抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

クソ野郎たちの栄光「フォードvsフェラーリ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 積みっぱなし映画、一番上映終了を危惧していた作品をなんとか滑り込んで見てきました。作品賞ノミネートの「フォードVSフェラーリ」の感想になります。フォックスのロゴ見るのもそろそろ最後かしら…。

オスカーの結果はどうだか知らんが発表前に書いてるので悪しからず!

フォードvsフェラーリ (オリジナル・サウンドトラック)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有り)

 1.白熱のカーレース!路面より熱いバディ!

 まず声を大にして言っておきたいのは、私、めちゃくちゃ車怖いのです。運転しない分には良いのですが、基本的に人間があのサイズの鉄塊を動かすのは自然の摂理に反しており、非常に傲慢である、という見解でハンドルを握りたくありません。

 そんなざまですから、モータースポーツに興味もなく、日テレG+とかでたまに流れてるのを見かける程度で、単語しか知らんことばっかです。

 そんな私でも2時間半があっという間だったのが本作。冒頭から自分が車になったかのようなレースを見せられもう早速最高。結果的には、自分が車になったかのようなカメラ、自分が運転しているかのようなカメラ、自分が助手席に座ってフォード二世のようになすすべなく乗っているしかないカメラ、そして外観のカメラと、色んなところからびっくりの臨場感で届けてくれる。どんなに車に興味が無くても、スクリーンと映画館の音響のおかげで興奮すること請け合いです。

 そしてまた、最高なのがクリスチャン・ベール演じるマイルズとマット・デイモン演じるシェルビーのクソ野郎バディ。まずはエンジニアとしてのマイルズ、ドライバーとしてのシェルビーを見せておきながら、フォード内での役割は逆。これすなわち、両者が深く車を愛し、知り尽くしているプロフェッショナルであることの証左。

 彼らの相思相愛っぷりは、レース中の車と道路の接地面よりも熱く、つかみ合いのシーンでマイルズが咄嗟に缶からパンの袋に持ち替えるとことか大好きですよ。両者の関係性は、まさに車のアクセルとブレーキにも例えられ、ブレーキの役割を果たすシェルビーは、エンジンの回転数を抑えるかのように心拍数を抑える薬を常用している。

 そして「待て」×2,3回からの行け!が別の時間でのシンクロ。両者がしっかり感覚を共有しているのも最高!

 っていうか、例によってクリチャン・ベールは似すぎだし、ほんと凄いなこの人。

2.敵はフェラーリ?それとも社内?

 今作において打倒すべき敵は2つ。

 まずは当然タイトル通り、フェラーリ。フォードがかなり失礼な感じで買収を仕掛けていたのでちっとも悪者に見えなかったのですが、レーサーが非常に嫌味な顔(褒めてます)していたし、実力が十二分に伝わっているので敵役として非常に優秀。また、みんなが最終的にマクラーレンに祝福に行っている中で、ちゃんとマイルズに敬意を払ってみせるあたり、大物感も損なわない素敵なチームでした。

 本作において非常にいやーな奴、それが副社長のビーブ。いや、社長のフォード2世も同じぐらい嫌いでしたけどね(褒めてますよ!)

 デイトナのレースでは、マイルズを倒す為にナスカー?でしたっけ、優秀な技術チームを揃えたり、そもそも一回目のル・マンにはマイルズを派遣しなかったり、最終的にマイルズの3冠を阻止する結末に。

 正直に言ってね、うわーこれ見たことある奴だ、ってなりましたよね。Jリーグでいえば、親会社からの出向社長ガチャ、海外サッカーで言えばオーナーになったアラブの富豪ガチャみたいな。富豪に買われた時のマラガとか、ガチャで外れ引くと現場がどんなに頑張っても上手くいかないんですよねぇ。

 その極地だな、と感じたのが1回目のル・マン敗退後のつるし上げ。素人の副社長が現場に介入しておいて、責任問題の場所で全く口を出さない。シェルビーのおかげでなんとかなりましたけど、そもそもル・マンなんて大規模なプロジェクト、90日の準備で結果出なかっただけで進退問題になりかけるって、マジか、と驚きました。

 そういう意味で言うと、そもそもシェルビーをスカウトしたリーの立ち位置が曖昧だったのが勿体なかったですね。シェルビーと副社長がいるので現場サイドとご機嫌伺いサイドの中間管理職は埋まっちゃってたもんでね…

3.勝負に水を差す要素

 最高に白熱した勝負、臨場感、内外の敵と準備された勝負の要素は大好きだったんですが、だからこそどうしても気になってしまう部分が散見されたのが残念なところ。

 やっぱり一番気になるのは、マイルズの敗北ですね。ル・マンで優勝したはずのシェルビーに、これだけのプロフェッショナルのマイルズ、そしてメカニックの面々。それだけのメンバーがいて、しかもブレーキ交換という荒業を繰り出すほどルールブックを読み込んでいるのに順位決定のところ知らないんですかね?

 同様に副社長が悪者にされすぎている気がする脚色だと思うんですが、ル・マン参戦したばかりのフォードにおいて、レースに出れなくするぞ、という脅しは効果が無いというか。あれほどの走りを見せれば他社がシートを用意すると思うんですよね。レース界においての序列と、自動車業界としての序列は全く異なるわけで。あんな発言があったら、フェラーリは倒しているし、義理もないのでさっさと移籍してしまえばいいのに、と2人の為に考えちゃいました。そうしたらマイルズも死なずに済んだのに…。まあそれだけこの2人にのめり込んじゃった、ともいえると思いますが。

 そして、そういう最後の雑さもですが、途中でシェルビーが繰り出す搦め手の数々は勝負に直結したようには思えない。ナットを落としたり、ストップウォッチを盗む、勝敗に直結しないなら勝負の聖性が損なわれるので描写しなくても良かったのでは?と思ってしまいます。

 

 いずれにしましても、カーレースに少し興味を持たせるだけの力のある作品でした。いやー、2020年、まだ外れを引いていません。すげー年だ。