抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

この時から続く道「親愛なる同志たちへ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 えーオンライン試写です。このタイミングで公開されるロシア映画っていうのは中々思うところもありがちですが、それ踏まえても見て良かった、と言える作品だと言っておきましょう。東京国際でやってたんですね。

 などと見た時に書いていたんですが、モロにジェノサイドと言える事態が起こってしまいました。あってはならない事態。

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WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

(以下ネタバレあり)

 

1.ノヴォチェルカスクの虐殺

 本作が描くのは、現在のウクライナとロシアの国境近くのノヴォルチェルカスクで1962年に起きた虐殺事件。場所が場所だけに、現在のことを思い起こすのは当然として、近郊のロストフに在籍する日本人MF橋本拳人ヴィッセル神戸に移籍することが試写当日に発表されまして、もうこの地域に好きな思い出はゼロです。憤怒です。

 話が逸れましたが、主人公のリューダは市政委員会生産部門の課長。バリバリの体制側の人間にして、かなりのタカ派。そんな彼女が日々の業務の中で会議に出席していたら、なんだか警報が。今やニュースでウクライナの都市で流れていた警報がロシア側で流れるっていうのもなんだか不思議ですが、これは工場でストライキおよび暴動が起こっているよ、っていう合図でございました。共産主義において、労働者が労働争議とかそういうのを起こすなんてありえない訳で。リューダも激おこ。

 そこに対して中央部は、完全に軍事力で抑え込む。なんか警察と軍とKGBが互いに嫌いながら併存したりしていて、結構めんどい勢力図ではあるのですが、まあとにかく上から押さえていく感じ。発砲ののちは、血に汚れた広場は洗い流せないと分かるや、上からアスファルトを塗る始末。最近の映画好きなら、韓国映画で兎に角扱っている光州事件を思い出すことでしょう。間違いなく。SNSのような末端メディアが発達する前なので、事件が広がることもなく、大手メディアは口を噤む。機密契約にサインさせられ、口外することを許されずに次々と人が死んでいく。

 結果的に日本公開が今になっただけではありますが、現在のウクライナ情勢に対して明確に物申すような、っていうか物申せないのは怖いよね、っていう映画なのは凄いタイミングですよね。フルシチョフプーチンが被って見える…。

2.アイダよ、何処へ的な

 とまあマクロの話はそんな感じなんですけど、あくまでそれって今だから視点でもあって、映画の主題的にはもっとミクロな感じ。

 ようは、リューダは体制側なのに工場労働者の娘の安否が分からなくなってしまい、それを確かめる為に東奔西走。あ、これって『アイダよ、何処へ』で見たやつだ!っていう感じで、あの時は母としての愛と大義・職務とのジレンマでしたけど、今回は母としての愛と、自分の信じてきた思想・人生とのジレンマ、葛藤なのでよりつらい。しかもリューダはタカ派スターリン信者のあの頃良かった、娘の教育に失敗しちゃった言説なんかが見られて、世代間対立や構造対立が娘との間に見られる。それでもそれを超える親子の愛が見られるラストカット、そして「きっとこれから良くなる」というあの頃の願いは2022年に叶えられましたか?っていう。