抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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クラシックモンスターが視点を変えて甦る「透明人間(2020)」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は露と消えたダーク・ユニバースの生き残り?生まれ変わり?「透明人間」の感想になります。トム・クルーズの「ザ・マミー」は見てませんが、今回に合わせて1933年版の「透明人間」は鑑賞しておきました。話的に似ていると町山さんの言っていた「ガス燈」やヴァーホーベン、カーペンターの透明人間は見ていません。

The Invisible Man (AmazonClassics Edition) (English Edition)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有り)

 1.見えない恐怖と孤独

 この映画までに見てきた透明人間、というと1933年版もだし、スタジオポノックのアニメーションオムニバスの一編である「透明人間」でも、描かれる主体は透明人間でした。

 ところが、今回の映画は海辺の家からエリザベス・モスが演じるセシリアが逃げ出すシーンから始まり、終始彼女の視点。あくまで見えないことを利用して何ができるか、ではなく、見えない相手を敵にすることで一体どうなるのか、を描いています。

 そういった構成のため、必然的に映画の基調はホラー寄り。アハ体験動画のように、観客にも姿が見えていないのに確かにそこにいる、あるいはいるかもしれない、という状態が続くため、大画面から目を離す瞬間が訪れることはない。しかもまた、カメラが嫌な置かれ方で、何の変哲もないところを映しているだけなのにそこに人物が映っていなかったり、不自然な余白が残してあることで不在の在を強調、ああそこにいる、気付いて!と心理をガンガン攻めてきます。あと、音。ここぞではビシッと環境音だけにしたり、重低音で殴りつけて見たりと、ビビリの人間が怖がるポイントを完璧に抑えております。こっちはブラムハウスのロゴの段階でビビってるんですよ、やめてくれ(誉め言葉)。こういう私たちも感じる恐怖をしっかり感じて怖がってくれるエリザベス・モスは素晴らしい演技だったと思います。ホラーは苦手だからそんなに見ないんですけど、やっぱり怖がった顔・演技が上手い俳優さんがいると、それだけで格が上がりますね。

 で、今回の透明人間、またいやらしいのが単純な嫌がらせや脅かしならいいんですけど、取ってくる手段がえげつない。セシリアの夫エイドリアンの手法と同じだ、と語られていますが、周りを攻撃し、セシリアの信頼を失わせ、孤立させて依存させようとする。優しくしてくれた人たちに次々と災厄が降りかかって、一度は拒絶した妹エミリーが一緒に戦ってくれそうになった途端にノドかっさくのはドン引きですよ、こっわ。

2.見えることは支配すること

 ラジ・リ監督のレ・ミゼラブルの感想でも、名付けることは支配することだ、なんて述べたんですけど、この映画においては視線、見ることもまた、支配として描かれています。相手が透明人間な以上、我々は見ることができない。だから常に主導権が向こうにあるんですよね。そこから主導権を奪い返すには、足跡や何かを付着させて可視化しないといけない。セシリアの愛称がシシーじゃなくて、シーになっているのもseeがかかっているんだと思います。視線、大事。

 そういえば、最初にセシリアが逃げ出す為に取ったのも、エイドリアンを眠らせて目を開かせず、自分は監視カメラの映像でエイドリアンをチェックしておく、というものでした。この場面では視線の主導権はセシリアにあるから、逃げられる訳ですね。

 あと、エイドリアンの兄トムも明確に視線で支配をたくらむ男でした。弁護士ってそんなもんかもしれない、とも思いますが、セシリアとは常に相対して目を見て話し、脅す人間でした。

 ラストは実に爽快に復讐をやってのけたわけですが、まあその前のエイドリアンの態度もDV男に典型だったし、そもそも睡眠薬を拾ってるのがエイドリアンなので序盤~しばらくはエイドリアンが透明人間だったのも確定、ということでいいんじゃないですかね。普通なら車の窓殴って破りませんよ。

 ただまあ、多少の不満もありまして。流石リー・ワネル、前作の「アップグレード」でハートをつかまれた私。ホラーっぽいけど今回もしっかりSFの要素もあるサイコサスペンスとして作り上げてはいます。透明人間がセシリアのUberの移動に追いついているのは、スーツが実はもう1着更にあって、兄弟そろって着ていた可能性を排除できないのでいいんですけど、監視カメラの設置は文句があります。エイミー殺害時のナイフの動きは面食らったとはいえ明確に覚えていますし、その瞬間を映した監視カメラはレストラン内に無いけど、他のところにはいっぱい出てくる、というのは少し都合よすぎるかな、と。確たる無罪の証拠になりうる時だけ監視カメラが無い、しかも店や座席指定に透明人間側が絡んでいないのでなおさら、という感じ。

 さてさて、画面のこっち側の我々の世界。光学迷彩は、実現するんでしょうか?

遊戯王 308-035-N 《光学迷彩アーマー》 Normal