抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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ドラマと映画で2度おいしい。「返校 言葉が消えた日」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は、苦手なのに面白そうだから手を出しちゃったシリーズ、ホラーです。なお、今回参考になると言われていたり、言及されている作品、例えば『くーりんちぇ』とか、『悲情城市』などの映画、ドラマ版でチラ見せされるジョージ・オーウェル1984』 なんかは摂取してません。1984とかは、監督トリュフォーだし見たいんですけどね。

1.映画「返校 言葉が消えた日」

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WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

 なんと台湾では『テネット』を超えて爆売れしたという本作。台湾史上始めてのゲーム原作映画でもあるらしいのですが、まあその辺の文脈は剝がしても問題ないでしょう。

 舞台は1960年代の台湾。当時は戒厳令が敷かれており、冒頭からも分かるように思想・信条・集会の自由が完全に制限されている状態。基本的には、何故か学校で眠ってしまっていたところで目が覚めた女子学生ファン・レイシンと、その後輩男子で、当時の禁書を読む読書会に参加してるウェイ・ジョンティンの2人の視点を交互にする感じで進み、「悪夢」「密告者」「生きている人」の3章構成。章タイトルでわかるように、序盤はまずは学校から出れない状態で、ファンとウェイがまさにアドベンチャーゲーム形式で脱出を図りつつ、なんか怖い教官型クリーチャーにも追われる感じ。ところが中盤以降、序盤からおかしかったりしたところのタネが割れてきて、読書会の存在を密告したのがファンで、それが何故かが語られ始める。ここのところの、単純にすれ違いで悲劇が起きる感じは定番でありながらもお上手。結局、ファンもウェイも記憶をなくして彼岸のような場所としての学校から抜け出せない状態だったことが分かるんですが、いや、非常に上手にやっていたと思います。

 ただ、もう何よりも痛烈なのが3章目ですよ。結局、あの時の戒厳令時代、いわゆる白色テロの時代を繰り返さないぞ、ということを叫び倒す。ゲーム原作でありながら、映像化するからこその現在時制、その当時を生き抜いた決断をしたウェイがようやく事件に向き合うっていうところを描く。正直白色テロのことすら満足に知らなかったというか、中国共産党だけでなく中国国民党でもこういう事例があったのか、っていうか中華人民共和国に代表権がまだ移らぬ1960年代の台湾でこんなことがまかり通っていたのか、という事実を知れた、それだけでもこういう映画を見る価値があったと思います。

2.Netflixドラマ版

WATCHA4.5点

Filmarks4.3点

 第1話の開幕でファンが密告したことをバラすのでこっち後回しで良かった。ついでに首吊りではなく飛び降りに死因が変わってる。また、密告も読んだ本ではなく、メンバーのリストを渡したことになっている。

 それ以外は起きた出来事としては変わらず、その30年後を描いている。ファン・レイシンを家庭環境や教師との恋愛、という境遇としてリウ・ユンシアンという主人公を置く。更にウェイ・ジョンティンも存命でいつつ、その甥だったかな?をウェイのポジションに置く。あとはジャンル的には完全にホラーじゃなくなってるね。心霊要素はあるけど、怖いって感じはない。

 映画版と違って、被害の怖さ、読書会を裏切ったのは誰か?みたいなところはないので、代わりに教師との恋愛がバレて、という展開で映画の事件の加害側である校長と教官を軸に時間をつぶしにかかってくる。ジェームズ・ワンの透明人間を思い出す胸糞っぷりでユンシアンの自我を崩壊させると、後半はレイシンと入れ替わってしまい復讐に走る。復讐自体もある程度スカッとするが、ここで誰が裏切ってたかの明示された問題が再浮上して、密告社会での加害してしまった側の怖さと責任、というテーマが浮かび上がる。ラスト、国民党政権が交代したことを告げ、ユンシアンの幸せな生活に、台湾の未来を託す物語で大変よくできていた。