が大概実現するのでそれでまたサスペンスに。最後は、会場を後にしたリンが試験官から逃げながら割れてしまったスマホで回答を送るのが間に合うのかもサスペンスに。試験官があまりにも必死で怖く見えますが、リン視点だと思えばあの程度の描写なら納得。

 結局小さな小さなカンニングに1回手を貸しただけで、大人数を巻き込んだ世界規模の試験でのカンニングに転がっていってしまう、自分の手ではもうどうにもできない事態になってしまう、という映画では王道の展開になってくれたと思います。

3.それぞれの結末

 この映画においての主人公リンは結局父親との関係から、すべてを告白し、更に海外大学も諦めて国内で教員を目指すことになるわけです。どうなったのかは明示されませんが、ここでカンニングの仕組みを洗いざらい喋ったことでグレースたちの合格も取り消されるでしょうし、その点の報いを受けてほしいひとにも報いがいくのも良い。だが問題はバンクです。

 バンクは最終的に特待生としての自分の成績だけでなく、学校も辞め、バレても逮捕されないんだからもっと大規模に儲かるカンニングをしよう、などと言い出す始末。真っ白だった彼をここまでにしてしまった無責任なパットやグレースたちの富裕層の連中の罪の大きさを感じさせます。すべての原因はグレースがリンと仲良くなったことにあるわけですが、転校したての学校で写真撮影時によりよく映るように、とパーソナルスペースにまでぐいぐい入ってくるタイプの子とは仲良くならざるを得ないでしょう。後に、リンがバンクに対して全く同じことをしていたのが非常に印象的でした。

 そして、映画の結末として語るべきはスタッフロールで流れる校歌!わが校は知識に重きを置いて名声はタイに響き渡る、心を一つに固い絆で結ばれてる…そんなことを言ってるわけです。結果としてあながち間違ったことを言ってねぇっていうこと、そして中盤でリンに維持費という名の賄賂を受け取っていることを指摘されてまともに返答できていなかったことを考えると最高に皮肉な歌詞だったことになります。現金はわかるけど、維持費でパソコン20台って意味わかんねぇもんね…

 

 タイ映画は初めてでしたけど、ナーメテーター案件でした。韓国映画も今年初めて見てびっくりしているのでこれからも国で食わず嫌いはしないで色んな映画を見ていきたいと思います。