抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

湧き上がる 泡沫の恋 夏のそら「サイダーのように言葉が湧き上がる」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回も東京国際映画祭で鑑賞した作品。来年6月に公開が発表された「サイダーのように言葉が湧き上がる」の感想になります。これ、俳句だったんですね。

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WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

(以下ネタバレ有)

 1.独特の色彩でテンションマックスな冒頭

 予告編の時点から分かっていたことですが、本作は色彩設計が非常に特殊。上映後のQ&Aでイシグロキョウヘイ監督は山下達郎のFor Youがイメージなんて話もしていましたが、淡く、カラフルで明るいカラーリングはわくわくしたし、最近やたらと綺麗すぎる背景も、きれいではあるものの、入道雲がニョキニョキと伸びたりすることなく、風景として存在していてとても良かったように感じます。

 さて、舞台になるのは小田市のショッピングモール。上空から見る限り、結構不思議なつくりになっていて、この建物自体をうまく使えるととっても楽しそう。この中にあるデイサービス施設で働くチェリーと、この周辺に住むライバー(ストリーマー?なんていうの、ああいう人)のスマイルのボーイミーツガール的な物語になります。

 ビーバーなる少年がこっそりアイドルかなんか(名前忘れた)の等身大サイン入りボードを盗んで、それを見つけた警備員たちとの大立ち回り。カメラもぐりぐり動くし、視点もガンガン変えながらショッピングモール中を動き回り、その過程でスマイルとチェリーが交錯、スマホを取り違えてしまったことで2人は距離を縮めていく訳です。夏が似合うボーイミーツガールの導入として余りにも完璧且つアニメ的な魅力に溢れたスタートで一気に期待が高まります。

2.なぜかしっくりこない

 ところが、その期待は徐々に失速してしまったというのが正直なところ。

 実はチェリーは次の月末で引っ越すことが決まっている中で、それを距離を縮めていくスマイルに言い出せないし、デイサービスで一緒にいる藤山さんが後生大事に探しているレコード探しを手伝うというクエストもどんどん進めていくことでデートにもなっている。引っ越しのことを言い出そうとするとなんか間が悪く入っちゃう、ってことになってるんですけど、もうホウレンソウがダメで距離が開くのって限界だと思うんですよ。だって、そもそも出会いがスマホ取り違えだし、いくらでもスマホで連絡できるじゃないですか。行けもしない花火の約束した謝罪もスマホでしなさいよ、昭和かよ。

 悪くはないんですよ、決して。順々に踏んでいってると思うんですが、どうも燃え上がらない。滾ってこないんですよ。よく考えたら湿度があんまりない作品なので滾りとか求めるのがお門違いかもしれませんが。

 多分なんですけど、ちょっと盛りすぎたのかな、と思います。キャラとしてビーバー、タフボーイ、ジャパン、名前忘れちゃったけどモールの偉い人、スマイルのお姉ちゃんと妹、藤山さんにその娘(タフボーイの母)、デイサービスの同僚2人もそこそこ強めのキャラ。これだけの人物を出しておきながら、ジャパンはレコードをかけるだけの人、タフボーイはレコード一緒に探してくれる人、モールの偉い人はモールがレコードのプレス加工工場の跡地だと教えてくれるだけの人、職場の人はレコードが時計だと気づく人、と単純に1人にちょっとの役割しか与えられてないのでもっと集約できたのでは?と思ってしまう。

 また、スマイルは出っ歯&その矯正のコンプレックスでマスクを外せず、チェリーはヘッドホンをつけることで外界と遮断されることを望み、言葉にして声に出すことを好まない。ここが乗り越えるべき壁な訳ですが、そこにストレートに進んでいくのに、藤山さんのレコードの歌と、俳句が出てくる。言葉なのか、音楽なのか、何がそのきっかけなんだ。もっとそこがビシッと決まって欲しかったかなぁ。

  Listenersもそうでしたけど、音楽をやりたいのに他の要素をぶち込むタイプにしちゃう佐藤大脚本は私には合わないのかもしれません。