抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

虚構が殺しに来る「キャラクター」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 もはや日本の映像界を背負ってる俳優菅田将暉の最新主演作。フジテレビがついてる作品なのに結構キツめな残酷描写があったのでびっくりしました。

キャラクター (小学館文庫)

 

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有)

 

1.Fukase怪演

 まずこの作品を成立させた何よりのキーパーソンはFukaseさんであることを明言する必要があるでしょう。漫画の筋書き通りに四人家族を殺していく、ぶっ飛んだファンっぽさ、それでいてそれを作品と形容する芸術家肌、エキセントリックな言動が板についていて、ある種のパブリックイメージも上手く使った素晴らしい役回りだったと思います。だって別に恰好はほぼまんまだものね。自宅に帰ってちょっと暴れるようなシーンはいらないかな、とも思いましたが、そういうのも含めていわゆるシリアルキラー的なものをよくやっていたと思います。そして何より私は、SEKAI NO OWARIが世界の終わり名義の時から彼の歌を知っている古参だというアピールを忘れてはいけません。忘れはならないのです。いじめは正義だから、悪をこらしめてるんだぞ。

 

 最後の彼の問いかけがまた実に痛快。「僕は誰なんですか」。無個性なものしか書けなかった山城に一番インパクトを与えた、「キャラクター」が実は法的には無国籍、中身が無い存在だったというね。

2.共犯関係がおりなすサスペンス

 本作は予告の時点でシリアルキラーと漫画家の共犯に近い関係を明示しており、作品中でも最初の殺人事件の段階でそれは明言されます。それゆえに、中村獅童小栗旬の刑事コンビの、真相を分かっていないという視点と、真相が分かっているうえで追い詰められている山城視点の2方向でバレるバレないサスペンスが楽しめ、それらの視点が統合された時には小栗旬が刺殺され、マンガは最終回を迎えて迎撃戦になっていくので違うサスペンス(というよりスリラーかな?)が巻き起こる。捜査中の刑事を殺すのって、割と禁じ手に近いというか、簡単に盛り上がっちゃうのであんまりやらない方がいいと思っているんですが(そう言いながらかつて自作していた推理小説ではバンバンやっちゃった)、今回は犯人の空想性も若干高いゆえに許されたかな?とも思います。

3.創作とリアリティ

 小栗旬演じる刑事が刺されてしまうところでも当てはまるんですが、本作のキーワードは「リアリティ」でしょう。

 山城もいい人だから「リアリティ」のあるキャラクターが書けずに、サスペンスを志向する人間には致命的と言われるし(まあこの考え方自体も、もはやリアリティ無いですが)、辺見を逮捕するシーンでは、刑事ドラマだと追跡シーンが始まるけど、実際は…なんて小ネタが挟まる。漫画を描く周辺の道具や環境はそれこそリアリティを徹底しているようにも見える。でも両角が絡むと途端に彼は神出鬼没、なんで山城の行く先を知ってんのよ、という具合に現れ、あんなに厳重な警備だなんて前振りしてたのに、1個目の鍵開ける扉で刺しちゃって上までは描かない。急にリアリティラインが変わっている。でも、それを可能にしている。あれっすね、リアリティが無いって映画に文句を言うのはやめます。。。(多分やめれない)

 現実世界にほぼ虚構の存在である両角が侵食していって、最終的には漫画のダガーのポジションには山城がいる。一気に虚構と現実が逆転しようとする。