抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

クソガキと美しき世界「ほんとうのピノッキオ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は、ロバート・ゼメキスギレルモ・デル・トロ監督も取り組んでいるピノキオの実写化作品。イタリアの旗手マッテオ・ガローネが真っ先に結実させたものを鑑賞しました。こりゃ、デル・トロはどうすんだ、なクリーチャー祭り!!個人的には『自転車泥棒』を思い出しました!

 1番好きなキャラはカタツムリ!通った後がちゃんとヌメヌメで、みんな滑ってて楽しかった!

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WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

(以下ネタバレ有)

1.美しすぎる美術!それがすべてを説得する

 えー、とにかくこの映画について言うべきは美しい造形、美術、照明といったビジュアル面。『ドッグマン』しかマッテオ・ガローネの過去作を見ていないので、監督に共通したものなのか分からないんですが、そこで見られた街の説得力が本作でも十全に発揮されている。ピノッキオの木造感、コオロギやらマグロやらキツネやらネコやら人形やら、とにかく通常のリアリティラインだとあり得ない顔や造形のキャラクターたちが、しかししっかりその場に息づいているように見えるように感じる構図や画面の美しさ。ピノキオ的なお決まりのシーン、嘘をつくと鼻が伸びる、なんていうのもありますが、その解決方法が小鳥が止まり木にしてキツツキみたくつついて削る、なのも面白い。コメディでもあるのに、妖精の持つ神聖さと光の柔らかさで、それは教会での懺悔のようにすら映る美しさでした。

 材木屋が動く丸太に腰を抜かすシーンなんかが冒頭ありますけど、まともな奴はそこしかいませんからね。本来は動く丸太、あとサメ(クジラじゃない!)に食われた口腔内とか、ドC級になってしまってもおかしくない絵面なのにバカバカしくない。うん、凄いな、と思います。

 

2.クソガキの成長と貧困

 本作のピノッキオは、完全なるクソガキでございます。誕生の喜び、というオブラートにくるまれているので静止を聞かず外に繰り出していくシーンはまだ許されますが、確信犯的に人形劇を見に行ったり、コオロギのいう事は耳に痛いのでトンカチを投げつける。妖精さんに助けてもらって、死にそうでも苦い薬は飲みたくないの一点張り。すぐに儲け話を信じては痛い目を見る。

 そういう存在だったピノッキオは、我々が知っているような人間になる、という展開が俄には信じがたいほどのクソガキ。ジェペットがピノッキオを捜していなくなった、と聞いて捜しに行くのかと思ったらなんか忘れて妖精の言う通りに学校に通い始めますからね、ド畜生ですよ。

 ところが、彼が本当にロバに変えられちゃう経験、そしてジェペットをサメから助け、更には真面目に働いて稼ぎ、物々交換ではなく売買をする、という経験を経て人間になるというプロセスは、そこに説得力を持たせてくれます。

 と同時に、大人の社会の醜悪さが色濃く出ていて。人形劇のおっさんは、ピノッキオの純粋無垢に感動して金貨5枚くれて逃がしてくれましたが、その先で出会ってしまったキツネとネコの邪悪さは最後まで変わらないし、っていうかピノッキオを首吊りさせてたし。ロバに変えちゃうおっさんも酷ければ、学校の先生もなかなかの野郎。っていうか、よくよく考えれば、当たり屋みたいに椅子やテーブルや扉の修復を請け負うとしていたジェペット爺さんも負けず劣らずのクソで。ジェペットは息子と言えるピノッキオの誕生で改心しましたけど、大人たちがクソで、教育や経験が無いと成長ができないよ、なんていう社会風刺は冒頭にも述べましたが、同じイタリア映画の『自転車泥棒』を思い出しました。そうそう、猿の裁判官も酷かったですね。無罪なら牢屋!