抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

自己肯定感ガン下げの呪い「ミラベルと魔法だらけの家」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB) です。

 こう映画ブログなんぞを書きながら、年間ランキングなんぞを発表している身としては、12月は死ぬほど忙しいのです。あ、「白蛇2」見なきゃ、とか、「まともじゃないのは君も一緒」がネトフリに来ているからこれは見てからランキング決めなきゃな、とか。

 そんな中で、よくよく考えなくても12月は大ネタも映画には多くかかるので単純にそれも大変。っていうか、そもそも映画見ていない時間もクソ忙しい。何が言いたいかっていうと、そんなときにこういう映画見るとイラっとして止まらないよね、っていうね。推敲とかしないよ、未来の自分へ。

ミラベルと魔法だらけの家 (オリジナル・サウンドトラック)

WATCHA2.5点

Filmarks2.5点

(以下ネタバレ有)

1.相も変わらず魅力的な絵柄だが

 もうね、分かっていることですが、それが基準になっていようと褒めるべきは褒めるべきだと思うので言及はしておきますが、相変わらずアニメーションのクオリティはバリバリですよ。ミラベルたちの住むマドリガルの家は、床やら階段やら煉瓦やらが自在に動いて勝手に物事が進んでいく。ここの見せ方がもうめちゃめちゃスムーズだし、ミュージカルアニメをやるんだから、そういう盛り上げがあるとシンプルに盛り上がってる感、っていうのはどんどん出るわけです。それに加えて、砂、自然みたいな各部屋でジャンルが変わる世界も作っているので、遺憾なくその辺の実力を発揮している。

 たーだですね、そこの家の持つ魔力が流麗すぎてですね、ミラベルは魔法が使えない、特殊能力を授かってないよ、って設定のはずなんだけどそれがマイナスに作用しているように見えない。別にそれはすぐに、ミラベルに対する疎外感がある方向で出てくるんだけど、初っ端の部分で飲み込みを一個悪くしちゃう。なーんか勿体ない。

2.なんでもかんでも家と土地

 そのうえで、ですね、今回の作品の感想として、誰も敵がいない!とかそういうのをFilmarksで見かけるともう、はぁ?の塊な訳ですね。いやいやいやいや、どう考えても差し当たってはあのババアが一番の敵じゃないですか。家族家族家族うるさくて、個を全く見ないで育ててきた。アルベルト君でしたっけ、1番下の子がギフトを貰う儀式の前にあれだけナーバスになっている時点でこの家は崩壊していますよ、はっきり言って。そうやってアルベルト君可哀想、なんて思ってたらこのガキ、自分が能力もらえたらウッキウキで結局ミラベル抜きでの写真撮影満面の笑みでしちゃってる。よーし、お前はまだガキだから軽めにしておいてやるけど罪はあるぞ。というか、家族の中で写真撮るときに1人をハブにするって、それはもう虐待ですよ。なまじあんたのこと考えてるよ風な両親とかの方がタチが悪いかもしれん。でもそれもこれも、自己肯定感をガンガン下げていく方向にマインドセットしてきたあのババアのせいだろ、としか思えないんで、やっぱりあのババアは敵です。

 まあこれだけついつい攻撃的になってしまうのもですね、わりかし私も父が自己肯定感ガン下げモンスターだったもんですから、ミラベル側の気持ちが痛いほどわかると申しましょうか。本作では、ミラベルは家族の一員になれないっていう点での肯定感を下げられまくっていた訳ですが、それだって自分の存在意義を家と土地への貢献の1点評価しかしていない時点で「逃げてっ!」としか思わない訳で。ほんと、そういうことされた人間の曲がりっぷりはこの文章読んでいるなら分かりますよね、っていう。

 っていうか、あれですよね、この話って全然一般化できない話でしたよね、っていうのを強調しておきたい。特権階級が、特権を失いかけてわたわたしたけど、特権を取り戻して良かったね、その為に頑張ったので落ちこぼれも特権階級に入れてあげるよ(でもマインドセットが変わっていないから常に同様の危険は孕んでるよ)っていう話で。手に入れた能力を庶民の為に使う、っていう大義名分はそれこそディズニーの旗の下でやってるMCUがたまに忘れそうになりながらもしっかりやってるヒーローの話で、同じラインにいる気がするのに、決して本作はそれと同じではない。というか、家や土地にこだわっている時点で、ソー:ラグナロク以下でしかない。結局、コロンビアのファミリーが、独占している資源の枯渇に悩んでる、みたいな、石油か麻薬の話ですか?みたいな印象をぬぐい切れませんでした。

 そういう感じなのでね、家が壊れたのが私のせいよ、いや私のせいよ、とか言い合ってるのも傷の舐めあいにしか見えないし、だって結局なんで壊れてたのか良く分からないんだもの。なんでミラベルはギフトを貰えなかったのか、この家の魔力の根源は?それが何故枯れる?みたいなことを全部すっ飛ばすには、人知の及ばない化石燃料なのか、それを考える隙を与えないトリップ状態かの2択でしょ。トリップ状態は冗談にしても、炭鉱の町、みたいな資源採掘の利権を握った上で、街全体がその単一産業に全てをかけている状態、ノマドランド前夜みたいな状態ですよね。

ってことで、この映画は嫌いです!ミラベルが家族全員ぶちのめすか、家を出て行って新しい自分の価値を見つけて欲しかったです。

 そういう意味ではですね、時間経過を文字に出さずに親の愛情を描きながらも、それをコピーせずに自分なりの愛情の示し方を描けている併映の短編の方が抜群に良かったです。