抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

62分後の衝撃が最大瞬間風速「ピンクとグレー」

順番が前後しますが、昨日見てきました映画「ピンクとグレー」についての感想です。

 

ピンクとグレー

大人気スター俳優・白木蓮吾が、突然、死んだ。

第一発見者は幼い頃からの親友・河田大貴。

蓮吾に何が起きたのか?

動揺する大貴は、数通の遺書を手にする。

遺書に導かれ、蓮吾の短い人生を綴った伝記を発表した大貴は、一躍時の人となり、憧れていたスターの地位を手に入れる。

初めてのキャッチボール、バンドを組んで歌ったこと、幼馴染のサリーをとりあった初恋・・・。いつも一緒で、いつも蓮吾が一歩先を進んでいた―。輝かしい青春の思い出と、蓮吾を失った喪失感にもがきながらも、その死によって与えられた偽りの名声に苦しむ大貴は、次第に自分を見失っていく。 なぜ、蓮吾は死を選んだのか?なにが、誰が、彼を追い詰めたのか?

蓮吾の影を追い続ける大貴がたどり着いた"蓮吾の死の真実"とは―。

幕開けから62分後、“世界が変わる仕掛け”

もうひとつの物語が生まれる!

 

 

 

NEWSの加藤シゲアキさん原作小説を映画化した作品で主演がジャニーズということでハードルを下げ、一方で芸人原作の作品にも良作があることでハードルを上げ、みたいな感じで見に行きました。(以下ネタバレ有)

 

 

 

 

 

好きか嫌いかで言えば、実に嫌いでした。悪い映画ではないです。面白くないとも思い

 ませんが、嫌いでした。どうしても好きになれない…

 

本作は前半と後半で大きく様相を変えました。その分岐点となるのが、事前に告知しまくっている「62分の衝撃」です。(もっとも、それすら知らずに見に行きましたが)

 前半部分は非常にわかりやすい筋書。幼馴染2人組の白木蓮吾(=ごっち)と河田大貴(=リバちゃん)が共に芸能界に入るものの、片方だけが売れていき時代の寵児に。トップスターにのし上がっていくのに合わせて、住む世界の変わった2人は訣別してしまう。もう一人の幼馴染の石川紗理(=サリー)との再会がここに色を添える。3年間の離別の後に同窓会で再開した2人は再び意気投合。そんな中に、ごっちは自室で首吊り自殺。第1発見者となることを強いられたリバちゃん。冒頭の自殺発見シーンへとつながります。あまりにも、THE日本の青春映画すぎる前半。引っ越しの車を走って追いかける、喧嘩を止める電車の音、けんか別れする親友2人、突然の死に泣き叫ぶリバちゃん。特に死体発見シーンでごっちに縋るリバちゃんには、おいおい、それじゃ余計に首がしまっちゃうぞ!と思ってしまいました。

 

が!その刹那、オッケーの声が。ここまでは、映画の撮影シーンだったのです。亡き白木蓮吾を演じるのがリバちゃんこと、河馬大。親友の死を自伝小説として纏め、更に主演していました。ここから15分ほどはこれまで見てきたシーンの答え合わせです。おそらくこの20分ほどが、この映画の最大瞬間風速でしょう。

画面がモノクロに切り替わってからは、ごっちの幻影を追うリバちゃんが映画の共演者だった2人に翻弄されながら堕ちていくパート。サリーと同棲しているのに浮気してしまい、あげく共演者をタコ殴りにしてしまう。芸能人「白木蓮吾」のことを何も知らなかったことを自覚したリバちゃんはごっちの実家へ。ここでごっちは実の姉に恋していたことを知り、自分はごっちの何も知らなかったという事実に気付く。自暴自棄になって、白木蓮吾同様に自殺を図るも、失敗。カラーのごっちとの対話パートを経て、他人のすべてを知ることはできず、他人になることは出来ないと気付き、そんな自分へと別れを告げるべく、ごっちの遺品のジッポーを投げ捨てておしまい。

 

この後半戦が、まるで僕にはダメでした。前半部分で描かれたリバちゃんから、後半の河鳥大にまで共通する我儘さが我慢ならないのです。劇中、彼自身事務所の社長に言われています。「おまえは何もしていない」。サリーにも言われていました。「ごっちのくれた仕事」と。そうなのです。彼自身は何もしていないのです。それなのに、前半では葛藤をしてごっちと決別し、サリーに八つ当たりをしてしまい、後半では罠にはまって浮気したあげく、共演者を殴り、ごっちの肖像画を破り、挙句ごっちとの対話でボロボロに。彼自身の幼さ、何もしてなさが目に付いてしまいました。対話の後の、ごっちとの抱擁でリバちゃんにも文字通り、色が付きます。しかしそれが意味するところは?彼も実は自殺に成功して死後の世界にいったのかと思ったらそうでもなく。劇中劇が何重にも張り巡らされて、何回もオッケー!の声が響いたりする方が良かったのに…なんて思ってしまいました。

 

どうしても、この手のメタミステリ的な手法を取ると、その種明かしが一番の盛り上がる瞬間です。『星降り山荘の殺人』『フラグメント』『ロートレック荘事件』『イニシエーション・ラブ』などの小説でも分かった瞬間のアハ体験が、一番の勝負どころです。そこまでの地道な種まきもこの瞬間のためなら我慢できるのです。だからこそ、だからこそ、その後ろが蛇足感満載だったのかな…

女王様と私』みたいに、現実とフィクションがごっちゃになっていくように仕掛けられているなど、メタ要素を上手く利用できるようならとんでもない傑作になったかもしれません。

 

但しこれは絶対に言っておきたいのですが、役者の方々は本当に素晴らしい演技でした。

 ジャニーズ、中でもよく知らないHay!Say!JUMPということもあり、完全に期待していなかった中島裕翔さんは、ジャニーズとは思えないベッドシーンを見せるなど、おそらくは新境地を開いたんでしょう。

そしてなにより、菅田将暉さんの怪演です。この映画は菅田将暉On Stageといっても過言ではありません。前半の冴えないリバちゃんは、かなり偏差値低めにふれてますが、これはあえてでしょう。そのうえで、河鳥につっかかり、ぼこぼこにされることになるこれもまたTHE悪役といった感じの共演者を演じました。いやー、すげー…としか言えない名演技でした。前後半で役が入れ替わるのは、夏帆さんも。見るからに悪い女優で、河鳥に抱かれるシーンは扇情的でした。ごっち、サリーや事務所社長などの他人の空似感なども笑わせてくれました。

 

 個人的には、映画館にで前に座っていたジャニーズファンと思わしき女子高生たちが62分でえー!!と声を上げ、中島さんのベッドシーンであたふたしていたのがツボでした笑