どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。
いよいよ6日公開作品のメイン。京都アニメーションの最新作。テレビ版は個人的なランキングでは同時期放送の「ゆるキャン△」にこそ敗れましたが、満点をたたき出している「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の外伝作品になります。
最高でしたが、唯一悠木碧さん演じるテイラーが宣戦布告しだしたらどうしよう、中身がサラリーマンだったらどうしよう、と思ってしまったので「幼女戦記」は非常に罪深いと思います。
あー、感想を尊いだけで済ませたい…
WATCHA5.0点
Filmarks4.8点
(以下ネタバレあり)
1.時と場所を超越する愛
今回は一応、外伝ということで話の本筋=ヴァイオレット自体の成長にはそんなに寄与しないお話。という訳で、2部構成の前半が姉、後半が妹の話ですし、後半に関してはちょっと影の薄かった郵便配達のベネディクトがメインの役割を務めます。
まずは前半。運命を決められて閉じ込められている姉エイミーもといイザベラの下にヴァイオレットが派遣されてきて貴族教育を叩き込む話。最初は拒絶しているイザベラだが、実はそんなに遠くない存在のヴァイオレットに心を開き舞踏会を完遂。孤児院のテイラーに手紙を送って終わりを迎える。
後半は孤児院を抜け出したテイラーが、ベネディクトから手紙を受け取った原体験をもとに郵便配達員になりたいと弟子入り。ヴァイオレットの力を借りて手紙を書き、ついにテイラーとエイミーは再び繋がる、という展開に。
こうしたエピソードはそれぞれ単体で見ても貴族育成計画もの、お仕事初めてものとしての面白さがしっかり担保されている上に、姉妹愛を全体を通して感じられる作りに。ヴァイオレットはまるでドラえもんのように完璧な人物ではありますが、しれっとテレビ版6話の天文台の話とか出してきやがって、ファンの心をくすぐってきました。
もう絵がキレイとかは当然すぎて話題にするまでもないかもしれませんね…。今回も最高でした。
5分で分かるアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第1回
2.対比と空と手。演出の妙。
まあとにかく演出が今回は最高だったと思います。
まずは、対比。イザベラとヴァイオレットはまず閉じ込められている・自由に旅できる、という台詞上でも対比されていますが、4日間かけてヴァイオレットが移動している様子、更には後半に続くテイラーが船で大海を渡っているさまを見せているのでこの対比が非常に効果的に。貴族なのにどこか野生的で未熟なイザベラと侍女扱いで人間味もなさそうなのに貴族的振る舞いを心得ているヴァイオレット。相反するようで、互いに孤独な人生、決定された人生を歩まざるを得なかった過去、会いたいけど会えない人の存在。多くの共有できる事柄とヴァイオレットの優しさを通して両者が接近していき、完璧なコンビとなるさまは最高です。
そしてその対比の描き方で更に出色なのが手と空。ヴァイオレットは手を握ると心が温かくなることをイザベラから学んだ、といい2人が手を握る描写や一緒に布団に入る様子が描かれてますが、その描写はそのままヴァイオレットとテイラーにも引き継がれています。特に、テイラーがタイプライターで手紙を打つシーンで手を重ねるヴァイオレットには感涙もので、義手のはずなのに手の温かさを感じるシーンでした。
冒頭の船に乗っているテイラー、遅刻しそうになった時にサボってどこかいこうと言う時のイザベラ、そしてベネディクトのサイドカーでのテイラー。この3つのシーンで彼女たちは空に手を伸ばしています。シーン単体だと、外に出れないことを示唆するイザベラの様子だったりになりますが、この演出は本当に素晴らしい。作品を通して、記憶がなくても手紙が、文字があることでその優しさは伝わる、ということがメッセージになっており、だから「エイミー」とテイラーには呼んでほしいわけですよ。劇中では結局交わらなかった2人だけど、互いに手を伸ばした空は同じ空じゃないですか。彼女たちは手紙を通してだけでなく、ちゃんと同じ空の下で繋がっている。舞踏会のシーンでも天井は空の絵でした。閉ざされているようで、ちゃんと空はある。生きている以上は繋がっていられるんですよ。
3.外伝らしく、新作へのブリッジとしても機能
意味が無いようにも見える(勿論意図を汲み取れてないだけだと思いますが)シーンは、公開が延期された完全新作の劇場版に向けたブリッジとしても機能していたように思えます。
例えば、ヴァイオレットが初めて手紙を書いた自動手記人形の同期ルクリアとの再会。勿論、一度繋がれば少しの間離れていても再会できる、というメッセージでもありますが、彼女の結婚と自動手記人形を引退しない、という話から女性の社会進出が描かれているとも取れます。繰り返されるエッフェル塔的な電波塔の建築、郵便配達入門で示された電灯やエレベーターといったテクノロジー、外伝の中で3年間を経過させていることもあって、手紙が必要でなくなる時代の到来を予感させるこうした描写は間違いなく、次へのテーマとなってくるでしょう。
5分で分かるアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第2回
4.京都アニメーションに贈る映画に。
今回の映画は京都アニメーションの事件の後の初公開作品であり、奇跡的に放映できていた作品ともいえます。新作の予定はことごとく止まっているでしょう。奇しくも、そんな事件の渦中の京アニに向けた応援の映画にもなった気がした作品でもありました。
例え、記憶が薄れようとも、あるいは亡くなろうとも、記録として、文字として、残っていくこと、語り継がれていくことで、人の存在は無くならない。まさに永遠足りうる。茅原実里さんの主題歌「エイミー」も本編に合わせた歌ではありますが、このメッセージを補強しています。藤田監督も、関わった全員をスタッフロールに載せることを決めたのもこのメッセージ故でしょう。当然、エンドロールで亡くなられた方の名前を見て涙ぐむこともありました。だからこそ、京都アニメーションの名前を、志半ばで道を断たれた方々の名前を呼んでいく、その姿勢を示すことこそ、今後の京都アニメーションへの一番の応援になるのでは、と信じます。
改めて、事件の犠牲者、被害者に想いを馳せて。