抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

トムを讃えよver.2.0「トップガン マーヴェリック」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 本来は見る気のない作品だったのですが、あまりにも評判すぎて見てきました。まあ確かに劇場案件だし…。いい映画だったけど、別に年間ベストとかには絡まないかなぁ、と。ただ、こういうご機嫌な映画を見れるとシリアスめなやつにも緊張感が生まれます。

Top Gun: Maverick

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

(以下ネタバレ有)

 

1.頭からケツまで正気か?の連続

 なんだろう、本当にバカじゃないの?っていう気持ちしか残らないぐらいトンデモ映画でしたね…。監督こそ『オンリー・ザ・ブレイブ』などのジョゼフ・コシンスキー(冒頭の発進シークエンスがコシンスキーらしい、仕事をする人たちの尊さみがあって凄く好感の持てる入りでしたね。)ですけど、プロデューサーにやっぱりトム自身が入り、脚本にも盟友クリストファー・マッカリーが入ってることもあって完全なるトム印。そのため、事前情報を特に仕入れていなくても、あ、これどうせちゃんと飛んでる。なんだったら、2人ないし3人搭乗して、先頭がプロで、操縦師役はダミーのハンドルを握るのが従来の撮影方法でしょうけど、これトム本当に操縦してる可能性高いのでは、みたいなシーンやカットの連続。

 まずはなんかトム、じゃなかった、マーヴェリックが関与しているプロジェクトの話が始まりにあって、ダークスター(ジョン・カーペンターへのオマージュかと思ったわ)なる飛行機でマッハ10を超える世界にいきなり連れていかれる。離陸の瞬間の音圧・風圧はすさまじく、小屋の屋根までとんでいた。やりすぎである。

 そしてマーヴェリックを教官として迎えた精鋭部隊が挑むミッションは、山肌に設置された対空ミサイルに認識されない谷底を通過して、精密射撃からの急上昇、そしてそこからミサイルから逃げ続ける、というよく考えなくてもなんでそのミサイルの設置なの、そんな好都合なことある?GTAなの?みたいな舞台でのミッション。その訓練のための飛行でマーヴェリックは格の違いを見せつけ、練習飛行でもがっつり気を失ってコヨーテが危ない目に遭ったり、1機失ったりしてるんだけど、どうも本番のミッション含めてこれちゃんと俳優が乗っているらしい。勿論、操縦は前述の通りで、従来の方法でプロのパイロットがしているだろうし、表示されているものが嘘かもしれないが、しかしマッハ10とかG10とか、なんかもうそれ人間が耐えていい話なの?っていう領域である。しかもそれでコックピットにIMAXカメラ6台持ち込んだとかいうじゃないですか。アカデミー賞の撮影賞は確定してもいいとして、ノーランでもしない無茶をしている気がする。戦闘機のセット組んでグリーンバックでいくらでも出来る時代にこういう撮影の仕方をするっていうのは、本当に正気の沙汰ではない。でも、それが確かに映画の「本物らしさ」を担保しているようにも思える作品だし、画面からやってきた列車に轢かれると思い込んだ映画の原初体験に近いのかもしれない。

 まあ、これだけのものを見せてくれるだけで、同時代性という意味では本当にありがたく、トムを讃えよとしては、vol.2じゃなくてver.2.0っていう印象だ。

2.トム・クルーズは止まらない

 そもそも公開延期を繰り返した本作だが、それはコロナが収まって劇場公開が出来るまで、という以上に、トム・クルーズがその国に行ってプレミアを行って、各国の観客に挨拶できる状況が整うのを待っていたからだと思える。既にミッション・インポッシブルの7と8に合わせての再来日を公言しているように、映画を作れば、劇場の観客迄直接届けるのがトム・クルーズ流だ。

 そして、本作において私の注目点は、マーヴェリックは教えるだけなのか、飛ぶのか、にあった。最初は割と本人は飛ぼない方向で進んでいたし、なんかこう本人のカッコよさは陸地での恋愛の方でカバーする感じかな?っていう雰囲気(なっちゃんセーリングのを単に船と訳すのはどうだろう)。ここの恋愛パートが前作では本当にノイズで、ただヤンチャなだけなマーヴェリックがいい男であり、トム・クルーズだから許されるだけの酷い言動をしても許してくれるヒロインだったのが、明確にそこは差別化してきていたので大変よかった。『愛と青春の旅立ち』と同じクソ構造からよくぞ抜け出した!

 そして劇中、マーヴェリックは決死の作戦のクリア設定を軍上層部と違い、生還に定めた。描写が繰り返されたように、精鋭と言っても明らかに実力が伴っているとは言えないメンバーが帰還するのは難しく思える。そこで結局マーヴェリックが編隊長となって自身の傑物っぷりを存分に見せつけていく。従来の意志を伝える継承ものなら、煉獄さんよろしく死ぬはずなのだが、マーヴェリックは自己犠牲の精神を見せたが、最終的にはチーム全員帰還、結局トム・クルーズやばいやつ映画へのランディングを見せる。これを待ってました型のエンターテインメントと捉えるか、まだまだの足掻きと捉えるか、傲慢と捉えるかは人によるだろう。トム・クルーズと同年代の方なら感慨も一入だろう。個人的には、「やっぱり辞めないよね」って感じ。ミッション・インポッシブルの続編が待っているのに、今度は宇宙での撮影を企んでいるのに、まるで自分は主戦ではない、っていう映画なんかまだ作る訳ないのだ。

 この映画はマッハ10を超えてマッハ10.1でもマッハ10.2なくもうマッハ13ぐらいまではかっとばしていた。そう、よく考えたら、マッハ10でいいのにそれを超えるし、奇跡は2度起こすと明言していたように、あり得ないを超える後半の展開は、ある意味で事前に予告されたとおりだった。

トム・クルーズだって当然いつかこういう無茶苦茶アクションを引退する日はくるだろう。でも、今日じゃない。