抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

エメリッヒの太平洋戦争が画面を覆う!「ミッドウェイ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 厄介な日本史オタクとしての特性を発揮してしまう映画が来てしまいました。本来なら見ないだろうローランド・エメリッヒ監督作で太平洋戦争やるなんて。自分でいうのも何ですが、近代史はそこまでじゃないとはいえ、日本史にはうるさい方なのでめんどくさい客としてやっていきまっせ。

Midway (Original Motion Picture Soundtrack)

WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

(以下ネタバレ有)

 1.大迫力の空戦・海戦

 いやー、まずもってエメリッヒと戦争の相性が凄くいい!

 映画館の大画面で見る戦争はこれでもかと迫力がありますし、空母に着艦する航空機のちょっとしたバウンド、魚雷、爆撃。どれをとってもこれは映画館案件だわ!という感じ。TENETが無かったらIMAXとか画面デカいとこでやったんじゃないですかね?空母、航空機、潜水艦と、太平洋戦争において出てくるメカは大体出してきて、それぞれの戦争体験をしっかり送らせてくれるし、真珠湾での日本軍の攻撃はそれはそれは凄まじいものがあり、アメリカ軍の驚きと焦りも納得の被害状況になっていたと思います。まあ、それこそノーランにはこれは作れないですからね。CGが発展した結果なので。あと、エメリッヒの雑な印象だと、とにかく派手に、巨大にしていればそれでいいと思っている節があると思っているんですよ、ごめんなさいね、エメリッヒさん。で、その弩級信仰も、戦艦大和というトンデモナイものを作り上げた日本軍や第二次世界大戦の前では笑えないし、信用度が上がる。そういう意味でもこの題材はエメリッヒ好みだったと思います。

2.なぜか感動しない

 物語的には、真珠湾攻撃、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦の3つの戦闘を日米双方の現場、司令官、情報部なんかを中心に描き、米軍による初の本土爆撃のエピソードなんかもありました(正直いらなかったと思うが)。
 正直言ってですね、そのどれもが軽い印象だったんですよね…。そもそも戦争映画って、すっごくマクロに見るやり方とミクロに見るやり方があると思うんです。マクロでいうと、「ウィストン・チャーチル」とかで、ミクロは「ダンケルク」でも「1917」でも「ハクソー・リッジ」でも枚挙にいとまがないでしょう。でもこれを両輪でやろうとして上手くいった例ってそんなに思いつかないというか。それを正直ドラマが上手というよりも絵の派手さで見せるタイプのエメリッヒが挑んでも、まあ当然のごとく上手くはいかない、ってことですね。

 印象に残っているのは、情報司令部のレイトンと新任のニミッツ司令官ぐらいで、大きくメインを張るパイロットのディックとかはそこまでなんですよね。結局現場と司令部の対比は出来ても、現場の中での対比がそこまでうまくないし、みんな軍服だし、で区別つけるだけで深い掘り方もされずになんか肺をやられた描写やら、死にたがり感やらがそこまで切迫感をもって感じられない。構造的には、ディックはエンジンもやられた状態での飛行訓練を勝手にやっていて、それがラストで生きているんだから下手な脚本じゃないと思うんですが感動しない。なんでなんだろう。戦争映画なのに緊張感が無く、悪い意味で命が軽い。

 あとですね、地理的なことが全く分からないんですよ。地名こそ出ますが、作戦ボードがちらちら見えるだけで、どういう作戦をどこで展開して、どっからどこへ攻めているのか。司令部を写すならやっぱり地図は必須です。何度も引き合いにだして悪いですが、テネットのラストバトルですら、最低限の説明はしてましたよ。

3.歴史として

 さて、んじゃあ面倒な日本史オタクのアレとして色々書き連ねようかと思ったんですが、なんかもう疲れてきたので手短に。

 まずミッドウェー海戦の要点としての情報戦の重要性。アメリカ軍の情報司令部での暗号解読のところとかもかなり丁寧に描写していたので、製作陣も情報戦がミッドウェー海戦、ひいては太平洋戦争の勝敗を大きく分けたことを理解はしているんだろうし、その描き方としては悪くなかったと思う。ただ、だとしたらもっと日本軍側の描写を入れて欲しかった。これは次の点でも当てはまるが、米軍と日本軍の差異を明確化しないと、ディックという男が凄かった、南雲という男がダメだった、で終わってしまう。太平洋戦争はもっと歴然と差があったと思っているのでそこの属人性に依ってほしくない。

 同様に、組織としての違いをもっと見たかった。負傷兵をすぐに下艦させたり、捕虜の扱い、撃墜されかけた段階での特攻などで部分的に見せてはいるものの、日本軍と米軍には組織系統として大きな欠陥の違いがあったので、戦争の明暗を分けたところとしてそこをもっと見たかった。そして、その為には、一瞬で終わった珊瑚海海戦の描写がもっと欲しいところ。正直、真珠湾の復讐を果たしたぜ!みたいな話になってしまっている気がするのだ。珊瑚海海戦を受けての作戦立案とか、情報処理の部分で彼我の差が決定的になった。日本軍は勝敗どっちつかずといえた珊瑚海海戦の反省を全くしていないのだ。その帰結がミッドウェーなのだ。

 

 あれ?結果としてやっぱ思ったよりは長くなってしまったな…

 書いてることを改めて読み直すと、なんか日本をもっと弱く描け!みたいな感じに見えるかもしれないですけど、もっと勝敗を揺さぶった部分を見たかったな、ということです。とはいえ、やりすぎるとアメリカ万歳になるし…。あ、インディペンデンス・デイ撮ってるんだから、エメリッヒはアメリカバンザイでも許されるか