どうも、抹茶マラカス（@tea_rwB)です。
さて、今回は愛聴するTBSラジオ「東京ポッド許可局」でもお馴染み、新聞や週刊誌を読み比べまくるプチ鹿島さんとラッパーのダースレイダーさんのYoutube番組ヒルカラナンデスの劇場版。一応ジャンルとしては政治ドキュメンタリーではありますが、どっちかっていうとバラエティ番組です。あ、本人たちはロードームービーといってました。
WATCHA4.0点
Filmarks4.1点
(以下ネタバレ有)
1.選挙は面白い！
さて、この作品は結構大きく前半後半で内容がガラッと変わると言ってもいいでしょう。前半は2021年の衆議院選挙を追ったものになります。舞台は香川一区。
無論、香川一区とは大島新監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』でお馴染み小川淳也議員の選挙区。最近すっかり政治ドキュメンタリーが定着した感もありますが、続編『香川1区』が時間が合わなくてスルーしたのを非常に悔やんでおります。この大島監督が取り上げた『香川1区』と同じ選挙をヒルカラナンデスチームが取材していくことになる訳です。（大島監督はこの映画のプロデューサーでもある）
選挙で戦う相手は、ワニ大臣、もとい平井卓也初代ITデジタル担当大臣。彼は香川でシェア6割を誇る四国新聞の創業者一族で、弟さんが社長をしていて、地元の有力者っていうことで小川議員はちっとも勝てないんですよ。で、小川議員のちょっとチャーミングな点も含めて彼に密着したドキュメンタリーがヒットした訳で、そういうこともあってこの選挙では「山が動いた」って結果になる。ただ、その結果を知っているだけなのに選挙中の平井陣営、小川陣営、そして維新の町川陣営についていきそれぞれの対応の違いをわっかりやすく浮きだたせる。誰がフレンドリーで、誰が許可を要求し、誰が脅しをかけてくるか。平井候補の「パレード」なんて、白い巨塔の総回診的なコメディにしか見えないんですな。そして四国新聞の記者が実は平井事務所とかで目を光らせていた、なーんて驚きも。本当に帝国やないか。
単純にこの辺では、いわゆる「選挙」っていうもののエンタメ性、面白さっていうのを格段に引き込むことに成功しており、プチ鹿島・ダースレイダーの両人をナビゲーターとしつつ、彼らの野次馬目線で（鹿島さんの一読者としての連呼など）選挙を面白がる、っていう枠組みが見える。多分そういう枠組みで見れる作品として想田和弘監督『選挙』だったり、五百旗頭監督の作品群だったりと相補性が高いだろう。
2.その日を捉えた後半
後半は2022年の参議院選挙。闘うリベラル宣言をいたく気に入ったお二人が、菅直人元首相と維新の戦いに密着すべく大阪に乗り込む。前半の香川1区がフリになっていて、辻元清美候補や松川るい候補、菅直人首相の奥様の演説の持つパワーが突き刺さっていく。特に個人的には松川候補にはパワーを感じました。確かに、松川さんは朝まで生テレビで共演経験が、小川淳也さんはイベントで共演経験が、っていうことでよくわからん政治Youtuberが取材にきました、よりも心を開いて話してくれた、っていうのもあるんですが、本来政治信条が異なる人たちが政策や言葉をぶつけて、お前の党は気に入らないが、お前に気骨があることは認めるぞ！！みたいなThis is 選挙っていう印象。
ただ、ここで安倍晋三元首相銃撃事件が起こる。単純に、あの日を切り取ったドキュメンタリー、あの日の選挙現場を撮影していた、それだけでこういう言い方をしてしまったら良くないですが、面白い。
特に、このセンキョナンデスが映画として良くなった点。それが、前半と大阪での前半で描かれてきた選挙を面白がる、という構図自体にもメスが入って、本来はどこか上に置いてしまったり、知らない領域と言ってしまいがちな選挙に対して、権力構造の下側（本来はそもそもそれがおかしいのだが、そうなっている）有権者的な立場からの皮肉、っていうのは自分を上に置いたオストルンドの皮肉とは全く訳が違うっていうところ。訳が違ったんだけど、銃撃事件があったせいで、皮肉とは違って日本を支配している冷笑、そして前提となる選挙っていう仕組み自体にも考えなくてはならない状態になってしまう。
何より、多くの候補が選挙活動を中止する中でそれでも声を届けることにした共産党の辰巳候補と志位委員長、そして辻元清美。彼らが声を出した姿、態度を捉え、その死が伝えられた瞬間もカメラで撮っていた、それも映像作品としての強度が増すし、辻元議員っていう人への解像度は間違いなく上がるようになっている。
センキョナンデスは帰ってくる、とMCUパロディで作品は締めくくられる。どうも沖縄に行っているらしい。知事選で行ったのかな？
