抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

奇妙な果実は未だ実れり「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」感想

 どうも抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回の作品は昨年度のアカデミー賞主演女優賞のノミネート作品。ノミネートされませんでしたが、『パーフェクト・ケア』といい、俳優部門だと遅れるもんですね。まあアンドラ・デイは初演技で日本での知名度も無いので仕方ないけど。

THE UNITED STATES VS. BILLIE HOLIDAY (MUSIC FROM THE MOTION PICTURE)

WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

(以下ネタバレ有)

1.悲劇の歌姫ビリー・ホリデイ

 タイトルで堂々とアメリカvs個人って言う風に言ってのける映画ってなんか他にありましたっけ。本質的にはそういう中身の作品があったとしても、タイトルにつけるっていうのは非常に挑戦的。しかし、それもわかるぐらい、このビリー・ホリデイという歌手は権力に狙われ続けたんだ、ということが描かれ続けます。

 申し訳ないんですが、私は洋楽さっぱり分からないマンなので、ビリー・ホリデイがどのレベルまでアメリカ、あるいは世界で浸透している歌手なのか、全く分からないんでどうしてもそこの前提共有が出来ないっていうのは本当に申し訳ない。

 で、描かれるのは、アメリカの連邦麻薬局の長官、アンスリンガーの指示のもとに狙い撃ちされたビリー・ホリデイの生き様。このアンスリンガーっていうやつが本当に気に食わねぇ。黒人と麻薬はアメリカを汚す、ジャズは悪魔の音楽、みたいなセリフが劇中でも出てきていますが、ちょっと調べると、そこには麻薬撲滅と白人至上主義がクロスした迫害とメディアコントロールの化身みたいな人っぽい。フーバーもそうだと思いますけど、公権力が差別や不正をする側にあって、しかもそいつが長期間在任し続けるっていうのは腐ってますね。で、アンスリンガーがホリデイを狙うのは、KKKによる南部での黒人殺害、木につるされる様子を歌った「奇妙な果実」という作品が象徴的だったから。周囲の人たちを抱き込んで、麻薬を無理やり手に入れさせた瞬間に逮捕したり、っていうやりくちも酷いし、そりゃホリデイもどんどん麻薬や性関係、酒やたばことあらゆるものに縋るような、そういう人生になってしまうでしょうね、っていう。

以上のツイートに付与されている論文が、アンスリンガーがジャスが麻薬をいかに敵視し、それが人種差別の文脈と重なったかを示す分かりやすいタイプの論文でした。

2.主題がブレ気味ではあるか

 テーマとして、訴えたいことはよーくわかるし、賛同したいんですが、映画として考えると少し凡庸なところがあるのも否めないように思えました。

 えーと、まず明確に私が混乱したのは、麻薬とヘロインと、みたいな区別が難しく、どれが合法でどれが違法みたいな話の前提共有ができていないので、今ビリー・ホリデイがしていることは違法なのかどうか、っていうのがちょっと分からなくてノイズになったということ(私の理解力不足だったらすいません)。

 そのうえで。彼女を騙し、そして人生を追っていくことになる黒人捜査官だったり、彼女の周りにいる男たちが差別されている黒人コミュニティとして、白人相手に一致している中でも、男女の差別や搾取はそれはそれであるっていう。うまく描けば、単一的な差別ではない描写になった、という評価が出来ると思うんですが、白人専用エレベーターに白人女性のパートナーと乗ろうとして、黒人のエレベーターマンに拒否されるシーンとか含めて、結局どの差別を描きたかったんだっけ、っていうブレを感じてしまいました。

 やっていることも、抑揚がなかったというでしょうか、割とワントーンで、急に体調悪そうになって一気に病床に、って感じで省略も別に上手くないっていう印象でしたね。彼女が権力によって脅かされている時、世間がそれをどう思っているのかっていう話かなんかがあって、もうちょっと緊迫感が欲しかったかもしれません。