抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

事故を聴く「ブラックボックス:音声分析捜査」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は怒涛の3日連続試写会の中日に鑑賞しました、フランスの聴覚型サスペンスになります。同じ監督・主演コンビの「パーフェクトマン 完全犯罪」を事前に見て、予習?も完璧でございます。

Boîte noire (Bande originale du film)

WATCHA3.5点

Filmarks3.3点

(以下ネタバレ有)

1.聴覚型故の演出

 まずもって言えるのは、本作は実に劇場案件だということ。概要的には、航空機がアルプス山中に墜落する事故が発生。フライトレコーダーとコックピットボイスレコーダーが入っているブラックボックスの解析を航空事故調査局に所属する主人公が進めていく感じ。そのため、とにかく音が大事。微細な音の違いを聞き分けることが大事なため、音響施設がしっかりしている映画館で見ないと、作品価値は大きく損なわれるだろう、ということを強く言っておきます。

 そのうえで、製作陣の側もそれを強く意識しているわけで、主人公のマチューは普段から音声分析をしまくってるせいで、聞こえすぎちゃう、みたいな描写がされており、それが彼の孤高感も醸成している。彼がノイズキャンンセリングイヤホン(しかも私は無くしそうで絶対に仕えないBluetoothのケーブルがないやつね)を装着すれば、音響はそれに合わせて音声を遮断していく。

2.誰も信じられぬ

 マチューが世界をどのように聞いているか、がメイン(決して彼視点だけな訳ではないが)で描かれるので、彼の考えて、推理していく航空事故の真相を見ていく訳ですが、彼の挙動は明確に信じるに足らない感じで、イマイチ彼の考えていることが本当の真実なのか、怪しい感じに見えてくる。

 名探偵コナン式、真実はいつもひとつに取りつかれた感じで、正義感とかよりも興味が凄いって感じでもう形振り構わず真相に迫ろうとするマチューは、飛行機の会社とその自動運転システムの認証の癒着を疑って奥さんのPCから機密データを盗み出したり、担当だったのに欠勤しだした同僚の家やらオフィスやらにふつーに不法侵入したりと、結構グレーどころかアウトな感じをしまくる。おい、アンタ音声分析のプロっていうよりソーシャルエンジニアリングの達人やないか。そんな感じでどっちかっていうと暴走していく感じなので、彼の提唱する癒着論もそのあとドローンで遊ぶ子どもを見て思いつくハッキング論もイマイチ信頼ならない。どこに転ぶんだろう、という面白さはあるけれど、もうどうでもええわ、感もちょこちょこ出てくる。

 んで、結局ハッキングで落ち着くんですけど、そうだったら、最初のテロ論で容疑者扱いされた人へのフォローがもっと公的に無いと、メディアの責任、みたいなとこにいかないよなーみたいなことも思ったし、っていうかラストのざまぁ!をやりたいだけに見えて、だったら全部マチューが間違えていて、家庭を壊して死んだだけでしたの胸糞の方が良かったようにも思えて。いや、でも「パーフェクトマン」でも見せていた、ピエール・ニネの追い込まれていく感じの演技は良かったし、シンプルに楽しめたのは楽しめた作品でしたよ。