抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

漕いで焦がれて「ノーヴィス」「がんばっていきまっしょい」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はたまたま同時期に競技ボートレースに打ち込む若者についての作品が揃ってので合わせての感想でございます。

 

1.ノーヴィス

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WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

 がんばっていきまっしょい、なんて掛け声は皆無の非常に薄暗い作品。よく言えば真面目で熱心、悪く言えば粘着質で神経質という感じの主人公ダルが大学のボート部で死ぬ気の努力をしていく様子を追う。監督は『セッション』の音響という売り方だし、まああの要素が確かにある。

 ボート部の練習は確かに過酷だが、コーチも休め、漕ぐ練習を1万回してやっとだ、急ぎすぎるなと口を酸っぱくして言っているのにやり続け、分かりやすく肉体が損壊していく。なんでか知らんが閉鎖的に思える練習ゾーン含めて、矢印がどんどん内に内に篭っていく、ニューロティックスリラーのような側面もある。強迫観念に近い。負けたくない、は時に純粋なスポ根を生み出してくれる健全なライバル関係を生むが、それが純粋であるが故に狂気と紙一重であり、っていうかこの時代に熱心なスポ根をリアルにやる奴いたらサイコに見えるのだ。トレーニングに打ち込んで毎朝通いつめるのもそうだが、とにかくノートを取りまくってるのも怖く見える不思議。名前も覚えてくれて無かったコーチがちゃんと評価してサブメンバーに入れて、みたいな熱くなるはずのプロセスまであるのに、まだ足りない。まだ足りない。まだ足りない。そして暴発。

 『エスター』のスーパーヒロインでもあるイザベル・ファーマンが近すぎるぐらいのカメラと雨の中のボートだったりで全力で取り組んだことは好印象。

 ただ、その俳優の頑張りに応える編集や音楽では無かった。なんだか焦らせるような音楽をかけて切迫している雰囲気を出したり、なんというかいじめ方が一辺倒で100分見る上での強度は十分では無かったように思う。

 

2.がんばっていきまっしょい

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WATCHA3.0点

Filmarks2.9点

 ドラマや映画で実写経験のある作品を『明日世界が終わるとしても』の櫻木優平監督でアニメ化。この人は完全に3DCG畑の人で、構成も脚本も音響監督もしているのでまあ責任者。申し訳ないがこの2作でこれほどの権力を与えていい監督という印象は受けなかった。

 まずもって、ドラマシリーズになってた作品を100分切るアニメ映画にしよう、というのはかなりの無茶である。正直完全に構成をミスっていて、最初に提示されるテーマが悦ねえが何事も頑張ることを放棄してしまっている、ということの克服のはずなのだが、最初お祭り気分で参加してあっさり負ける時にもうその課題を克服してしまっているのでそこからの推進力が完全に無くなっている。もうここの初戦のお祭り気分での舐めと、そこでの他メンバー全体的な心の折れるのも若干イラっとはしたのですが、それは別のお話。

 スポ根的な提示をしておきながら、ほぼ日常ものに近い進め方でそれではちょっとしんどい。しっかり目標が大会に向けて存在してないので漫然と「頑張る」ことしか描かれない。そしてそれは『ノーヴィス』の後に見せられてもかけらも心が動かない。

 アニメ映画だからこそできるボート競技描写に期待したかったが、スピード感も2艇並ぶところまでまるで無いし、悦ねえの1人称視点で姫が掛け声をかけているところを見せたちょっとのシーンだけがいいイメージで終われた。日常の文脈で話を進める割にはやはり引きの日常シーンではまだ違和感の多いシーンも多く、『シドニアの騎士』のように言い訳のきく設定にしておくことの重要性をやはり感じてしまう。慣れかもしれないけど、もう慣れが来ないまま何年経ったよ?コストはかかるかもしれないけど、手書きでこの題材を見たかった、とか3DCGにしては、とか思わせてる時点で敗北である。シャニマスやミリマスでさえもうちっとなんとかなってたような。

 あと音楽よ。松竹さん広報頑張ったと思う。予告編いっぱい腐るほど見た。それ故に、秋元康アイドルの楽曲もたっくさん聞いてアンセムっぽくなってたのにそれがかかるのがクラスマッチってことはないだろう。最後の大会で盛り上げるタイミングでかけるべきだと思うし、というか最後の大会の盛り上がらなさはいったい何なんだよ。松竹さんだけじゃなくて、愛媛の放送局が垣根を越えて製作委員会に入っていたり、アニラジ松山東高校のボート部や放送部とやったり、その模様を愛媛FMで流したりと、愛媛の聖地化にも余念がなかった。中身だけが足りなかった。