抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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変格ミステリの映像化史上1位!「女子高生に殺されたい」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は、城定秀夫監督最新作。城定監督、アルプススタンドのヒット&高評価で完全にレールに乗ったな、感がございます。いい仕事をしてきた人が、ちゃんとお金をかけてもらえる映画を作れる。いいことです。

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WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

(以下ネタバレ有)

1.殺されたいのややこしさ。

 よーく考えなくても、危険なタイトル。女子高生に殺されたいって、なんやねん。だがしかし、そのタイトル通り、主人公の東山先生は本当に女子高生に殺されたい、という変質者。変質者と表記はしましたが、一応劇中では病の扱い。オートアサシノフィリア、という名前だったと記憶していますがカタカナに弱いので間違えてたら申し訳ない。で、この厄介な病を用いることによって、まず「殺されたい」のレトリックの部分っていうんですか、死にたい、とも違うし、主導権を持ちたくない=不意に命を奪われるから人生は尊い、みたいな考え方とも違い、完全犯罪で殺されたい、という欲求であることを明示。

 次に「女子高生に」のところですが、ここはさっきの病気のところとちょっと違う気がしますが、まあとにかく誰かに殺されたいなーって思ってたら、君だ!っていう人を見つけた、っていうところまでは納得するんですが、女子高生である理由は特に納得できませんでしたね。16歳では子どもすぎて、18歳では大人すぎる、女子高生として最も価値の高い17歳の11月8日に殺されるのだ!とか言ってるけど、急にその価値観どうやって出てきた?っていう。相手が8歳の時に、この人に殺されたい!って狂喜乱舞したのに10年も待ってた理由が超絶弱い。急に女子高生ブランドの消費が入ってるっていう。殺害方法?自害方法?として準備した演劇というか、映画というかにも別に女子高生設定が無いので女子高生迄待ってあげる必要がイミフ。いや、分かるよ、結局女子高生のブランド消費なんだから。でもそこを無理やりでいいからもっとロジックはつけて欲しかったですね。

2.そのジャンルだったか!とWho done it

 とまあ入り口と題材の文句はつけましたが、作品全体としては非常によくできていたな、と思います。

 まず、こういう学園ものでいちばん私が目に付いちゃう学校・教育描写は、東山先生の日本史の授業がそのペースでは進まんやろ、ぐらいで、文化祭も含めて結構ちゃんとしていた印象。こんなにいっぱいの生徒がいる絵を撮れるだけで、良かったね城定監督、っていう気持ちになった。シンプルにそこはエキストラのお金だからねぇ。

 で、東山先生が完全犯罪で殺されようとしているので、話としてはそれをどうやって止められるのかな?のワクワクがメイン、「探偵が早すぎる」的な雰囲気だが、その想定殺人犯を「彼女」と置くことで、メインどころの南沙良河合優実(エスパー設定が許されるのも先生の病気のおかげ)、莉子(演劇部)、茅島みずき(柔道部)の一体誰がその「彼女」なのか、という筋書きに。未だ起きていない殺人事件のWho done it を成立させる力技も見事で、それぞれの女優さんの演技力で、誰がそうであってもおかしくない緊張感も持てました。特に、まあ最早言うまでもない河合優実さんもですが、茅島さんも良かったですね。犬事件でスケープゴートにされたのでミスリードだろうな、とは思いましたが、終盤まで一応の役割を持っていたので上手くやったと思います。

 そこまでやっておいて、まさかの解離性同一性障害というネタを持ってくるというビックリ(ん、そういえば同じタイミングでMCUが…という既視感)。これも先生の病気、及び河合優実の一切説明の無いエスパーのおかげで違和感なく入ってくる。しかも、割と早い段階でこの南沙良が「彼女」なんだろうな、と思わせてから、2つ目の人格、そして3つ目の人格という風に段階を経てくるあたり、非常に上手い。そして、それを演技でちゃんと分からせる南さんも凄い!『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でも素晴らしい演技をしていたのですが、如何せん若い人の顔と名前が一致しない私でも、志乃ちゃんのおかげで見た瞬間顔を思い出せたし、そして今作のおかげで二度と忘れることも無いでしょう。

 そうそう、上手いで言えば大島優子のキャラクターを出してきて探偵役を出すタイミングも非常に良かったと思いました。これでちょっと停滞感を感じ始めた物語が一気に動き出した感があったというか。しかし、そう思うと、完全犯罪で第1の事件は外部犯を装おわれ、探偵役もいて、エスパーもありって、それでいて倒叙(って言っていいのかな、わかんね)結構骨組みのしっかりした変格だが本格!のミステリでした。