抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

故郷「FLEE フリー」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はフリー、という映画ですが、泳がない方です。ややこしいのが、同日公開で「はい、泳げません」っていう作品があるので泳ぐんだか、泳がないんだか、泳げないんだか、混乱の様相を呈しております。

泳ぎません。

Flee [Blu-ray]

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレ有)

1.アニメーションというより

 一応、アカデミー賞の長編アニメーションと長編ドキュメンタリー、そして国際長編映画賞という3部門でのノミネートという快挙を成し遂げた作品ではあったんですが、うーん、個人的にはアニメーションとしてのレベルが決して高い訳でもなくて、明確に実写を入れることで、ドキュメンタリーとしての強度、これは現実のことなんですよ、っていう印象を持たせよう、主人公であり、語り手であるアミンの存在を現実だと啓蒙しよう、という意図を感じて、理解はできるんですけど、逆に言うとそれってアニメーションだと伝わらないっていう風に思われてるのかな、っていう風に感じちゃいました。バレてしまうことを恐れるのであれば、Based on true storyとか、そういう形にしてフィクションに仮託することもできるだろうし、実際FUNANやトゥルーノースはそれに成功しているように思えます。難民映画や、一人の青年のアイデンティティを巡る映画としては優れていても、アニメーションとして描く意味は強くは感じませんでした。そういう意味では、似たテーマ、似た手法で作られた『アンネ・フランクと旅する日記』の方が好みでしたね。

2.終わらない難民問題

 本作においてまず提示されるテーマはHOME。それは、ここにいていいという場所、脅かされない場所。こういう提示のされる故郷、という概念は日本人にとっては少し馴染みがないかもしれないし、何かもっと違う定義がされるような気もしてしまう。

 だが、本作、というか人生を通して、アミンはアフガニスタンの内戦で父が行方不明になり、兄は出兵を拒否して海外へ脱出。一家は観光ビザを唯一出してくれたロシアに逃げるが、当然観光ビザは切れてしまうので、ロシアでは不法移民、という扱いになり、街中で警察に追われるような感じに。スウェーデンに行きたいのに、高額な密入国業者に頼んだ結果デンマークに連れていかれ、家族と再会できても、今度は自分のセクシュアリティの問題で受け入れてもらえるか分からない。一度彼氏に話した難民としての人生は、別れた後にそのことを通報されたのでは?と怯え、平穏はそこに無かった。そんな彼が、ようやくパートナーと巡り合え、こういうストーリーを話せる監督にもあえて、少しは平穏を手に入れられた、っていうことが見ていて安心はするというか、良かった、っていうことはないんですが、ひとつの解決を見たな、と。湾岸戦争からのアフガニスタン内戦みたいな時期の話なので、ある意味でゲイや難民と言ったマイノリティへの支援や眼差し、理解は今よりも厳しい時期だったと思うので、アミンの生きづらさを考えると、悲しくもなります。こうした問題が一歩ずつでも進んでいると考えるのか、まだまだ続いていて酷い、と考えるのかは自分次第だとは思いますが、少なくともエストニアの入管施設が写真で出たシーンなんかは、モロに日本の難民の状況を思い出しましたし、ウクライナの問題を露骨に思い出すモスクワのマクドナルドのシーンなんかがあったりと、うーん、そうですね、厳しい現状だな、と思います。