抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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今の清原果耶を焼き付けるべし。「宇宙でいちばんあかるい屋根」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はオンライン試写で見た作品になります。っていうか、オンライン試写を見るためにノートPCの買い替えを可及的速やかに行ったのです。その作品は、昨年の「新聞記者」でヒットした藤井道人監督最新作「宇宙でいちばんあかるい屋根」になります。ほんとは、サンクスシアターで「青の帰り道」やネトフリで「デイアンドナイト」を見てからにしたかったのですが、時間の都合上かなわず。

宇宙でいちばんあかるい屋根 (光文社文庫)

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

(以下ネタバレ有)

 1.圧倒的役者力!清原果耶のすごさ

 本作を見て思うのは、兎にも角にも役者陣の演技のすばらしさ。

 まずはわきを固める皆さん。ぱっと思い浮かぶのは非常にやさしい声が特徴的なつばめの父親役の吉岡秀隆さん。だんだんわかってくる家庭環境の中で、決して怒らず、でもしっかりと他者を思いやって叱ることはできる、模範のようなお父さんでした。声が高いのが気になる役の時もあるのですが、いよいよ年齢を重ねて落ち着きが声について父親役としていい時期を迎えている印象です。

 そして、いやな同級生でつばめの元カレ役で実は意外と重要な役だった醍醐虎汰朗さん。「天気の子」の帆高くんとしてしか知らなかったので、実写は初めてでしたが、素直になれないお年頃の男の子として割とティピカルではある元カレ演技もできていたし、終盤の星ばあの真実を語るところの、つばめに涙を拭く紙を渡すの渡さないののまごつきなんかもとてもよかったですね。

 という訳で、メイン3人に。まずはなんといっても星ばあですよ。桃井かおりさん。正直言って、まだまだ古い映画が勉強不足なので、彼女のフィルモグラフィーをちっとも追えておらず、椿鬼奴に物まねされる人、ぐらいの印象だったんですけど、いやー実に達者で。今回の劇中において、出しちゃったラブレターの回収をしたり、空を飛べたり、みたいなフィクションラインが一人だけ違うかのような存在でありながら、肉を欲しがり、すごく旨そうに食事するところもあってそこには生を強く感じる。この塩梅が完璧で、馴れ馴れしさと聖人っぽさをどっちも兼ね備えているこの存在感はほかの人には出せないな、と感服しまくりでした。楽しそうに乗るキックボードとか、奪い取って食うきゅうりの齧り方とか、屋上では最高でしたね。

 そんな桃井さんとはほぼ2人で芝居し続けることになる主演の清原果耶さんも素晴らしかった!まあなんといっても思春期の揺らぎを示すかのような透明感。これがたまらないうえに、例えば「ちはやふる」で見せた掛け合いの間を詰めて笑わせてくるようなものも見せてくれましたし、「なつぞら」のような年齢よりも少し大人びた、でも抱えている若さを見せる、そういう側面も見えました。それでいて、星ばあとの楽しそうな状態での表情、クラゲダンスを踊った時の憑き物の落ちた感じ。もうこれから目が離せないし、今この時の清原果耶を切り取っている、それだけでこの映画を見る価値があったと思います。

 最後に、亨役の伊藤健太郎さん。「のぼる小寺さん」でも素晴らしかったわけですが、今回はバンジョー弾いたり、松葉づえだったりとなんかこう新しい性癖を拗らせそうな要素をバンバンぶっこんできます。なんでしょう、彼の爽やかさで大体の話がきれいに収まっている感じがするんですよね。絶対いい人だもん。まあ物語的には少し弱い役割ではありましたが、補って余りある爽やかさ、私の中のイケメンランキングは急上昇しております。

2.いちばん明るい屋根を探して

 さて、いい加減本筋の話をしていったほうがいいとは思うんですが、話はすっごくストレートに言えばつばめの成長譚。毎日を過ごしている中で、偶然書道教室のビルの屋上で摩訶不思議な人物星ばあに出会う。そこから亨の姉の結婚騒ぎ、星ばあとの水族館デート、産みの母に会いに行く、妹の誕生と星ばあの孫探し、といくつかのエピソードを挟んで、家族の大切さや時間の使い方なんかを学んでいくって感じですかねえ。

 やっぱり特徴的なのは星ばあとの場面です。彼女と触れ合うことになるビルの屋上は、そのほかのシーンと比べて幻想的で、どこか絵本の1ページのような夜景。もしかしてここは幻想の中だったり、天国なのではないだろうか。そんなことを感じる綺麗なショットです。実際、星ばあがつばめのイマジナリーフレンドの可能性だって排除できないまま終盤に突入しますからね。あと1回明らかにフィクションラインを超えた幻想的な風景に無理やり持っていくとこもあるんですが。

 つばめの成長を表すのは、彼女の通っている書道教室を見ればすぐわかります。冒頭に書くのは、力強い「後悔」。でもそこから悩みながらの「変化」を書き、そして新しい世界であり、産みの母の世界でもある水墨画を描くようになる。

 主人公の名前であるツバメは、虫を捕食するために低空飛行したり、人間の民家の軒先にに巣を作る、どっちかと言えば屋根の下に生きる生き物でもあります。そんなつばめが星と出会い、屋根をしたからではなく、上から見ることになる。そうした結果、ああ家族って大事だな、と改めて受け止める。なんでしょう、「泣きたい私は猫をかぶる」の主人公と結構似た境遇でスタートして、決して遠くない結論に至っているのに本作のほうが非常にスマートに見せているように感じました。