抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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古典を蘇らせる名優たち「マクベス」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 AppleTV+で公開される前に駆け込みで大晦日に公開されました、コーエン兄弟…ではなくジョエル・コーエン単独監督脚本作。1週間しかやらないから見れて良かった。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有)

1.超古典を未読の罪

 はっきり言って、ここに悔い改めます。シェイクスピアの四大悲劇を読んだことがないことを。っていうか「マクベス」以外を「リア王」「ロミオとジュリエット」「ハムレット」だと思っていたことを。「オセロ」ごめんね…。マ・クベってなんかあったな?と思ったらガンダムでした…

 ということで、シェイクスピア劇、っていうのが多分ある種のジャンル映画でもあると思うんですけど、その形式へのびっくりと、単純にストーリーを追いかけないといけない字幕への忙しさで、この映画を万全に楽しめたとはいえない気がしています。マクベスぐらい読んでおいて、解釈の違いを楽しむのが本懐だと思うのですが。

 それもですね、本作はいわゆるスタンダードサイズのスクリーン、しかもモノクロで展開されて、美術とかにもバリバリ凝ってる上に、霧とかを使うことで全体を見せることもない、かなり舞台劇に近い印象を受けるんですよね。勿論、あのセリフ回しや観客を意識したカメラ目線なんかもそれを助長する訳ですが、本当に演劇的。A24が絡んでいるので、多分映画用に作ったものを配信を強化したいAppleが買ったのかな、と邪推していますが、ネトフリにおけるROMA的な雰囲気も感じます。

 本当は古典劇のマクベスデンゼル・ワシントンが演じるって人種的多様性がある、みたいな文脈でも見たいんですけど、いかんせん戯曲と他の翻案を見ていないので、そこは例えばシェイクスピアが研究分野のTBSラジオ「アフター6ジャンクション」にも度々登場していふ北村紗衣さんの解説を待ちたいです。

2.2トップが悲劇的共演

 もうね、見たら誰もが考えると思いますが、とにかく2大共演としてマクベスを演じるデンゼル・ワシントンと夫人を演じるフランシス・マクドーマンドの凄まじさですね。特に私は後者に凄みを感じました。予言に振り回されて、分かりやすく崩壊していくデンゼル・ワシントンも流石でしたが、それを後押ししておいて、自分もどんどんおかしくなっていくっていう役回りで、夢遊病になっての独演会なんていうのはもう鳥肌もの。すっごいわ。

 っていう事で言うと、すっごい運命論的なお話じゃないですか。いや、もうそこを言い出すと今更マクベスの解釈かよ、っていう話ですが。運命論に抗う話かと思いきや、木が攻めてくるとか、女の股から生まれた者は恐れるな、みたいな運命論を積極的に肯定していく。それがどっちかっていうと、予定調和というよりサスペンスフルに仕上げていて、やっぱりそれを仕上げたのがこの2人だと思います。

 あとですね、とにかく冒頭で画面を支配して、中盤でもマクベスを突き落とすことになる魔女ですね。演じたキャサリン・ハンターさんは英国演劇界の重鎮とのことらしく、日本でも野田秀樹作品にも出ているらしいんですが、この人がまた凄い。冒頭のその予言的な時の体の動かし方が映像を加工してるんだか、してないんだか分からないぐらいの禍々しさ。あの手の、特に右手の動かし方だけで、この人は悪魔の使者的な立ち位置でカラスがいるっていうのも分かるし。いや、ほんと凄かった。