抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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「犬ヶ島」に溺れた話

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB) | Twitterです。

 今回はウェス・アンダーソン監督が架空の近未来日本メガサキを舞台に描いたパペットアニメーションの「犬ヶ島」になります。

 パペット独特の感じ、KUBOやズッキーニでも言った気がしますが、かなり好きです。
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WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレ有り)

 1.散らばる日本リスペクトと笑い

 舞台が日本となると、パシリムアップライジングのようにトホホになることもありますが、今回は架空の都市ウニ県メガサキ市ということでそこまで問題にならなかったでしょう。メガサキはナガサキだと思いますが。メタファー的に、フクシマや福知山線脱線事故原爆ドームなんかも見えていたように感じました。 

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 字幕にもかなり日本語が登場しますし、冒頭と終盤のキメでは俳句が読まれます。小林市長もアタリも日本人とされる人物は終始日本語で話していますし、これがまた聞こえる限り正しい。最終盤の腎臓移植のシーンでは字幕すらでないのに完璧に手術の音声を再現していて正直気持ち悪いとすら思える世界観の徹底ぶり。科学党の党首である渡辺さんが寿司で毒殺される際にも、これでもかと関係ないものまで調理工程を見せるのもまた、監督の気持ち悪いまでの潔癖さが垣間見えました(誉めてます)

 全4部構成の中で、アタリと犬たちの出会い、旅立ち、再会、反乱、というように進んでいきますがここではすっかり架空の犬ヶ島が舞台なので、日本云々よりは話を進めながら退屈させないようにギャグを挟んでいて退屈しませんでした。

2.溺死する情報量

 前述のとおり、字幕の出ない日本語が完璧であるなど、日本人には特に情報量過多になりがちです。台詞以外の字幕も日本語と英語が両方出てきますし、小林市長の言葉などは同時通訳という形で英語にも訳されるので二重に意味の分かる言葉が聞こえてきます。

 そしてそこに排除されていく犬たち。彼らが何のメタファーなのかは明示されていませんが、明確にアウシュビッツを連想させる描写があるので、ナチスユダヤ人にも感じますし、現代的な意義で言えば移民排斥やアメリカの黒人差別にも考えられます。あるいは、スナウト病・ドッグ病ということからなんらかの病の患者なのか、常に頭はグルグル回りっぱなし。

 結局ここまで与えられた情報の量がすさまじいとちょっと頭が疲れてしまいます。想田和弘監督の観察映画しかり、頭を使い続ける映画は好きなのですが今回ばかりはしんどかった。耳も使わなくてはいけないし、あと肝心なシーンで流れる俳句の文字が小さい!目まで疲れてしまう。正直、情報の海で五感を使いすぎて溺れてしまったわけです。

3.納得いかないこと。

 話としてはハッピーエンドなんですが、どうしても納得できないことが2点あります。報われない方々問題です。

 まずは科学の党党首の渡辺さん。見かけ上の民主主義のために反論こそ許されたものの、血清等を科学的に作っても小林市長に握りつぶされ、軟禁の末に毒殺。科学の党と言っていたのにその実意見の中身が科学だけでなく、道徳や倫理にも話が及んでいたことからも彼が優秀であったことがうかがえます。それなのに、ですよ。彼を殺した小林市長一派への鉄槌があまりにも弱い。途中の会談から、渡辺党首以外にも犠牲になった人物はいるでしょうし、そもそもがこいつらのマッチポンプだったわけで多くの犬が犠牲になっている訳です。それなのに小林市長がアタリに腎臓を提供しただけであとは刑務所へー、でよかったのか。もう少し物語的なカタルシスが欲しかったです。

 次に報われないのは犬ヶ島にアタリが不時着した当初に協力してくれたチーフ以外の犬たちです。最初はチーフだけが見向きもされないで、残りの4匹が多数決でアタリを助け続けてくれるのに、チーフとアタリの絆づくりのために危険な工場に放り込まれ、スポッツと合流後はその他大勢扱い。スポッツを探すことに決まったのも、アタリがスポッツと別の犬の死骸と間違えずに島に戻れたのも彼らのおかげなのに扱いが酷すぎやしませんでしょうか…。

 まあ他にもですね、小林市長のポスターにATARI ALIVEのハンコ押したのが小林市長に大きな影響を与えたようには感じなかったり、アタリと真相究明を求めた交換留学生が恋仲のように収まってるのは犬ありきすぎやしないか、とか思うところが非常に多い作品でした。まあ、情報の海に溺れるほどの作品なので描写されていたのに読み取れてないのかもしれません。