抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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歴史に払われるべき敬意「リング・ワンダリング」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は非常に楽しみだった邦画。イメージ・フォーラム案件だったんですけど、うん、納得笑。すっごく不思議な映画でした。

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WATCHA3.5点

Filamrks3.7点

(以下ネタバレ有)

 

1.鈍感系主人公

 いやはや、びっくりしてしまう主人公像でしたね。本作の主人公は、現代の東京で漫画を描いているけど、なんとか新人賞に応募するとかどうとか言っているので、漫画家志望というべき青年。それじゃあ稼げないので工事現場で働いている。ただ、どうしても作中に関係するニホンオオカミが資料が無くて描けない、って悩んでいる。偶然工事現場で犬の頭骨的なものを見つけたので、それを手掛かりにしようと夜中の工事現場に舞い戻って…戦時中にタイムスリップ!?というビックリの展開。

 で、ここで戦時中なのは、神社の階段を上ってすぐに見つけるなにやら逢瀬の最中のカップル、その男(この出歯亀が!さん)が軍服着てたりするんでね、見ている人はすぐわかる。1000歩譲っても、写真館の旧字体&右から読む、明らかにおかしい服装や内装、カメラの供出、疎開と満点で要素が揃っているのに、本当にずーっと勘が悪くてタイムスリップしていることに気付いていない。アニメを見ているとね、ハーレムものの主人公なんかが好意を向けられていることに気づかない鈍感系主人公っていますけど、本当にそんな感じですよね。現代に戻ってきて、工事現場で一回どけていた金属片がシロの首輪じゃね!?って気づいたと思ったのに、まだタイムスリップ自体には気づいていなくて、写真館訪ねて随分と説明されてようやく気付くっていう。

 タイムスリップして、でもそれに気づいてなくて、っていうか写真のおかげで、アバンでもタイムスリップしてたことが分かって。多分、タイトルになっているリング・ワンダリングっていう言葉は円環の中を彷徨う、みたいな意味のドイツ語のリング・ワンデルリングの英語形だと思うんですけど、本当にそういう主人公。常に五里霧中、何も自分の現在地を分かってない、みたいな。

2.作中作の存在

 主人公像は結構面白かった、という風に思いましたが、映画としてはめちゃくちゃ変な映画。現代での主人公の導入に結構時間を使うな、と思ったらタイムスリップしてそれが結構長い。ここで、普通のタイムスリップものはそこのギャップのコメディを説明しながらやっていくんだけど、勘所の悪い主人公なので終始ふわふわしている。それはまるで一炊の夢。ふわふわしている故に、現代パートとの断絶っていうのも感じる構成で、停滞感があるのは事実。それとは別に、主人公の描く漫画を映像化している作中作の描写もあるんで、現代時間軸はそんなに動いていないんですよねぇ。これが結構この作品を気に入るかどうかの境目かもしれません。

 作品を通しての主人公の成長、っていうと、ニホンオオカミを描けなかった主人公がちょっとした不思議な体験を通して描けるようになるっていうことなんですけど、できればそこを漫画的に見たかったかな、っていうのが正直なところ。実写で映像で見せられると、彼自身の漫画的な達成には感じない、っていう風に思えます。せめて、彼の漫画を読んで素直に感動してくれていた工事現場の同僚に読ませて、驚く顔かなんかを見せて欲しかったというか。

 っていうか、資料が無いもクソも国立科学博物館に行けばあれぐらいの資料はあるのではないだろうか!!科博はいいぞ。いや、意外とギャグじゃなくてですね、ニホンオオカミの姿、戦争の記憶。そういうものを絵や写真で伝えていく。神社に残った御神木のように見せていく。そういう歴史への敬意の示し方を重要視した映画だと思うんです。工事現場から遺跡でてきたら埋めちゃえ、なんておっちゃんらも言ってたし、すごくそこは意識的。だとしたら、その蓄積である博物館には寄ってほしい。撮影許可おりなかったんだろうけど。