抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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クソデカ感情のあとしまつ「やがて海へと届く」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は、相互フォロワーであるじぇれさんのツイキャスを聴いていたら運のいいことに誘っていただいて試写会で鑑賞した作品の感想になります。

 なお、感想tweetでは表記しませんでしたが、本作は明確に東日本大震災に関する描写があることを明記しておきます。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレ有)

 

1.クソデカ感情、それはみんなの大好物。

 えー、基本的にはですね、岸井ゆきの演じる真奈が大学の新歓でいきなりクソムーブかまされちゃう。そこを助けてくれた同じ新入生の浜辺美波演じるすみれに対してクソデカ感情(それはもしかしたらLOVEかもしれない、ぐらいの感覚)を抱いている。そんな状態で、すみれは一人旅にでて東日本大震災に被災。津波で彼女の遺体は未だ上がらない。それ故、真奈は未だに彼女の死は受け入れられず、「死んだ」ではなく「戻ってこない」みたいな表現をしている。

 でも、すみれが付き合っていた彼氏はもう婚約者がいるし、すみれのお母さんもどこかスッキリしている部分もある。彼女一人だけが、すみれの呪いにまだ取りつかれている。喪失を受け入れられない状態で、彼女が前に進むために(という言い方はあまりよくないが)、真奈の勤め先の店長だった光石研が突然自殺してしまう。あまりの突然さに、彼女は動揺するが、同僚たちは受け止めているし、代わりの店長が来て、あっさりと店の歯車は回りだす。ああ、この世界に代わりなんていくらでもいるのだな、っていう。

 で、こっからは被災地にケリをつけにいくパートで、彼女が訪れただろうところに行ってみたら、なんか映像を撮っている集団が。彼らは震災サバイバーで、震災遺族。すみれがしょっちゅうビデオカメラで色々撮影していたように、彼らも自分たちの家族の死を受け入れて彼らの足跡を映像に残す。津波に対して戦えるのは、続く言葉しかない。民宿の娘(たいよーさんのスペースでおっしゃっていた新谷さん!歌上手かった!)が祖母から歌い継いだわらべ歌だ。

 彼らとの交流を通して、形見分けされたすみれのビデオテープを、真奈は遂に見る。そして、被災遺族と同じように(ではなかったので形式を統一して欲しかったが)すみれが三途の川の向こうにいることを想定したビデオレター。こうして彼女は自分のクソデカ感情にケリをつけることに成功して、これからきっと前を向くんだろう。

 こういうクソデカ感情の矢印が大きすぎる話っていうのは、えてして人間のダメさが出てくるので私は大好物だし、っていうか全国民好きでしょ?好きじゃない?そういう点では、この映画はとても良かった。特に、浜辺美波のシリアス演技は『アルキメデスの大戦』以来だと思うし、岸井ゆきのより大人っぽく見えるようになっていて、すごいそこはちゃんとしている!って思った。岸井さん30歳、浜辺さん21歳でこれは素直に凄いと思う。え、岸井さんって30歳なの!?

2.世界を片面しか見ていない。

 とまあ、褒めてはみましたけど、はっきり台無しにされたと思うのが後半30分間でした。簡単に言うと、そもそも90分間、現在視点と過去視点が対して深い構成の意味も無くぐるぐるするのにいらつくんですけど、最後の30分は急に視点がすみれの方になる。ここまでの90分で語られたエピソードを彼女の視点で見ると、なんだ、すみれだって真奈に対してクソデカ感情をぶつけていたし、っていうかなんならすみれの方が先に惚れてんじゃん、みたいなことは分かるんですけど、いやそんなん前半で分かってるわ、っていう羅列でしかない。

 せめて、真奈がすみれの喪失の受容としてのビデオを見る、という行為で示して浜辺美波視点はビデオとして、だけで済ませてくれれば良かったのだが、別にビデオ画角になってる訳でもないし、っていうか真奈が知り得ない情報まで観客に提示される。あれだけ意味ありげな重要なセリフとして、「世界を片面しか見ていない気がする」とすみれに言わせて、人の思いなんて分からないよね、所詮は1人称視点なんだからさ、っていう話なんだから、観客だけが両面を知るっていうのは、絶対におかしい。

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