抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

山火事、狙撃、時々落雷「モンタナの目撃者」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 パラリンピックも開幕しました。緊急事態宣言の最中ですし、思うところはありますが、スポーツが目の前にあったら飛びついてしまう性なのです。オリンピックにもある競技で、競技性の違いや義手・義足の進化を楽しむもよし、ゴールボールやボッチャのような独特な競技を楽しむのもよし、です。是非。

 ってことで、今回は『モンタナの目撃者』。公開は9/3の予定です。(自己中特有の前段と関係のない文章)

Those Who Wish Me Dead (English Edition)

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ有)

 1.テイラー・シェリダンの挑戦

 本作の監督テイラー・シェリダンは脚本家としてブレイク。『ボーダーライン』『最後の追跡』『ウインド・リバー』のフロンティア3部作でアメリカの取り残されたところとか、暗部、っていうとなんかまたそれは嫌なんですけど、まあそういうところを描く上手さとか、もうあんまりいない西部劇を描ける人だ、っていう印象。

 監督作としては2作目になる本作は、『ウインド・リバー』が先住民地域の雪原だった訳ですが、本作のチョイスは山火事の起こっている森。なんかポケモンジムみたいな場所のチョイスの仕方するな、なんて思いました。ついでに言えば、劇中で落雷(山火事の起こる原因のひとつですからね)なんかも描かれるので、ポケモンみがますますでした。

 地味に本作がテイラー・シェリダンにとって大きな挑戦だと思うのは、戦う女性を主人公に据えたこと。『ボーダーライン』のエミリー・ブラントは個人的には戦う側ではなく、それを傍観するしかできない人間の側だった理解で、それ以外は基本的にはすっごい男臭いのばっかりで、時代に残された男性とか、世界の違うところにいる男性みたいな主人公像が多かったと思うんです。そこで満を持してのアンジェリーナ・ジョリー投入で戦う女性像を描く。必要以上に女性性が強調された作品では無かったですが、逆に言えば、それまで彼が描いてきたことが、男性性に依るだけでない部分があったことの証明になったのかな、と思いました。人を救えなかった、むしろ殺してしまったトラウマを持つ主人公が、コナーを救うことで報われる、そんでイーサンとアリソンの夫婦も救うために奮闘する。人を救うっていう正義を全うする物語にちゃんとなっているのでたまらんですね。

2.火の2面性

 すっごい象徴的に感じたのは、まあ2面性ですよね、火の。「火を神聖視する~」といえば、ゾロアスター教と答えるのがクイズの定番ではありますが、今回出てくる火は、山火事の人を襲ってくる火だけじゃなくて、コナーとハンナが暖を取ったり、アリソンが逆襲するためのキーアイテムになったりと、決して危なくて怖いだけのものじゃないっていうのをしっかり見せているんですね。

 ただまーですね、若干構成的に気になるところが多かったのは事実でしてね。むこうの感想なんかでちらほらみえる、コナーに託された不正な陰謀の秘密が一体何だったのか分からないのが不満っていうのは、あれはただのマクガフィンだからいいと思うんです。ただ、序盤のアンジェリーナ・ジョリーがトラウマを抱えていることを示すためだけにしか、森林消火部隊の話が出なくて、山火事が進んでいることが事態の悪化とリンクしている感じもしなければ、そこで仕事をしているイメージが持てないまま進んで、最後に、あ!消してましたよ!っていうんだけチラっと見せるに留まっている。『オンリー・ザ・ブレイブ』的な要素は期待しても、って感じはありますね。なんか敵のボスがちらっと出てきたのもそんなに意味なかったし。コナーが馬と戯れたのもそんなに効かないかな、と。

 と、最後に少し文句は述べましたが、事前の評判ほど悪くない作品だと思いましたよ。