抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

色彩「ペルリンプスと秘密の森」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 じっと機微を見逃さないできっと大人はそれらしくするのにかかりきりになるんだ。

 はい、SPY×FAMILYでお馴染みyamaの色彩で幕開けです。機微だったんだ、君だと思ってた。

 今回は12月のアニメ映画が大渋滞しているので11月に監督も登壇で先行上映された時に鑑賞しました。そうでもしないと年末年始に死ぬ。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

1. ブラジルの皆さん聞こえてますか

 本作はブラジルのアリ・アブレウ監督最新作。『父をさがして』の監督ですが、冷静に考えてブラジルのアニメーションがきちんと配給されることが普通に凄いな、と改めて。ブラジルの映画ですらたまにしか見ないのに。本当、海外アニメーションを見るには素晴らしい国です。

 さて、その『父をさがして』でも印象的だったのが監督の色使いですが本作も非常に独特。っていうか始まり方よ。開始5分は目がチカチカします。チカッとチカチカです。『バビロン』の終わりの方ぐらいフラッシュ的に画面一色にチカチカしてびっくりします。あとでもっかいします。ペルリンプスはうんぬんかんぬん、それがお前の任務じゃ!みたいに言われてようやっと始まります。

 話自体は割とシンプルで、太陽の国の秘密エージェントであるクラエがペルリンプスを探している最中、月の国の秘密エージェントであるブルーオと出会い共に秘密の森を冒険していくスパイアドベンチャー…ってシンプルかしら。この秘密の森には巨人が攻めてきており、大波作戦が起きつつあるのだ!ペルリンプスならそれを止めれる!ってなるわけですよ。まあお察しの通り巨人っていうのは人類な訳ですね。巨人が攻めてきているっていうのはまあブラジル映画だし、アマゾンの伐採とかなんだろうなってこう思って鑑賞を続けていく訳です。ふたりは互いを敵国のエージェントだと思いながらも、目的となるペルリンプスは共通っていうことで冒険を進めていき、そこにポップな音楽がかかって気分も上々、と思っていたら出会ったジョアンという老鳥が住んでいるのがどうみたって寝ころんだ時の人間の頭部という状況に思わずぎょっとする。あれーおかしいなー、変だなーって心の中の稲川淳二が囁きだす。巨人の頭部…??『バーバラと心の巨人』(相変わらずこの邦題クソだな、I Kill Gigantだよ)なんかも蘇りつつある脳内、よく考えたら別に巨人の頭部とか出てこなかった気もしますが。

 終盤、いよいよ種明かし。ブルーオに君は巨人のスパイだ!と叩きつけられたクラエはクラオという名の少年であり、巨人族=すなわち軍部の大尉の息子であることが分かります。秘密の森はダムの建設に伴って水没してしまう森だったのです。頭部に住む鳥はおそらく元軍人。ブルーオとクラオ、本来は交わるはずの無かった2人の少年の想像力の世界でのスパイごっこを見ていたんだな、っていうことが明らかになり、二人の視線の最後の交差が嬉しくも、そこに隔たる壁やフェンスが印象的に終わる。断絶と確かな未来への期待。寓話性がとっても高いので、結果的に壁・断絶が感じられる世界中のどこにでも通じる普遍的な話に仕上がっているように思えました。

 最終的に似ているな、って思うのは『ジョジョ・ラビット』ですね。第二次大戦下のホロコーストナチスに教育される側の子どもの視点で描いた作品でしたが、ヒトラーをイマジナリーフレンドにしちゃうっていう捻りがある種の子どもの想像力っていう点で共通項を感じつつ、そうさせてしまう大人の世界の辛さというのも見て取れます。そう思うと、結構ペルリンプスっていうものが何なのか分からないままにスパイに興じているブルーオとクラエのやり取りにもヨーキーみを受け取ったり。そう思うとブラジルの声優さんも素晴らしい仕事をしたということでしょう。ペルリンプスってなんだったのか、それは明示されません。でもおそらくは、そういう人間の中に大人でも子どもでも飼っているある種の幼い想像力なんじゃないですかね。それが少し働いてくれれば、日常を読み替える、いや、世界を読み替えることだってできるはず。